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ERPの契約時はここを確認 トラブル回避のためのポイント解説

契約書の確認と承認作業はERP導入時の重要なステップだ。本記事では「料金はいくらか」「責任の所在はどこか」などERP契約の際に確認するべき点を解説する。

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 契約書の確認と承認作業はERP導入時の重要なステップだ。顧客とベンダーの契約は、料金や規約、利用条件などERPに関するさまざまな物事の基礎になる。

ERPの契約とその重要性

 ERPの契約で顧客とベンダーの関係性が決まる。プロジェクトの複雑さや契約書の内容と長さ、顧客が提起した問題の数によっては、法務部門での確認に数カ月を要することもある。

 プロジェクトの対象範囲と要件によっては複数の契約を締結することもある。例えば、サードパーティー製のソフトウェアが必要な場合やハードウェアを導入する場合、ソフトウェアのライセンス取得、実装サービスを利用する場合などでは、それぞれ別途契約が必要になる可能性がある。

 契約書に記載事項の中で、特に次の項目を確認したい。

  • ERPの使用料金
  • 必要な機能とモジュール
  • サポート時間と問題解決にかかる時間
  • ソフトウェアの使用方法
  • ライセンスされるユーザー数
  • 契約解除の方法

ERP契約の種類

 ERPベンダーは自社の販売モデルに基づいて契約書を作成する。契約書に影響する販売モデルや関連条件には、ベンダーの規模や拠点とする国と地域、市場セグメントなどがある。例えば、ERPを顧客に直接販売するベンダーもあれば、代理店を通じて販売するベンダーもある。また、主要地域では直接販売し、他の国や地域では代理店を通じて販売するベンダーもある。

 ベンダーは通常3種類の契約書を使っている。しかし、サードパーティーを通じてソフトウェアを販売する場合は、その利用方法に工夫が凝らされる可能性がある。例えばサードパーティー企業にソフトウェアの機能強化や拡張、ノーブランド品のホワイトラベル製品化などを許可することもある。

ERPベンダーとの契約

 ERPの契約はベンダーが主要窓口となって締結する。実装作業を認定SIerが担当する場合も契約には実装サービスが含まれることがある。その場合は実装に当たってSIerとの契約が別途必要になる。

代理店が関係するERPベンダーとの契約

 大手ERPベンダーの中には代理店に販売を任せている企業もある。その場合は、ERPの修正や強化などソフトウェアに対する責任はベンダーが担い、サポートやコンサルティングなどの追加サービスは代理店が担う場合がある。

代理店との契約

 代理店はERPを含む契約を顧客と結び、責任を負う。代理店はベンダーと直接的な関係を持つが、顧客は代理店を通じてベンダーにソフトウェアの修正や機能拡張を依頼する。特定の市場や顧客のニーズに合わせて、代理店がソフトウェアをカスタマイズしたり強化したりできる場合もある。

ERPの契約を確認する際の重要な考慮事項

 ERPの導入および利用契約時は、法務担当者や外部の弁護士、技術メンバー、プロジェクト管理チーム、財務、契約管理の担当者などと進めるといいだろう。契約書を確認する際には以下のポイントを見るのがいい。

  1. ソフトウェアの所有者は誰か: ソフトウェアによっては開発プロセスに複数のベンダーが関与している可能性がある。OEMソフトウェアを販売する代理店が関係する場合もあるが、こちらは契約上ソフトウェアを所有していない。
  2. 問題修正の責任は誰にあるか: ERPの導入プロジェクトには複数のベンダーが関与する場合があるため、問題が生じた箇所によって責任の所在が変わる可能性がある。このとき、ソフトウェアの完成に必要なあらゆるカスタムコードも考慮に入れる必要がある。
  3. ソフトウェアの実装責任は誰にあるか: 実装責任はERPベンダーや代理店または認定実装パートナーが担う可能性がある。
  4. 代理店はERP知的所有権を持っているか: IPを所有する代理店ならERPを強化するカスタムコードを追加している可能性がある。
  5. どんな使用制限があるか: 多くの契約書にはそのソフトウェアの利用規約が記載されている。例えばユーザー数やソフトウェアを使用できる国、顧客によるソフトウェアの再販に制限が設けられる場合がある。
  6. 契約期間のはどの程度か: 契約書にはソフトウェアを利用できる年数が示され、期限が過ぎると契約の再交渉が必要になる。
  7. 契約解除の条件は何か: 契約書にはベンダーやユーザーが契約を満期前に解除できることを示す条項が必ず盛り込まれる。早期終了の通知期間や罰金などの条項が記述されることもある。
  8. 料金と決済スケジュールは: 契約書にはソフトウェアのライセンス取得や使用、実装のために顧客が支払う金額に関する条項が盛り込まれる。特に、実装サービスをパートナー企業が提供する場合などは、実装コストが別途見積もられる場合もある。
  9. 補償条項によってベンダーと顧客が守られているか: 契約書ではデータ侵害のような事象が発生し、損失を第三者に補償することになった場合の責任を誰が担うかが概説される。
  10. データ保護についての条項が盛り込まれているか: データ侵害が起きればベンダーにも顧客にも多大な影響が及ぶ可能性がある。そのためデータ保護は極めて重要だ。契約書ではデータを保護する責任は顧客とベンダーの双方にあると定められることが多い。

ERP契約のベンダーとの交渉

 ERPベンダーと契約交渉に臨む際には、交渉プロセスを円滑に進め、重要な手順や項目が漏れなく盛り込まれるようにするために、次の点を考慮する。

  • 契約書の確認プロセスを事前に作成しておく
  • 契約書確認の担当者を任命する
  • 契約プロセスの早い段階から弁護士の関与を求める
  • メールの追跡や契約書の改訂、契約書への署名など、契約プロセスの管理に契約管理ソフトウェアを使う
  • プロジェクトのスケジュールを立てて契約プロセスを順調に進め、プロジェクトに影響する重要な期限や社内プロセスを明確にする
  • 契約プロセスに影響する可能性のある組織的な変化を監視する
  • プロジェクトの遅れを避けるため、オフィスを離れる担当者の穴埋め要員を確保する
  • 契約書に明示されるソフトウェアの各要素に料金が発生する場合は特に各分野の専門家を交えて確認と検証を行う
  • プロジェクトに割り当てられた予算と実際のコストを把握する
  • 自社のニーズや慣習に合わない契約条項について交渉する
  • ライセンスやメンテナンス、サポート、実装サービスやコンサルティングサービスなど、プロジェクトの構成要素を全てリストアップし料金を交渉する
  • 署名が必要になる前に最終契約書に署名する担当者を明確にしておく

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