Deloitteが公開したレポート「Women @ Work:A Global Outlook」によると(注1)、女性は変化する職場への対応に追われており、これが女性の転職や離職につながっている。「なぜ女性が退職してしまうのか。彼女たちが必要なものを得ていないからだ」と、Deloitteのグローバル・インクルージョンリーダーであるエマ・コッド氏は述べている。このレポートは10カ国の働く女性5000人を対象に調査したものだ。
女性の社会進出が進んだのに離職してしまうワケとは
女性の就業環境を妨げている主な要因は何だろうか。メンタルヘルスやワークライフバランスが深く関係しているようだ。
同レポートの2022年版では”燃え尽き症候群”が最大の懸念事項として挙げられており、46%の回答者がそれに当てはまると回答した。2023年には、30%の女性が燃え尽き症候群を感じていると報告した。
この減少はポジティブな変化だが、「一方でメンタルヘルスに関する非常に悪い調査結果もある」とコッド氏は付け加えた。回答者の35%が自分の精神的な健康状態について「悪い」もしくは「非常に悪い」と評価しており、これは2022年の数値と同様である。また、約半数が自分のストレスレベルが「2022年より高い」と回答している。
「企業から十分なメンタルヘルスサポートを受けられる」という回答も減少している。2022年には、回答者の43%が職場でメンタルヘルスについて話すことに快適さを感じていた。2023年にはその数値が25%に減少している。メンタルヘルスをケアするために取得する休暇に満足している回答者は25%で、この数値も2022年の39%から減少している。
女性たちは柔軟性を求めているが、それを得られていない
女性の離職の一因は"オフィス回帰"にもありそうだ。Deloitteは、過去12カ月の間に女性が仕事を辞めた理由として、「給与が十分に高くないこと」の次に「働く時間に柔軟性がないこと」を挙げている。
また、97%の女性が「キャリアへの影響を恐れて、柔軟な勤務形態を求めることができない」と感じており、95%の女性が「柔軟な勤務形態が認められても、仕事量が調整される可能性は低い」と考えていることが分かった。
コンサルティング企業のCulture Partnersで職場文化に関するチーフサイエンティストを務めるジェシカ・クリーゲル氏は次のように述べた。
「多くの女性が働く中で”恐れ”を感じている。『子供を持つ選択をしたということは、一生懸命働かなくなった』という共通認識がある環境が存在するからだ。働き方に関して柔軟性とサポートがあれば、子供を持ったばかりの多くの母親は一生懸命働くだろう。多くの企業がそれをできていないということだ」
「柔軟性を認めるというメッセージを出している企業でも、オフィス回帰を期待される風潮がある」とコッド氏は言う。
女性はオフィスの内外で問題に対処している
女性は私生活にも悩みを抱えている。Deloitteのレポートによると、回答者の88%はフルタイム勤務だが、回答者のほぼ半数が主な家事・育児を担当している。
4人に1人が「パートナーのキャリアを優先する必要を感じている」とも報告されている。これは、家庭における主な収入を担っている女性も同様で、5人に1人が「自分自身よりもパートナーのキャリアを優先させなければならない」というプレッシャーを感じている。
ジェンダーの問題は職場にもある。回答者の44%が、会議で邪魔をされたり、話を遮られたり、男性の同僚に比べて発言する機会が少なかったり、アイデアを他の人にとられたりといった、マイクロアグレッション(注2)を経験したと報告している。この数字は2022年から減少しているが、LGBTQ+の女性にとっては依然として厳しい状況が続いており、過去12カ月で76%がマイクロアグレッションを報告した。また、少数民族の女性の53%が「マイクロアグレッションやハラスメントを経験した」と述べている。
「これらのプレッシャーが燃え尽き症候群を引き起こし、別の仕事を探したり、パートタイム労働に切り替えたり、職場から離れたりといったことを余儀なくされる。パンデミックが終わったから、もうメンタルヘルスについて話す必要はないという考え方もあるようだが、今こそ話す必要がある。このデータは、女性がより多くのストレスや不安を抱えていることを示している」(コッド氏)
出典:Why are women still leaving the workforce?(HR Dive)
注1:Women @ Work 2023:A Global Outlook(Deloitte)
注2:思い込みや偏見によって無自覚に相手を傷つける行動のこと
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