検索
特集

生成AIで進化する「Azure AI」は何に役立つのか

アプリケーション開発者やデータサイエンティストなどに対して幅広いAIサービスを提供しているMicrosoft Azure AIが、生成AIによってさらに進化した。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

 生成AI(人工知能)の分野で大きな存在感を示すMicrosoft。近年は、OpenAIやMeta、NVIDIA、Hugging Faceなどとのパートナーシップの中で、自社サービスの強化を急ピッチに進めている。

 その中でも、開発者やデータサイエンティストに向けてAIを使ったアプリケーション開発やサービス開発、データサイエンスの環境を提供しているのが「Azure AI」だ。人材のレベルにかかわらず、幅広い用途に対して、ML(機械学習)モデルの構築やデプロイ、運用を可能にするとして注目を集めている。「Azure AI」のソリューションの内容と実用例を日本マイクロソフトの松崎 剛氏が解説した。

Azure OpenAI Serviceとは何なのか ChatGPTとの違い

 Azure AIは、2層に分かれている。一つ目はAzure AIサービスの層で、Micrsoftが提供する事前学習済みモデルをAPIコールなどの形態で利用できる。もう一つはML Platformの層で、ユーザーが自らモデルを開発する環境を提供する。こちらは主に「Azure Machine Learning」がベースで、機械学習の予測モデルの作成やテスト、デプロイ、運用などを実施するための機能をそろえている。


Azure AIのサービス体系(出典:松崎氏の投影資料)

 松崎氏はまず、Azure AIサービス層のなかでも、「Azure OpenAI Service」にフォーカスして説明した。

「Azure OpenAI Serviceとは、『ChatGPT』の機能をAPIを介して提供するもの。Azure OpenAI Serviceを介して入力したデータは、AIモデルの学習に利用されることはないのでご安心いただきたい」(松崎氏)

 Azure OpenAI Serviceでは、「GPT-3/3.5」「ChatGPT/GPT4」「Codex」「DALL-E2」の4つの生成AIモデルを利用してシステムを開発できる。主に以下のような用途に対応しているという。

  • テキストの自動生成やコンテンツ制作の支援
  • 構造化/非構造化データを利用
  • テキスト要約、Q&Aフィードバック
  • チャットbot、AIアシスタント
  • 自然言語からコードを生成・補完
  • テキストから画像を生成

 なおOpenAIも同様のサービスとして「OpenAI.com」を提供しているが、Azure OpenAI Serviceとの違いについて松崎氏は次のように説明した。

「仕様や価格はほぼ同じで、違いは、Azure OpenAI Serviceが厳格なビジネス利用を想定した多様な追加機能や契約を含んでいる点だ。逆にOpenAI.comはフレキシブルで新モデルへの対応が早く、無償でのプレビュー機能提供も多い」

 事実、Azure OpenAI Serviceは、企業利用を想定して、「Microsoft Entra ID」(旧称:Azure AD)による認証や「責任あるAI」の観点から有害な利用を検出してブロックするフィルタリング機能などを備えている。さらに、Microsoftは、Azure OpenAI Serviceを含む「Azure Gognitive Service」において、99.9%以上の稼働率を保証している。OpenAIのAPIはSLA(サービス水準合意:Service Level Agreement)を公開していないため、この点は大きな違いだ。

ChatGPTで広がるAIの可能性

 生成AIの活用は猛烈な勢いで広がっている。個別のAIモデルで開発していた機能の多くが生成AIで代用できるという認識が広がったことが、その情勢を後押ししているという。

 ChatGPTを活用すれば、ユーザーが入力した自然文を「レストラン予約」「航空機手配」「その他」に分類し、それぞれの質問に答えさせるといったことが可能だ。航空機手配の依頼内容から「日時」「出発空港」「航空会社」などの要素を抽出することもできる。各所のAIが生成AIに置き換えられていると松崎氏は語る。

