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システム導入だけでは不十分? 現場の負荷を高める改正電帳法のNG対応と解決策

2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法の宥恕期間終了が迫っている。現場の負担増が予想される中、RPAで対象業務を自動化し、業務を効率化する企業が出てきた。

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 2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法の宥恕期間が、2023年12月末に終了する。2022年12月に発表された令和5年度税制改正大綱ではさらなる宥恕措置が設けられたが、企業によっては要件を満たしたシステムの導入や新たな業務フローへの対応が急務だ。

 ユーザックシステムの東條康博氏(経営企画本部 チーフエバンジェリスト)によると、改正電子帳簿保存法対応を機に大幅に増えると予想される現場の負担を減らすには、新たなシステムの導入といった対応だけでは不十分であり、デジタル活用による業務の自動化が必須だという。ある企業は改正電子帳簿保存法の対応にあたって、仕入先からメールで送られてくる請求書を帳簿保存システムに保存する必要が出てきたが、請求書の送信方法などがバラバラで人手での作業は限界があった。どのように解決したのか。

 東條氏が登壇したウェビナーで、改正電子帳簿保存法対応の注意点や対象業務をRPAで自動化した事例を紹介した。

現場の負荷を高める改正電帳法のNG対応

 東條氏はセミナーの冒頭で、改正電子帳簿保存法への対応が求められる背景を次のように説明した。

 「日本には優秀な人材が多く、これまではマンパワーで多くの業務を回すことが可能でした。しかし今後は労働人口の減少に伴い、生産性が低下すると予想されます。そこで今、注目されているのが業務のデジタル化です。個人の能力に依存せずに生産性の向上を実現する業務のデジタル化を国は強く推奨しており、その一環として改正電子帳簿保存法への対応が求められています」(東條氏)

 一方で東條氏によると、デジタル化と称して手書きのFAXを「Microsoft Excel」に置き換えただけでは、本来の目的である業務改善や生産性向上にはつながらないという。

 「FAX業務をExcelに置き換えたとしても、データを入力したり確認したりする作業が新たに発生します。業務改善や生産性向上を実現するには、こうした作業を自動化し、できるだけ人手をかけずに業務を効率化する必要があります。こうした効率化は業務のスピードと質を向上させるだけでなく、従業員一人一人の気持ちを上向きにします。人手不足の深刻化が予想される中で、デジタル化と業務改善は企業の大きな強みになります」(東條氏)

 次に東條氏は、改正電子帳簿保存法対応で注意すべき点を解説した。改正電子帳簿保存法では、電子取引データをデータのままで保存するように定めており、データを出力した書面の保存を認める措置が廃止された。電子取引とは、取引先とのメールのやり取りやWebサイトを介したデータのダウンロード、ExcelやCSVによるデータの取得などを指す。また、電子取引データを保存する際には、条件によって「真実性の要件」と「可視性の要件」を満たすことが求められている。

 「真実性の要件とは、データの改ざんや削除ができないシステムを利用するといったことを指します。また、可視性の要件とは、税務署の求めに応じて日付や取引先名、金額で取引を検索できるといったことです。電子取引への対応は、この2つの要件を満たす必要があります」(東條氏)


電子取引データの保存要件(出典:ユーザックシステムの提供資料)

 電子取引データの保存に関しては、令和5年度税制改正大綱で「売上高が5000万円以下」「該当データがすぐに出せる」の2つの条件を満たしていれば、可視性の要件が不要となった。しかし売上高5000万円以上の企業は、引き続き真実性の要件と可視性の要件を満たす対応の準備が必要になる。一方で要件を満たしたシステムを導入し、対象業務を手作業で実施するだけでは、現場従業員の負担が大幅に増えてしまう懸念がある。

 「そこで私たちは、新たな業務フローをRPAで自動化することを提案しています。実際にRPAで対象業務を自動化し、効率化に成功した事例を紹介します」(東條氏)

 IT専門商社であるダイワボウ情報システムは、改正電子帳簿保存法に対応するため、仕入先からメールで送られてくる請求書のデータファイルを帳簿保存システムに保存する必要があった。

