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出社を嫌がる若手が抱えるキケンな「負債」とは?

コロナ禍でテレワークを導入した企業で起き始めている問題とは何か。専門家が語る解決策とともに紹介する。

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HR Dive

 コロナ禍以降、テレワークは働き方の新たなスタンダードとなった。しかし、この新しい働き方がもたらす影響は良いことばかりではない。特に若手の従業員はテレワークによって、ある「負債」を抱え始めている。仕事だけでなく、私生活にも影響が出ているようだ。

 本稿では、最近になって明らかになってきた企業の生産性に関する課題と、それを解決するために企業やマネジャーが取り組むべき対策を提案する。

コロナ後の職場で何が起きている?

 米労働統計局のデータをコンサルティング企業のEY-Parthenonが分析したところ(注1)、2023年の第1四半期は前年同期比で労働生産性が2.7%減少した。同社のチーフエコノミストであるグレゴリー・ダコ氏は「5四半期連続で労働生産性が低下した」と述べた(注2)。

 以前、ダコ氏は米国人材マネジメント協会(SHRM)に対して、「労働市場の回復力が強い一方で、アメリカでは経済的な生産性の低迷が続いている」と語った(注3)。

 原因をテレワークに求めたくなるかもしれないが(注4)、事態はもっと複雑だ。調査によると、従業員は生産性低下の原因として、「通知疲れ」から「IT問題」までさまざまなものを挙げている(注5、注6)。

 生産性低下の原因は多岐にわたるが、人事部のマネジャーは、組織がこの問題に対処できるようにさまざまな手段を講じることができる。

複数の要因による不確実性が続く

 コロナ禍は、生活のほとんど全ての面に大きな混乱をもたらし、その影響は長く続いている。不動産業界で人材紹介サービスを提供するKeller Augustaのシニア・マネージングディレクターであるケイトリン・キンケイド氏は「事態が落ち着くように感じたが、常に新しい問題が起こる」と述べた。パンデミックの波が続いていることや景気後退への懸念、各業界のレイオフ、物価の上昇要因が従業者を不安にしている。

 Morgan Stanleyの調査「2023 State of the Workplace」では(注7)、従業員の過半数である66%が「経済的ストレスが仕事や私生活に影響を及ぼす」と回答しており、調査対象となった人事部のマネジャーの83%が「従業員の経済的問題が生産性に影響を及ぼすことを懸念している」と回答している。

 人事関連のITサービスを提供するLeapsomeの共同CEOであるジェニー・フォン・ポデヴィルス氏は次のように述べた。

 「従業員は疲弊している。不安と変化の全てが、彼らの集中力を消耗させる」

 パンデミックの最中も従業員たちは前進を続けたが、同じ方法で同じような結果を得られたわけではない。フォン・ポデヴィルス氏は「それが学習とイノベーションの遅れにつながった」と指摘する。これは、企業が不足やエラーを解決せずに急いでコードを書き、何があっても仕事を進めようとして、結果的に企業のシステムに負担がかかる「技術的負債」を作ってしまうことと似ている。

 「非同期のテレワークという環境で、どのように学習と能力開発を行うかについて、私たちは意識的ではなかった。若い従業員は、対面での共同作業をはじめとした特定の行動や特定の状況に触れることで多くの学びを得られる。これらの従業員にとってはテレワークが不利に働いている。こうした状況はここ数年なかった」(ポデヴィルス氏)

生産性格差の是正

 マネジャーは従業員が過去3年間に経験したことや、現在も個人的な生活や仕事で取り組んでいることに対して共感を持つことが大切だ。

 「その人がいる場所に行き、その人に会うのです」とキンケイド氏は言う。つまり、個人の総合的な貢献とその人の存在に焦点を当てることが重要だ。これにより、従業員の意欲が高まり、それが生産性に影響を与え、彼らをチームにとどまらせることに役立つ。「これが別の仕事を検討している人たちからよく聞く話だ。これらの共感は肩書や報酬以上のものだ」と同氏は述べる。

 テレワークやハイブリッドワークを維持する企業は、生産性を促進する環境構築を先導すべきであり、生産性が低下した場合にも従業員を非難するべきではない。「過去の半世紀を見ると、革新が職場の生産性を大きく推進してきた」とポデヴィルス氏は述べている。もし企業が、それらの職場環境を意図的に築くことを怠ると、革新を生む原動力は失われてしまうだろう。

 「何かがうまくいかない場合は、従業員と定期的にコミュニケーションを取り、組織を調査することが重要だ」と同氏は付け加えた。それにより、従業員のメンタルヘルスや意欲、心理的安全性(注8)、そしてキャリアの機会や学習に対する感じ方などをより適切に理解することができる。

 これらの取り組みにより、ピアメンターシップやメンタリングプログラムなどの戦略を試みることが可能になるかもしれない(注9)。これらの戦略は、生産性の不足を埋める手段として役立つ場合がある。「これらはいくつかの課題を確認する優れた方法であり、実施する施策がもたらす影響確認する方法でもある」とポデヴィルス氏は述べている。

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