Microsoft Copilotに“沼った”企業が7割超 Ignite 2023でのアップデート情報ダイジェスト
Microsoftは「Ignite 2023」(以下、Ignite)で「Microsoft Copilot」(以下、Copilot)の最新情報について発表した。本稿では、その内容を抜粋して紹介する。
Microsoftは2023年11月15〜17日(現地時間)に開催した「Ignite 2023」(以下、Ignite)で「Microsoft Copilot」(以下、Copilot)の最新情報について発表した。
「Copilot for Microsoft 365」は2023年11月1日から、企業向けに一般提供が開始された。既にVisaやBP、Honda、Pfizer、Chevronなどの大手企業や、Accenture、EY、KPMG、Kyndryl、PwCなどのパートナーがCopilot for Microsoft 365を採用している。
本稿では、Ignite に関するMicrosoftのレポート「Introducing Microsoft Copilot Studio and new features in Copilot for Microsoft 365」の内容を抜粋して紹介する。
■記事内目次
- Microsoft Copilotの先進ユーザーは効果を感じているのか?
- Microsoft Copilot Studioの導入
- Copilot for Microsoft 365に関する発表
- Microsoft TeamsのCopilot機能
- Microsoft OutlookのCopilot機能
- Microsoft LoopのCopilot機能
- WordのCopilot機能
- PowerPointのCopilot機能
- Microsoft Vivaとの統合
- その他、Copilotのトピック機能
Microsoft Copilotの先進ユーザーは効果を感じているのか?
Microsoftが11月15日に発表したレポート「What Can Copilot’s Earliest Users Teach Us About Generative AI at Work?」によると、Copilotの使用者の77%が「今後はCopilotなしでの作業を望まない」と回答した他、70%が「生産性が向上した」、68%が「作業の質が向上した」と報告している。タスクの完了スピードが29%も速くなり、会議のフォローアップが4倍速くなった。
「Bing Chat」と「Bing Chat Enterprise」はCopilotに統合され、「質問に答える」「コンテンツを作成する」「データを分析する」といった基本的な機能を提供する。インターネット接続を通じて常に最新の情報にアクセスできる。Entra IDでCopilotにサインインすると、「商用データ保護」の機能が起動し、チャットデータがモデルトレーニングに使用されることはない。
一方、「Microsoft 365 Copilot」も同様の基本機能とWeb接続、商用データ保護機能を備え、既存の「Microsoft 365」のセキュリティやプライバシー、アイデンティティー、コンプライアンスポリシーが適用される。データはMicrosoft 365テナント内で論理的に隔離され、ユーザーのコントロール下にある。なお、Copilotはユーザーを代表して行動するため、許可されていない情報にはアクセスできない。Microsoft 365 Copilotは「Microsoft Graph」にアクセスし、Microsoft 365アプリに統合されている。
Microsoft Copilot Studioの導入
Igniteでは、「Microsoft Copilot Studio」(以下、Copilot Studio)が発表された。これは、Copilotをカスタマイズして、独立したCopilotを構築するためのローコードツールだ。独自の企業シナリオに合わせたCopilotのカスタマイズやカスタムGPTの構築、テスト、公開が可能だ。Copilot Studioにおいては、同一のプラットフォームでCopilotのカスタマイズや構築、デプロイ、分析、管理を完結できる。
Copilot Studioを使用すると、Copilotをさまざまなデータソースに接続できる。これには、「SAP」や「Workday」「ServiceNow」のようなシステムや、企業の独自開発システムなどが含まれる。既にCopilot Studioは提供されていて、Microsoft 365のCopilotとの統合もプレビュー版として提供されている。企業は特定のニーズに合わせてMicrosoft 365のCopilotをカスタマイズ、活用することが可能になり、業務の効率化や情報管理の強化が期待できるとしている。