 請求書の送信方法はさまざまで、メール本文に請求書ダウンロード用URLが記載されているケースやPDFファイルがメールに添付されているケースがあった。また、仕入先が直接メールを送信する他に支店の営業担当者がメールを送信することもあったという。ダイワボウ情報システムは、メール業務の自動化に特化したRPA「Autoメール名人」を使って、請求書メールを受け取るところから請求書データのファイルを開封し、改正電子帳簿保存法に対応した保存をするところまでの一連の流れを自動化した。


電子帳簿保存法対応後のフローをRPAで自動化(出典:ユーザックシステムの提供資料)

 「自動化はまず、メールのパターンやドメイン別にデータを洗い出し、保存の対象となるデータを特定して分析するところから始めました。次に帳簿保存システムへのデータの受け渡し方法を確定し、利用する端末やツールを決めて自動化のフローを開発し、テストを実施しました。本事例では当社のカスタマーサクセスプランをご利用いただき、2カ月という短期間で自動化を実現しています」(東條氏)

 続いて東條氏は、Autoメール名人がメールに添付されたPDFファイルを実際に保存する様子を動画で紹介した。スケジュール実行機能を使って実行されたAutoメール名人は、件名やメールアドレス、ドメインなどの複数の情報を基に対象となるメールかどうかを判断し、帳簿保存システムに請求書ファイルを保存する。次に仕入先へのメール返信や保存ファイルのメール転送、保存完了のメール通知を行い、これを処理対象のメールの数だけ繰り返す。最後に該当するファイルの名前を変更し、請求書データの保存が完了した。

改正電帳法対応におけるデータ保存

 東條氏は、改正電子帳簿保存法への対応では、RPAによる自動化と共に、取得したデータをデータの種類ごとに分けて保存することを勧めていると話す。

 「改正電子帳簿保存法対応では、データを管理する箱はいくつあっても問題ありません。PDFデータはPDFに特化したファイル管理サービス、テキストデータはテキストに特化したファイル管理サービスといったように、データの種類ごとに分けて保存するのがいいでしょう」(東條氏)

 WebEDIやメールEDIのテキストデータのレイアウトは取引先ごとに異なり、それぞれのテキストデータを開けて日付や取引先名、金額のデータを取り出し、PDF化して保存するのは時間と手間がかかる。そのためユーザックシステムは、データを種類別に分けて保存することを勧めているという。

 また、EDIのデータであれば、販売管理システムを使ってデータを保存することが可能だが、この方法だと先に述べた真実性の要件と可視性の要件を満たすことができない。

 真実性の要件を満たすには、全データを訂正や削除ができないようにパスワードをかけて保存することが求められるが、販売管理システムでは訂正や削除ができてしまう。外部のデータベースにデータを集めてパスワードをかければ真実性の要件は満たせるが、その場合、可視性の要件を満たす機能を追加で実装する必要がある。

 具体的には日付や取引先名、金額が分かる検索画面を作る必要があり、さらに全取引分のデータ取り込み機能も必要だ。加えて伝票ごとの金額を集計する集計機能やデータをCSVで出力する出力機能も必要であり、こうした機能を契約している取引先の数だけシステムに実装しなければならない。

 「こうした対応には時間と手間がかかり、企業にとって大きな負担になります。そのため当社では、改正電子帳簿保存法の法的要件を満たしているデータ管理サービスを利用することを勧めています」(東條氏)

 セミナーの最後に東條氏は、改正電子帳簿保存法への対応と業務のデジタル化、RPAによる業務の自動化について次のように語った。

 「改正電子帳簿保存法への対応と業務のデジタル化、RPAによる業務の自動化は、企業の生産性向上だけでなく、競争力の強化にもつながります。改正電子帳簿保存法への対応をきっかけとして、デジタル化やRPAによる自動化を業務にうまく適用し、業務改善、さらには生産性の向上につなげていただければと思います」(東條氏)

本記事は、2023年8月22日にユーザックシステムが開催した「業務トレンド 『電帳法、RPA、デジタル化』解説30分集中セミナー」の内容を編集部で再構成した。

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