Qlikが考えるAI戦略 「Qlik Staige」で企業をどう支援する?
安心かつ安全に、信頼できるAIの開発と利用を実現するソリューション体系「Qlik Staige」とはどのようなものか。Qlik副社長兼データ事業本部長のドリュー・クラーク氏が解説した。
AI(人工知能)開発にまつわる公的規制の動きが世界各国で始まりつつある。米国では2023年10月にジョー・バイデン大統領がAIの安全性確保を図るための大統領令を発令した。プライバシーの保護とデータセキュリティ、徹底したガバナンス、倫理面や真偽性の考慮など、企業がAIを活用するためのハードルは高くなる一方だ。
データ統合および分析ツールベンダーのQlik Technologies (以下、Qlik)はそうした動きをいち早く捉え、AIで革新を図ろうとする企業を支援するソリューション体系「Qlik Staige」を2023年9月に発表している。本稿ではQlik日本法人のクリックテック・ジャパンが2023年12月12日にオンラインで開催した記者向けの説明会の内容を基に、QlikのAI戦略について解説する。
データをAIモデルに活用するための4つの条件
アクセンチュアが2023年4月に発表した調査レポート「アクセンチュア テクノロジービジョン2023」によれば、企業経営層やIT担当幹部の98%が生成AIについて「人間の能力を拡張するための伴走者、クリエイティブパートナーやアドバイザーとして活用することで、クリエイティビティやイノベーションが大幅に進展する」と捉えている。企業がAIを活用しないという選択肢はほとんどないということだ。
しかし、理想と現実には大きなギャップがある。Qlikが2023年8月に調査会社のEnterprise Technology Research(ETR)に委託して実施した調査によれば、正式なAI戦略を策定している企業は全体の39%にすぎない。
AIが人間の頭脳と同じように動くためには膨大なデータが必要だが、Qlik副社長兼データ事業本部長のドリュー・クラーク氏は、「多くの企業がデータの重要性を過小評価している」と指摘する。クラーク氏によれば、データをAIモデルに活用していくためには以下の4つの条件をクリアする必要がある。
- データの多様性: 構造化されたデータに加え、それ以外の言語データや画像データなど、いろいろなデータをそろえること
- ガバナンス: 誰がデータを使うのか、使われているデータのガバナンスをしっかりすること
- 利用しやすいインサイト: データが人間の理解しやすい形で使えるものになっていること
- つながっているシステム: 最終的に人間が判断を下すところに至るまでのあらゆるシステムとつながっていること
Qlik Staigeが提供する5つの機能
AIへの注目度は高いものの、実際に導入するとなると困難が伴う。Qlik Staigeは、組織が先に挙げた4つの条件を整えてAIを活用するための信頼性の高いデータ基盤を構築できるよう、支援する。具体的には、以下の5つの機能を提供する。
- AIに対応したデータセット
- AIが強化するデータ統合と品質
- ファインチューニング(微調整)とエンタープライズLLM
- AIによる探索的分析
- 生成AI
まずはデータをAIで使えるように準備し、それを統合する必要がある。ここでは2023年に買収したデータマネジメント製品の「Talend」が価値を発揮する。あらゆるデータポイントからデータウェアハウス、データレイクに集められたデータはAIの活用により不完全性や破損、信頼性がチェックされ、品質が改善される。
そのデータがLLM(大規模言語モデル)に取り入れられ、微調整を経て使えるものになっていく。構築された基盤からユーザーはアナリティクス製品の「Qlik Sense」を使ってより早く、より深いインサイトを導き出す。
さらには「ChatGPT」などと接続して、分析結果のレコメンデーションや自然言語による数式作成などが可能になり、質問への迅速な回答と問題解決の効率化が実現する。
「各業界のリーディング企業の多くがQlikを導入し、『Qlik Cloud』を活用する企業の4社に3社は『Qlik AutoML』を使って高度な機械学習モデルを作成するようになっている」とクラーク氏は話す。AI活用のトレンドは日本も例外ではなく、従来型AIおよび生成AIの活用事例は、徐々に広がりつつあるようだ。
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