Copilot for Microsoft 365に関する発表
Igniteで、Microsoftは「よりパーソナライズされた対応」「高度な数学的および分析能力の向上」「協働作業におけるCopilotの完全参加」という3つのテーマに基づくアップデートを発表した。
Copilotの「よりパーソナライズされた対応」については、ユーザーの役割や好みに基づいてレスポンスを生成する新機能が実装された。Copilotの出力する文章やプレゼンテーション、コミュニケーションのフォーマットやスタイル、トーンをユーザーの好みに合わせて調整できる。この新機能はまず「Microsoft Word」と「Microsoft PowerPoint」に適応され、その後Microsoft 365の他のアプリにも順次展開される。これは、「Microsoft Outlook」での「ユーザーのスタイルで話す」機能など、以前に発表されたパーソナライズ機能を補完するものだ。
「高度な数学的および分析能力の向上」については、自然言語によって「Microsoft Excel」でPythonを使った複雑な数学的分析が可能になった。
さらに、Copilotが協働作業により深く参加するための新機能も発表された。ユーザーがMicrosoft Teamsの会議での議論に集中したり、ブレインストーミングのメモをデジタルホワイトボードで視覚化したり、Microsoft Loopでの共有ワークスペースを構築して、チームが協力して同じ情報を共有することをサポートする。
Microsoft TeamsでのCopilot機能
Microsoftは、2024年にCopilotが会議の一員に加わり、会議アシスタントになるとしている。Copilotが会議中のメモを参加者に共有したり、特定の内容を記録したりするように指示できる。「ベンの発言を引用して」と指示すると、Copilotはベンの発言を全員が見ることができるように文字起こしをする。
Teams会議の記録を残したくない場合は、トランスクリプションなしでCopilotを有効にするオプションが用意ある。この場合、Copilotは会議中に質問に答え、情報を提供することができる一方で、その後のやりとりの記録は残らない。Teamsチャンネルでは、長い投稿を要約したり、アクション項目を抽出したり、毎日使用するチャンネル内での重要な決定をレビューしたりする作業もCopilotに一任できる。
Teamsチャットやチャンネル内の「Copilotコンポーズボックス」を使用すると、Copilotがメッセージの作成やトーンの調整を支援する。
2023年12月から、「インテリジェントリキャップ」がCopilotに統合され、AIの利用を始めたばかりのTeamsプレミアムユーザーやCopilotを積極的に利用するユーザーなど、組織内の全ての人が同じ情報を共有し、一致した理解を持つことが可能になる。
インテリジェントリキャップは、欠席した会議の重要なポイントやアクションアイテム、決定事項などをまとめた要約が可能だ。この統合によって、組織内の全員が会議の内容を把握し、一貫性のある情報に基づいて行動できるようになるため、コミュニケーションと意思決定の効率化につながる。
Microsoft Whiteboard内のCopilotは、Teams会議中の話し合いのポイントを自動的にキャプチャーして視覚化し、それをWhiteboard内の共同作業スペースに整理して、全ての会議参加者と共有する。
Microsoft OutlookのCopilot機能
2024年初頭に提供予定のCopilot in Outlookは、会議の招待メールや関連するメール、重要な文書を精査し、要約を作成することで、会議の準備をサポートする。
Copilotは現在、複雑なメールスレッドを要約する機能も提供している。メールの文章から重要な情報を抽出し、「フォローアップミーティングの設定」のような具体的なアクションを提案する。ミーティングが決まると、議題の草案作成や議論の要約、魅力的な会議タイトルの作成、参加者のリストアップ、関連するメールスレッドの添付と内容の明確化、全員が参加できる時間の提案といった作業を実行する。
Microsoft LoopのCopilot機能
2023年11月15日に、「Microsoft Loop」アプリの正式版がリリースされた。Microsoft Loopは、柔軟性のあるキャンバスを提供することで、人々と生成AIが協力してプロジェクトの核となる場所を作り出し、チームとCopilotが共に思考し、計画し、創造するスペースを実現するとしている。
