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DX推進組織がこぞってNotionを採用する理由

NotionはDX推進部署のユーザーからの引き合いが多い。「DX」という小難しい印象を与えるが、Notionを導入することで社内のコミュニケーション文化が大きく変わり、おのずと変革の土壌が培われるのだという。Notionの特徴と「Microsoft 365などの既存ツールとの使い分けの方法を解説する。

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 ここ数年で急激に人気を集めている「Notion」。2021年10月に日本語のβ版をリリース以降、ベネッセやサントリー、トヨタ自動車、三菱重工、サイバーエージェントといった大手企業を中心に導入社数を増やしている。

 Notionの日本代理店、ノースサンドの六山大輝氏によれば、同社がやりとりする顧客の多くがDX推進部署のユーザーだという。キーマンズネットでもベネッセのDX推進組織であるDigital Innovation Partners(DIP)のNotion活用事例を紹介し、大きな反響があった。

 こうした大手企業ではNotionを導入することでDXの素地となる組織文化の変革に成功しているという。六山氏が、Notionの特徴とDXで役立つポイント、「Microsoft 365」などの既存ツールとの使い分けの方法を解説した。

DX推進組織でNotionが求められる理由

 Notionは、ノートやドキュメント、Wiki、プロジェクト管理、データベースなど多彩な機能を一つのプラットフォームにまとめた「コネクテッドワークスペース」と自称している。テキストや画像、リストなどをブロックとして組み合わせてページを作成でき、柔軟性や可変性に優れていることが特徴だ。

 DX推進組織でNotionが人気の理由について、六山氏は「NotionはITによって組織やビジネスを変革できる状態を構築できるため」と話す。

 DXのステップは「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」と進むが、多くの企業は、部署単位で一部の業務フローやプロセスをデジタル化するデジタライゼーションの段階にあるという。このフェーズにおいては、ツールの乱立によるナレッジのサイロ化や部署間での一体感の低下、デジタル人材不足といった課題を抱えやすい。

 Notionはこれらの課題を解決し、DX推進をサポートするという。具体的にどのようなメリットや機能があるのか。

社内ポータル

 Notionは、社内の情報を集約して、共有するページを手軽に作成できる。ノースサンドにおいては、月に1度全社員集会があり、その資料や動画を全社ポータルで共有している。さらに、全社向けポータルの中に部署単位、チーム単位のポータルを作成し、目標やメンバーの情報を格納することも可能だ。


図1 全社ポータルのイメージ(提供:ノースサンド)

図2 部署ポータルのイメージ(提供:ノースサンド)

 「組織横断のプロジェクトなどで、部署ポータルを参考に案件にマッチした人をアサインするといった使い方が可能です。部署間のコミュニケーションも円滑になります」(六山氏)

 「インフォメーションズ」というセクションを作り、就業規則や研修コンテンツ、福利厚生の情報、各種マニュアルといった情報を集約して、ブックマーク集のように活用することも可能だ。新入社員が見るべき情報や使うべきツールのリンクをまとめておくことで、受け入れの工数なども低減される。

 「一般的に、社内ポータルは管理部門が一部の機能を解放しながら中央集権的に作成することが多いと思います。Notionを使うことで、全従業員で社内ポータルに情報を蓄積して育てる文化が育ちます」(六山氏)


図3 ブックマーク集のイメージ(提供:ノースサンド)

プロジェクト管理

 Notionのプロジェクト管理機能は、多数のメンバーが参加する大規模プロジェクトから個人のタスクまでをデータベースとして統合し、それらをさまざまな視点(ビュー)で表示できることが特徴だ。

 進行中のプロジェクトのスケジュールや進捗状況を、ガントチャート形式や看板形式で確認、更新できる他、チームメンバーが各プロジェクトについてどのようなタスクを持っているかという情報も一覧できる。

 「情報検索や状況確認が楽になるだけでなく、タスクに誰をアサインするべきかという判断も楽になります」(六山氏)


図4 ガントチャート形式のビュー(提供:ノースサンド)

図5 メンバーごとにタスクを可視化(提供:ノースサンド)

議事録管理

 Notionにはさまざまなテンプレートが用意されている。会議の議事録のテンプレートには、事前準備やアジェンダ、決定事項といった項目があり、決定事項の項目に「メールを送信する」といったタスクとその期限、対応者を登録することで、個人のタスクにもそのデータが連携される。

 「会議の議事録と個人のタスクがひも付いていることで、自分のやるべきことやその背景を見失うことがなくなります」(六山氏)

