経営層には分からない、福利厚生に関する従業員のホンネ
ある調査によると「経営層は私たちのことを分かってくれている」と思う従業員が減っている。なぜだろうか。どうやら「福利厚生」が鍵を握っているようだ。
人事および福利厚生関連サービスを提供するBusinessolverが2023年5月17日に発表した報告書によると(注1)、「CEO(最高経営責任者)は(従業員に対して)共感的だ」と感じる人事担当者や従業員の割合は、2017年以降最低の水準にまで低下したようだ。
BusinessolverのCEO兼創設者であるジョン・シャナハン氏は「ここまで深刻な低下は予測していなかった」と述べた(注2)。
従業員に評価される経営層の割合は?
「経営層は私たちのことを分かってくれている」と思う従業員はなぜ減っているのだろうか。
Businessolverは6業界、3000人以上の人事担当者や従業員、CEOを対象に、職場における共感性について調査した。
2016年以降、従業員が感じる企業の共感性は低下し続け、2023年は過去最低を記録している。「CEOが(従業員に対して)共感的だ」と回答した人事担当者の割合は68%で、2022年から16ポイント低下し、過去最低の水準に達した。一方で、CEOの92%が「人事担当者が(経営層に対して)共感的だ」と捉えており、2022年から27ポイントも上昇した。
Businessolverによると、メンタルヘルスに課題を抱える従業員は増えている。従業員の約51%、人事担当者の約61%が「過去1年間にメンタルヘルスの問題を経験した」と回答し、人事担当者は2022年から9ポイント上昇した。人事担当者の約61%が「自社のメンタルヘルスに関する福利厚生を認識している」と回答しており、2022年から11ポイント減少した。
柔軟な働き方や福利厚生が重要
同報告書では「(企業の共感性を高めるためには)職場の柔軟性が重要だ」と示されている。企業が提供できる福利厚生の中で従業員への共感性が高いものは「柔軟な勤務時間」がトップで、「柔軟な勤務地」がそれに続いた。テレワーカーの約76%が「所属企業が(従業員に対して)共感的だ」と回答したのに対し、非テレワーカーにおいては62%だった。
さらに、従業員の約78%が「有給休暇は必要不可欠な福利厚生だ」と回答しているが、CEOの場合は46%だ。およそ9割の従業員が「有給の産休や育休、柔軟な勤務スケジュールなどの家族に関連する福利厚生」を求めているが、これらの福利厚生を得ていると回答した従業員は半数未満だ。
シャナハン氏は次のように述べる。
「2023年の調査結果は、リーダーが認識している現実と従業員の現実を確認するための警鐘になる。しかし、経営層だけが共感のギャップを解消する責任を負うわけではない。皆が共感の管理者となり、ミクロな共感の瞬間をマクロな共感の文化に変えるために『相手の立場に立った思考』を採用する責任があるのだ」
別の報告書によると(注3)、従業員はメンタルヘルスに関する福利厚生を利用する際にも助けが必要な場合がある。福利厚生の中には利用されていないものもあり、それらにアクセスしやすくすることは、従業員の不安やうつ、ストレスの緩和に役立つ場合がある。
出典:Perceived CEO empathy levels hit record lows, study shows(HR Dive)
注1:2023 State of Workplace Empathy Report(Businessolver)
注2:Businessolver Empathy Study Reveals a 24-pt. Empathy Gap Between HR and CEOs Views of Each Other(Cision)
注3:Mental health benefits untapped by many workers, study finds(HR Dive)
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