Loop内のCopilotは、過去の作業から適切なページを提案し、それを現在のプロジェクトに合わせて自動調整したり、目標に合わせたコンテンツを提案し、それに基づいて新しいページを作成したりするのに役立つ。
Microsoft Loopの「ワークスペースステータス」は、ダッシュボードのイメージで利用でき、チームの作業の追跡や、注目すべき重要な情報(締め切りが差し迫っていることなど)のフラグ付けによって、ユーザーがどこに集中すべきかを提示する。
WordのCopilot機能
近日中に提供される「catchup」と「comments」機能により、Wordでの文書のレビューが容易になる。「この文書で変更された内容は何か」といった質問をすることで、文書の変更や修正を簡単に確認できる。
PowerPointのCopilot機能
PowerPointにおいては、近日中に新機能が提供される予定だ。PowerPointでCopilotに企業のロゴやキャッチフレーズ、イメージ写真などのブランド資産を使用するよう指示し、Microsoft Designerを活用することで、AIが生成したビジュアルを基にプレゼンテーション資料に落とし込むことが可能だ。写真撮影の必要なしに、プレゼンテーションにブランドに合ったビジュアルを追加できる。
Microsoft Vivaとの統合
Igniteでは、「Microsoft Copilot Dashboard」の発表もあった。これは「Microsoft Viva」(以下、Viva)で提供されるもので、Copilotによる変革の準備、採用、測定の段階でユーザーをサポートする。現在プレビュー中のこのダッシュボードは、Microsoft 365アプリの使用状況に基づいて、Copilotによる効果を享受しやすい従業員の数を示す他、アプリごとにCopilotの利用状況を分析することも可能だ。
会議やチャット、メール、文書に基づいて、Copilotが生産性に及ぼす影響の初期指標を提供する。2024年初頭には、「Viva Insights」ライセンスを持つユーザー向けに、Copilotの利用状況をチーム間の協力やコミュニケーションのデータと組み合わせて分析した結果や、組織リーダー向けのレポート、Copilot導入前後の従業員の行動パターンや業務効率の変化の比較分析結果、従業員のフィードバックや意見を集めた調査結果などを可視化する機能も提供する予定だ。
2024年初頭にはプレビュー版として、Copilot内でVivaを使用できるようになる。Copilotは、Vivaのデータとアプリケーションを活用して、従業員、マネージャー、HRリーダーに対して、チームの健康状態の確認、目標と主要成果指標(OKRs)の設定、スキル向上や学習体験へのアクセスなどの機能を提供する。
Viva Insightsに新しく追加されるCopilotの体験では、リーダーやその代理人が自然言語を用いたプロンプトでViva Insightsから簡単にデータを問い合わせ、チームや組織に関する質問に答えるためのパーソナライズされたダイナミックなレポートを作成できる。
この機能は2024年1月にプレビュー版として提供される予定だ。「Viva Goals」「Viva Engage」「Viva Learning」「Viva Glint」のCopilot体験もアップデートされ、「Viva Learning」「Viva Engage」「Viva Amplify」にも新機能が追加される。これによって、組織内での学習やエンゲージメント、目標設定、従業員の幸福感に関する取り組みを強化できるとしている。
その他、Copilotのトピック機能
Copilotの「トピック機能」を利用することで、組織内で共有される知識を生かして、全社に知識を共有することが可能になる。さらに、関連する複数の文書にまたがる複雑なトピックを要約することで、新たな機会を見つけ出すきっかけを作る。組織全体の情報共有が促進され、従業員はより広範な情報に基づいて意思決定やアイデアを形成できる。
なお、Copilotは一般提供開始時には日本語に対応しているが、現時点では「Excel in Copilot」は英語対応のみだ。Excel in Copilotは、2024年の初めに追加言語のサポートが予定されているが、追加言語に日本語が入るかどうかは不明だという。
本稿は、Microsoftが「Ignite 2023」で発表した内容を抜粋して解説した「Introducing Microsoft Copilot Studio and new features in Copilot for Microsoft 365」(2023年11月15日)の内容を編集部で再構成した。
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