 複数の生成AIモデルを用いて、AI活用をさらに高度化する試みも進んでいるという。Microsoftは、「TaskMatrix.AI」という、画像生成と編集のためのエージェントデモアプリを公開している。ソファの画像をアップロードし、「ソファを机に変えて」「ウオーターカラーペインティングにして」と英語で指示すると、まずChatGPTがテキストを分析し、ソファをマスクする処理、マスク部分に机を描く処理、背景をペイントする処理などにタスクを分解する。次にこれらのタスクに従って「Hugging Face」が画像を生成する。タスク分解はChatGPT、その後の処理は別のモデルが実行する仕組みだ。

 同じような自動化の処理は、「LangChain」でも実行できる。LangChainは、Azure Cognitive ServicesとのAPI連携によって使用可能だ。

 「オートノマス(自律)・エージェントのような使い方が、一般のビジネスやロボティクスに広がりつつある。生成AIの登場によって、従来のAIプロフェッショナル企業に発注しなくてもAIが使えるようになった。まさにビジネスパーソンへのAIの解放。それほどのインパクトを生成AIが与えている」(松崎氏)

 特によく使われるアーキテクチャが非公開ドキュメントだ。OpenAIが知らない情報をもとにした、質問応答や要約を生成するのに使える。司法、銀行、行政などのシーンで多く見られ、世界的には全業界に広がっている。

ユーザーのモデル構築を助けるML Platform

 次に松崎氏は、Azure AIのなかでML Platform層について説明した。ML Platformではユーザー自身がモデルを構築して開発できる。その支援サービスとしてAzure Machine Learningがある。


Azure Machine Learningの主なサービス内容(出典:松崎氏の投影資料)

 Azure Machine Learningの主な機能の一つに、「コンピューティング・クラスター」がある。自動でノードをスケールアップまたはスケールダウンすることで開発効率を高める機能だ。

 また、「AutoML」(自動機械学習)もよく使われる機能の一つだ。必要な学習データを用意すれば、機械学習モデルの構築に必要なフローの中でも、データの前処理やアルゴリズムの選定、学習、学習済みモデルの精度検証の一部を自動化できるというもの。回帰・分類、時系列分析などに対応している。さまざまな機械学習フレームワークを組み入れられる点も、ユーザーから評価を得ている。

 これらは「Azure Machine Learningデザイナー」というツールで実行できる。

 「データをクリーニングして、加工後のデータを学習用と評価用に分ける。所定のアルゴリズムで学習を進める。できたモデルを評価データでテストする。この一連の流れを、全てドラッグ&ドロップとプロパティ設定のみで実施できます」(松崎氏)


Azure Machine Learningデザイナー(出典:松崎氏の投影資料)

Azure AIの新機能と強み

 このAzure Machine Learningにも生成AIに関連する機能が実装されている。松崎氏は最新機能を幾つかピックアップした。

 まず、Azure Machine Learningのカタログに公開されている「GPT-2」「DALL-E」、Googleの「Flan-T5」といったモデルに対して、簡単な操作でアプリケーションへの統合を可能にする「Foundation Model」機能がある。Hugging Faceのモデルや、OpenAIの「Whisper」なども含まれている。

 「Azure Machine Learningプロンプトフロー」は、「Azure AI Studio」で提供される大規模言語モデルを利用したAIアプリケーションの開発を効率化するためのツールだ。処理の流れをワークフローとして記述することで、コードが煩雑化することを防ぎ、生成AI処理のモジュール性を高められる。

 現在プレビュー機能として、「NVIDIA AI ENTERPRIZEソフトウェア」が利用できるようになった。これはNVIDIAによる検証済み、かつサポート付きの開発、実行環境を提供するもの。ライブラリーから学習モデル、ワークフロー、ツールセットまでを含むフルスタックソリューションだ。商用プロダクトの開発などで安心して利用できる。

 最後に松崎氏は、「Azure AIサービスが提供する事前学習済みモデルと、ユーザー自身が開発したモデルの両方を安心して利用できる点がAzure AIの強みとなっている」と強調した。

本記事は、エヌビディアが2023年7月28日に開催したオンラインイベント『NVIDIA 生成AI Day 2023 Summer』の内容を編集部で再構成した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る