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ハンコ、紙、Excel依存から北海道ジェイ・アール・システム開発はどう脱却したのか

大量のアナログ業務の効率化が課題だった北海道ジェイ・アール・システム開発は、プロジェクト開始後わずか1年で内製化体制を構築し、脱ハンコやペーパーレス、Excel依存からの脱却に成功した。短期間で内製化を実現し、成果を上げるための工夫とは。

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 JR北海道グループ各社のシステム開発や運用を手掛ける北海道ジェイ・アール・システム開発は、ハンコや紙による大量のアナログ業務を抱えていた。

 生産性に課題を抱えていた同社だが、2022年度に一部の稟議申請業務で脱ハンコとペーパーレスを実現し、さらに幾つかの業務で「Microsoft Excel」(以降、Excel)依存からの脱却にも成功する。2023年度には社内情報の一元化や文書管理の適性化に着手し、社内業務全般のデジタル化に向けたさらなる取り組みの準備も進める予定だという。

 プロジェクトを担当した大庭久和氏(企画・業務支援グループ 企画ユニット 部長)と東 秀吾氏(同ユニット 企画・購買リーダー)が、短期間で内製化を実現し、社内のデジタル化を推進するための工夫を語った。

ハンコ、紙、Excelに依存した業務

 JR北海道グループの一員として、グループ内外のシステム開発や運用を手掛ける北海道ジェイ・アール・システム開発は、ハンコや紙による大量のアナログ業務、特に稟議書や申請書の承認手続きに多くの手間や時間がかかっており、デジタルによる効率化が急務だった。

 同社は脱ハンコとペーパーレスを実現すべく、「不要な申請書の廃止」「申請時間の短縮」「入力ミスと確認作業の削減」「外出先での承認」を目標に掲げ、有効なデジタルツールの比較検討を開始する。大庭氏によると、この過程で施策のスコープを脱ハンコやペーパーレスに限定するのではなく、より幅広い範囲のデジタル化にも取り組むべきだと考えるようになったという。

 「製品の可用性や性能・拡張性、運用・保守、操作性、デザインといった項目を比較検討する中で、脱ハンコやペーパーレスだけでなく、社内の他の課題にも対処できるデジタルツールを導入すべきだと考えるようになりました。課題を再整理した結果、新たに『業務がExcelに依存している』『社内情報が分散している』『社内文書が適切に管理されていない』といった課題が明らかになりました」(大庭氏)

 北海道ジェイ・アール・システム開発は、社内のさまざまな業務にExcelを利用しており、あらゆる部署でExcelがなければ業務が進められない状況だった。同社は情報発信ツールとして「掲示板システム」「コラボレーションプラットフォーム(Microsoft Teams)」「メール」の3つのツールを利用していた。しかし従業員から「必要な情報を探すのが難しい」といった声が上がっていただけでなく、情報の伝達が漏れる危険性が指摘されていた。さらに同社は社内文書をファイルストレージサービスに保存していたが、更新履歴や保存期限を適切に管理できておらず、早急に対応する必要があった。

 北海道ジェイ・アール・システム開発は、脱ハンコとペーパーレスに加え、新たに明らかになったこれらの課題を解決する目的で再度デジタルツールを比較検討した。その結果、ワークフローとWebデータベース機能を備えたノーコード/ローコード製品「SmartDB」の採用を決めた。

段階的にデジタル化を進め、社内に推進しやすい雰囲気を作る

 北海道ジェイ・アール・システム開発は、2022年度から SmartDBを利用して段階的に社内のデジタル化を進めている。

 「プロジェクトを段階的に進めることで、成功事例を早期に作り出し、従業員にデジタル化の具体的な成果を提示できると考えました。成果を見た従業員がデジタル化に利点や可能性を感じれば、社内に推進しやすい雰囲気が生まれます」(大庭氏)

 同社はまず管理部門の申請書業務を中心に脱ハンコやペーパーレスを実施し、コスト削減に成功した。次にExcelに依存する業務を特定し、稟議申請業務などの6業務をSmartDBでデジタル化した。その結果、現場から「この業務をデジタル化したい」といったアイデアが積極的に出るようになったという。

 また、大庭氏によると、2023年度は社内情報の分散を解消すべく、SmartDBで情報の統合機能と文書管理機能を構築中で、これらは年度内に完成する予定だ。

ハンズオン形式の勉強会を開催し徐々に難易度を上げる

 北海道ジェイ・アール・システム開発は、大きく分けて開発部門と管理部門で構成されている。開発部門は顧客向けシステムの開発や運用を担当する部門で約160人、管理部門である企画部と総務人事部、経理部には約30人の従業員が所属している。

 社内のデジタル化は管理部門の従業員が担当した。管理部門の従業員の多くは開発未経験だったことから、SE経験者である企画部の東氏ともう1人が中心となり、IT未経験の従業員を開発メンバーとして育成することになった。開発メンバーは、企画部と総務人事部、経理部から各1人ずつメンバーが選ばれた。メンバーは週1回のハンズオン形式の勉強会に参加し、実際の開発を通して知識を深めたという。

 「勉強会は2カ月の間に計7回開催し、最初は比較的簡単なレイアウトの資格手当申請書の実装から始めて徐々に難易度を上げました。第1回は帳票の枠幅や背景色、見出しのサイズなどの画面レイアウトの設定、第2回は日付やプルダウンメニュー、ラジオボタン、ファイル添付などの各項目に必要な部品の設定、第3回は自動計算や条件による絞り込みなどのロジックの設定と進め、最後の第7回は複雑なワークフローの設定をレクチャーしました」(東氏)

内製化のコツは「まずやってみること」

 東氏によると、勉強会の実施によって、IT未経験の開発メンバーに共通するマインド面と技術面の課題が明らかになった。マインド面の課題は「開発する自信がない」、技術面の課題は「開発ツールになじみがなく、どの部品を使って開発すればよいか分からない」といったものだった。

 そこで東氏は、メンバーに開発に対する自信を持ってもらうために、業務プロセスをデジタル化する過程に同氏が自ら伴走して成功体験を積めるようにした。開発が思い通りに進んでいなくても励ますなど、メンバーがモチベーションを維持しながら開発に取り組める雰囲気作りを心掛けたという。

 勉強会で開発に関する質問が出るたびに丁寧に耳を傾け、一緒に手を動かしながら疑問点を解決することも意識した。他にもアプリケーション開発の考え方を記したガイドブックを作成したり、ITベンダーの定期的なサポートを活用して技術面の障壁解消に努めたりしたという。

 「どんなプログラムにもバグがあり、完璧に近付けるためには大量の時間と人手が必要です。アプリケーションは、実際に使ってみて初めて分かることがあります。最初から完璧を目指して開発する必要はありません。開発は経験すればするほど自信につながり、自信が付けば次のチャレンジにつながります。失敗を恐れずにまずはやってみることが大切です」(東氏)

 こうした工夫の結果、IT未経験だった3人の開発メンバーは、今ではエンジニアと対等に話ができるようになり、同じ部のメンバーにSmartDBの操作方法を教える役割も担っているという。

 「今回の成果を踏まえ、今後はさらにデジタル化の範囲を拡大し、例えば会社の利益に直結する開発業務をデジタル化したり、JR北海道グループの業務を効率化したりする予定です。新しいツールやテクノロジーの導入によって、JR北海道グループで生まれる変革や革新に期待しています」(大庭氏)

本稿は、ドリームアーツが10月18日に開催した「デジタルの民主化day」における北海道ジェイ・アール・システム開発のセッション「全社デジタル化計画“4脱1防” を推進する人材教育の具体策」の内容を編集部で再構成した。

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