Notion AI

 「Notion AI」は、ワークスペースの文章に基づいて翻訳や要約、改善、アイデア出しなどを実現する機能だ。2023年11月に「Q&A」機能もリリースされ、ユーザーが自然言語で質問を投げると、Notionに格納されているデータを基に、AIが質問に沿った答えを提示できるようになった。

 「Notionに格納しているデータによってAIに質問できる内容やレベルも変わるでしょう。申請系のドキュメントを格納しておけば、どのように経費申請をしたらよいかという質問に答えられます。従業員の情報をデータベース化することで、『Amazon Web Services(AWS)に詳しい人を教えて』という質問にも答えられます」(六山氏)

なぜNotionでDXが加速するのか

 Notion導入のメリットは幾つかある。まず一つが情報の集約だ。議事録やドキュメント作成、プロジェクト管理など用途別に分かれていたツールがNotionに集約されることで情報を横ぐしで可視化できるようになる。

 デジタル人材育成にも有効だ。六山氏によれば、ユーザーはNotionを利用する中で、「どのような情報があれば求める仕組みを作れるか」を知り、あらたな情報の価値や運用方法に気付くようになる。これによって、デジタル人材の素養が身に付くと六山氏は話す。さらに複数のツールを使って情報を連携するような「仕事のための仕事」も大幅に減るので、働き方が大きく変わる。

 ノースサンドでもNotionを活用してコミュニケーションの方法を変革した。コンサルティング事業を営む同社では、数人のメンバーがチームを組み、顧客のオフィスに常駐してプロジェクトにあたる。そのため、社内のナレッジやメンバーの状況、取り組みなどがブラックボックス化しやすいという課題があった。

 Notion導入後は、顧客とプロジェクト、従業員の情報をひも付けて管理することでこの問題を解消した。

 図6は、プロジェクトの情報をまとめたページだ。データベース機能を使ってプロジェクトのテーマや概要、タグを付けて管理している。図7は顧客の情報、図8は従業員の情報をまとめたページだ。顧客のページを見て、取引企業を確認したり、従業員の情報をクリックして、これまで担当している案件を一覧したりできる。


図6 プロジェクト一覧のイメージ(提供:ノースサンド)

図7 顧客情報一覧のイメージ(提供:ノースサンド)

図8 社員情報一覧のイメージ(提供:ノースサンド)

 「DXについて知見が必要なときは、プロジェクトを『DX』などのキーワードで絞り、担当者を探してアドバイスをもらえます。さまざまな観点から、芋づる式に情報を検索できるのでコミュニケーションの活性化につながりました」(六山氏)

 Notion導入による効果は幾つもあった。「Microsoft PowerPoint」や「Microsoft Word」を使って資料やドキュメントを作りこむのではなく、Notionで素早くシンプルにテキストを作成するようにしたことでナレッジを蓄積しやすくなったという。さらに、Notionがアイデアを創出し、試して確認する場になったことで、従業員一人一人に改善の意識が芽生え、組織のカルチャーとして根付いていると六山氏は話す。同社ではNotionを導入後、従業員のエンゲージメントスコアの数値が上昇した。


図9 社員エンゲージメントスコアの推移(提供:ノースサンド)

NotionとMicrosoft 365との使い分け

 最後に六山氏は、Microsoft 365などの既存ツールとNotionの使い分けの方法を解説した。Notionは多機能であるがゆえに、既存ツールと一部の機能がかぶる場合もある。そうした際に、使い分けの方法は大きく3パターンあるという。

 1つ目がNotionと既存ツールを共存させるパターン、2つ目がNotionに多くの機能を集約させるパターン、そして3つ目が既存ツールを中心にNotionのごく一部の機能のみを利用するパターンだ。

 Notionとよく併用されるツールとして「Microsoft 365」や「Google Workspace」といったグループウェアが挙げられる。この場合、社内のドキュメント共有や連携はNotion、社外とのオフィシャルなやりとりなどはOffice製品などを利用するケースが多い。一方、「Microsoft SharePoint」や「Microsoft Project」「Microsoft Planner」といったナレッジ管理、プロジェクト管理の機能はNotionで代替することを推奨しているという。

 「関数が複雑に組み込まれたExcelシートやワークフローの機能などは既存のツールを利用する企業が多い印象です。導入初期に、Notionをどの範囲で利用するかについて議論をしながら判断することをお勧めします」(六山氏)

本稿は、ノースサンドが12月19日に開催したセミナー「組織DXの失敗を防ぐ秘訣とは? 〜Notionが導く新たな働き方〜」の内容を編集部で再構成した。

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