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増殖する「調整業務」「大量の通知」をスリム化するSlack術とは

増え続ける営業業務をスリム化する方法について、Slackユーザー企業2社が活用事例を紹介した。

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 Salesforce.comが2023年2月に発表した調査レポート『セールス最新事情』(第5版)によれば、営業担当者が本来の営業活動に費やしている時間は全体の28%に過ぎず、残りの72%は営業活動以外のことに従事しているという。中でも17.6%を占めるのが、顧客や営業データの手入力や事務作業だ。


営業担当者の1日の時間配分(出典:セールスフォース・ジャパンの提供資料)

 同レポートによれば、営業担当者は成約に至るまでに、営業支援システム(SFA)や経費精算、勤怠管理、ワークフロー、メール、チャットなど、平均10個のシステムやツールを使い分けている。商談管理を精緻化しようとすれば、ツールへの入力作業など営業活動以外にかけるタスクが増えてしまうというジレンマが浮かび上がる。

 エッセンシャルな業務以外のタスクや調整業務、コミュニケーションが増え続け、生産性に影を落とす状況をどのように解決できるだろうか。2社の「Slack」ユーザー企業に学ぶ。

業務を増やすも減らすもSlack次第? 業務のスリム化を事例に学ぶ

 営業部門の生産性を高める重要な施策は「商談管理」だ。商談管理の意義の一つは、「商談状況の可視化」だ。商談を可視化すれば、社内のスムーズな連携や、適切な営業戦略の立案につながり、成約率が向上する。また「高精度なフォーキャスト」が可能になることも商談管理のメリットだ。人員・製品(サービス)を正確に予測できることで、対応がスムーズになり、顧客満足度と利益が上がる。

 セールスフォース・ジャパンの香川 敬氏(Slack 事業統括本部 エンタープライズ第二営業本部 第一営業部 部長)は商談管理の課題をこう指摘する。

 「商談管理における課題の一つは、関連業務が多いことだ。商談のメンテナンスや商談状況の報告と共有といったプロセスを、より簡素化、自動化する必要がある。もう一つの課題は、使うツールが多いことだ。ツールとデータを集約する必要がある。当社ではSlackと『Sales Cloud』をシームレスに連携させることで、ユーザー体験の変革、生産性向上を支援している」


セールスフォース・ジャパン 香川 敬氏

 SlackとSales Cloudのユーザーは、ツールをどのように活用し、営業部門の生産性向上を実現しているのか。法人営業を支援するセレブリックスと、人事システムのリーディングカンパニーをうたうWorks Human Intelligence(以下、WHI)の両社の担当者が語り合った。

 まず、営業プロセスや営業社員の生産性に関するよくある課題として、セレブリックスの今井晶也氏(執行役員カンパニー CMO 兼 セールスエバンジェリスト)はこう指摘する。

 「売上高を増やす取り組みは、(1)量を増やす、(2)質を高める、(3)単価を高める、の三つに分解される。どこかにバグが発生すると、問題が起きやすい。営業に関するオペレーションが煩雑だったり、マニュアル化されていなかったりすると、二度手間が発生し、営業業務の“量”が減る。営業マネジャーが行動管理や案件管理をするのではなく、“結果管理”に終始してしまうと、営業プロセスで起こり得る問題に対して先手を打てない。これは“質”の問題だ」


セレブリックス 今井 晶也氏

 WHIのM田矩行氏(Data Strategy Dept. Manager 兼 Sales Strategy Group Manager)は、自社で起きていた課題を次のように振り返る。

 「当社で課題だったのは、営業部門と他部門とのやりとりの多さだ。財務部門や法務部門、顧客サポート部門との煩雑なやりとりが多く、時間がかかっていた。“見積もりを申請したが、情報が不足していたため財務部から修正依頼が入った”といった状況だ。調査すると、提出された見積もりの約30%に差し戻しが発生していて、営業の業務負荷を高めていた」


Works Human Intelligence M田矩行氏

 こうした課題を営業部門内だけで解決しようとしても限界がある。そこで、WHIでは関連する各部署が膝を突き合わせて協議して、営業プロセス全体を貫く情報管理のルールを明確にしたという。そして、商談に関する情報には必ずSalesforceの商談IDやURLを付与することにした。これにより、財務担当者が「この商談の営業担当は誰だ?」と探すシーンは見られなくなった。

 タスクが一つ完了するごとに、営業担当宛てにSlackで通知が飛ぶように設定した。財務担当によって見積もりが承認されたら、通知が来る。営業はボタンを押せば即座に見積もりを作成し、顧客に送付できる。

マネジャーが減らさなければ業務は増え続ける

 一方、今井氏は、「営業プロセス改善とか生産性向上を掲げたプロジェクトが、形骸化されることは多い。その理由は、立案した施策をきちんと可視化していないからだ」と指摘する。「プロセスの改善や生産性向上に取り組むと決めた以上は、やるべきことを可視化して、ミーティングで都度確認すること。それがプロセス改善プロジェクトをやり切るコツだ」と語る。

 しかし、そもそも営業プロセスに関する正確なデータがなければ、感覚論や成功体験だけで施策を立案することになってしまう。営業プロセスのデータを整理して、何がうまくいっているのか、何がだめなのかを検証することがプロセス改善のスタートと言えるだろう。

 今井氏は、営業部門の働き方をより生産的にするために必要なこととして、“細マッチョ”というキーワードを挙げた。

 「“細マッチョ”、つまり業務をぎゅっと凝縮しつつ、強いところはより強くすることが重要だ。業務は放っておくと増え続ける。“メールの最後に追伸を書いたら返信率が上がった”というTipsがあると、皆がそれをやり始める。そうしたことが積み重なり業務はどんどん増えていく。経営層やマネジャー層は、営業担当者の生産性を上げるために、余計な業務はやらせないように注意しなければならない」(今井氏)

 これに対しては濱田氏も同意する。

 「Slackでも、営業に対する通知は増える傾向にある。多過ぎる通知を見落として、次のアクションにつながらなければ意味がない。当社では営業チームごとに課題をヒアリングし、本当に必要な通知内容だけに絞って通知を送るようにしたところ、アクションにつながりやすくなった。これは細マッチョの例だと思う」

 濱田氏のWHIでは、営業プロセスのデータを分析することで多くのことが見えてきたという。「大企業は20人以上の担当者と接触しなければ受注できない」「このフェーズで○日間停滞したら必ず失注する」といった法則が発見された。その法則に従って対策を打つようにしたところ、ここ数年連続で商談の成功確率が上がっている。

 営業部門の生産性向上を実現するには、まず商談情報をデジタル化し、関係部署と共有しながら管理することが重要だ。さらに蓄積した商談データを分析すれば次の一手も見えてくるはずだ。

本記事は、セールスフォース・ジャパンが2023年10月18日に開催したイベント「Sales Leaders Circle」の内容を編集部で再構成したものです。

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