生成AI、ビジネス利用の実態と企業の意向 今後利用が進む業種は?
「ChatGPT」に代表される生成AI。ITベンダーは製品やサービスに組み込むなど活用に意欲的だが、ユーザー企業は今後の活用をどのように考えているのだろうか。
文章を生成する「ChatGPT」をはじめ、入力したテキストに応じて画像を出力する「Stable Diffusion」などで知られる生成AI。AIに対して「業務効率や生産性を高める技術」とポジティブに捉える人もいれば、「仕事を奪う」などネガティブなイメージを持つ人もいる。生成AIのビジネス利用が本格化すれば、AIがやるべきことと人がやるべきことの見極めがより重要になるだろう。
野村総合研究所(NRI)は、2023年5月に日本のビジネスパーソン約2400人を対象として「『生成AI』のビジネス利用の現状と今後」に関するインターネットアンケートを実施した。本稿では、その調査結果を基に生成AIのビジネス利用の現状をお伝えする。
生成AIの利用実態と企業の意向 今後利用が進む業種は?
勤務先での業務において生成AIを用いたツールやソフトウェア、アプリを使っているかどうかを尋ねた項目を見ると、「実際に業務で利用している」が3.0%、「トライアル中」(6.7%)、「使用を検討中」(9.5%)となり、活用まではまだ様子見とする考えが多数派となった。業種別で見ると、「業務で使用中」とした割合は製造業や金融・保険、その他サービス業が相対的に高い数値を示した。
製造業では、開発現場でドキュメント作成やプログラムコード作成などに、金融・保険などのサービス業ではコンタクトセンターでの自動応答で活用が進んでいるものと考えらえれる。
「実際に業務で利用している」と「トライアル中」の割合の合計値は9.7%になる。この2項目の割合を業種別に見ると、IT・通信、教育・学習支援などの業種で数値が高く、これらの業種では、現在は導入されていなくても、今後、急速に生成AIの導入が進むことが考えられる。また、「使用を検討中」を含めると、全体の約2割が生成AIの導入に対して意欲的だと読み取れる。
現時点での導入率は低いものの、今後の利用が拡大しそうな業種としては、建築・土木や運輸・物流、公共などだ。現在はテキストを中心としたコンテンツの生成が中心だが、デザインや地図など画像の生成が進むことで、建築・土木、運輸・物流などの業界でも利用が拡大することが予想される。
業務でどのような生成AIの活用法が予想されるか
生成AIの利用用途と今後の活用の可能性を聞いた項目では、前者は「挨拶文などの原稿作成」(49.3%)、「記事やシナリオ作成」(43.8%)など、テキスト関連の利用が多い傾向にある。現状では、創造性のあるコンテンツを生成するよりも、定型的でパターン化された出力結果を活用する人が多い。今後は、現在の利用用途に加えて、「マニュアル作成」や「議事録の作成」など、より高度な編集能力が必要とされる業務で活用が進むと予想される。
テキスト以外での活用分野では、「プログラムの作成」で利用している人が23.8%、「挿絵やイラストの作成」が15.1%、「動画の作成」が9.6%となり、相対的に割合は少ないながらもテキスト以外のコンテンツ生成に活用している事例もみられる。
生成AIが注目される背景には、「アウトプットの精度の向上」「生成スピードの速さ」「生成関連アプリの使いやすさの向上」などが挙げられる。生成AIの基礎技術や基礎モデルの精度が向上したことで、利用が拡大しつつある。
今後は、基礎モデルを活用したアプリケーションやサービスの拡充やコンテンツの種類の拡大が予想される。テキストだけではなく、画像やデータなどをAIが同時に処理する「マルチモーダル」が進むことで、より人間の感性に近いモデルができ、生成AIのビジネス利用が拡大すると考えられる。一方で、偽情報の拡散や著作権の問題もあるなど、利用者の不安を払拭(ふっしょく)するためにも、法制度の整備やルールづくりを進め、健全な利用の発展が求められる。
出典:アンケート調査にみる「生成AI」のビジネス利用の実態と意向(野村総合研究所)
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