「Slack AI」で生産性爆上げ 効果的な使い方と先行ユーザーの声
Slackは2月14日(現地時間)、生成AI(人工知能)機能「Slack AI」をリリースした。公式Webサイトの情報を基に、その機能や効果的な使い方や先行ユーザー企業の声を紹介する。
Salesforce傘下のSlackは2月14日(現地時間)、生成AI(人工知能)機能「Slack AI」をリリースした。Enterpriseプランの有料アドオンとして提供される。現時点では、米国と英国向けに英語で提供し、日本語対応版は4月に公開予定だ。
Slack AIは「Slack」のチャンネルやスレッドの要約、検索をAIが実行することによって業務の効率化を支援する。本稿では、Slackが公式Webサイトで公開したレポート「Slack AI has arrived」の内容を基に、Slack AIの機能や効果的な使い方や先行ユーザー企業の声を紹介する。
Slack AIで生産性爆上げ 先行ユーザーの口コミ
職場では、アイデアを交換するためのツールや方法は無数にあるが、全てを把握しておくことは必ずしも容易ではない。情報がサイロ化すると、大きなコストがかかる。Gartnerによると、デジタルワーカーの47%が必要な情報を見つけるのに苦労しており、32%の従業員が認識不足のために誤った判断を下している(注1)。
Slack AIは、安全で信頼できる直感的なAIエクスペリエンスを提供するとしている。まずは、以下を含む一連の生成機能を提供する。
- 検索: 質問に対して個別化されたインテリジェントな回答を提供する
- チャンネルの要約: アクセス可能なチャンネルから主要なハイライトを生成する
- スレッドの要約: 長い会話をワンクリックでキャッチアップするスレッドの要約
これらの新機能についてトレーニングは不要だ。必要なときに、必要なことを、必要なだけ優先的に確認できる。
AIはあらゆるものに組み込まれているが、Slackはチャンネルやスレッドなどの履歴の力を活用できるという特徴がある。10年前にSlackがローンチされた当初は、プロジェクトやデータ、会話のハブとして設計された。SlackのAIを使えば、独自に蓄積された情報からより深い考察を引き出すことができ、必要な情報をすぐに見つけられる。
パイロット期間中の分析によると、SpotOnやUber、Anthropicなどのユーザーは、Slack AIを使用して回答を検索し、知識を抽出し、アイデアを発想することで、ユーザー1人につき、1週間で平均97分を節約できた。SlackのCEOである、デニス・ドレッサー氏は次のように述べる。
「過去10年間、Slackは働き方に革命をもたらし、人やアプリケーション、システムを1つの場所にまとめてきました。Slack AIによって、この変革が次のレベルに進むことをうれしく思います。これらの新しいAI機能により、お客さまはSlackの集合知にアクセスできるようになり、よりスマートに働き、より速く動き、真のイノベーションと成長をもたらすことに時間を費やせるようになります。生成AIの時代において、Slackは信頼できる会話型プラットフォームであり、ビジネスのあらゆる部分をつなぎ、チームの生産性を大幅に向上させます」
以降は、Slack AIを使ってユーザーの集中力を高め、生産性の高い仕事をするための方法を紹介する。
同僚に質問するように情報を検索できる
Slack AIの検索機能を利用すると、明確で簡潔、パーソナライズされた回答を得られる。回答には、関連するSlackメッセージの引用も付随する。これから参画する新しいプロジェクトについて、プロジェクトの目標や利害関係者などを素早く理解するのに役立つ。検索結果は、社内の公開コミュニケーションと個人的な会話に基づいて表示される。
ユーザーは、回りくどい検索キーワードを用いる必要はなく、自分が何を探しているのかを正確に分からない場合も、AIが情報を見つけるための手法を提案する。組織について詳しい親切な同僚に質問するように検索できることが特徴だ。
以下はSlack AIによる検索のユースケースだ。
- 新しいマーケティングキャンペーンやプロジェクトについて知る
- 取引承認プロセスなど、会社の方針について知る
- エンジニアリングインシデントを解決するために社内の専門家を見つける
- 過去の文脈から、過去の意思決定に関する洞察を得る
- 聞き慣れない略語の定義
Slack AIの選考ユーザーであるAnthropicのケイト・アール・ジェンセン氏(セールス&パートナーシップ責任者)は次のように述べる。
「Slack AIは、生産性を大幅に向上させるだけでなく、Slackの作業スペースで簡単に使用できます。私のチームは、迅速に答えを見つけられる点を気に入っています。迅速な検索が迅速な意思決定につながり、人間は本質的な作業に集中できます」
チャンネルとスレッドの要約で要点をつかむ
チャンネルの要約機能は、ワンクリックで任意のチャンネルの主要なハイライトを生成し、最も重要な情報に直接アクセスすることを支援する。「未読メッセージに追い付きたい」「過去7日間を要約したい」「カスタムの日付範囲を設定したい」といった際に、何が起こっているかの簡単な概要を提供する。
要約機能を使うことで、ユーザーはチャンネルを掘り下げる作業から解放される。スレッドの要約機能は、長い会話の要点をワンクリックで把握できる。各要約には明確な情報源が記載されており、特定のハイライトについてより深く掘り下げることも可能だ。
チャンネルとスレッドの要約機能を組み合わせれば、雑音のような情報に左右されることなく、最も重要な内容を際立たせられる。営業取引に新たに参画したチームメンバーは、十分な文脈を持っていなくても、チャンネルを要約することで顧客ミーティングの準備に必要な文脈を得られる。
スレッドの要約を使用すると、システムのインシデントに対応する適切な人物を素早く見つけ出し、彼らが見逃した内容について時間をかけて説明するのではなく、状況を簡潔に説明するといった使い方も可能だ。
その他、以下のようなユースケースが考えられる。
- 仕事を離れた後の情報のキャッチアップ
- 新しいプロジェクトに取り組む
- セールスアカウントチャンネルで顧客に関する情報を入手する
- インシデントレスポンスチャネルから根本原因を分析する
- 設計フィードバック・チャンネルからテーマを抽出する
Slack AIの先行ユーザーであるSpotOnの共同CEOであるザック・ハイマン氏は次のように述べる。
「パイロットプログラムでは、Slack AIが当社のビジネスの生産性を大きく向上させることを、身をもって体験しました。Slack AIのおかげで、従業員の業務スピードが飛躍的に向上しました」(ザック・ハイマン氏)
データをコントロールする
SlackとSalesforceは、信頼が最も重要な価値と考えている。両社には、顧客から「AIツールを採用する際にセキュリティが最優先の要件である」との声が何度も寄せられた。両社はAI製品を安全かつ責任を持って、倫理的に構築することに専念しているとしている。
Slackは、顧客データを大規模言語モデル(LLM)プロバイダーと共有せず、顧客データを使用して大規模言語モデルを訓練しない。Slack AIはSlackのインフラで動作し、Slackと同様のセキュリティ要件とコンプライアンス基準を順守している。Slack AIが利用するLLMはSlack内に直接ホストされ、顧客データが社内にとどまることを保証する。
セキュアなコミュニケーションプラットフォームであるSlackの価値観は、Slack AIの意思決定にも生かされていて、顧客の信頼を維持することにフォーカスしている。Metrigyのアーウィン・ラザー氏(社長兼主席アナリスト)は次のように述べる。
「Slack AIは、既存のセキュリティやプライバシー、コンプライアンスの管理をサポートしながら、ユーザーがSlack内の企業知識を最大限に活用するのを支援します」
お気に入りのAIツールをSlackに統合
AIは単にSlackに組み込まれているだけではない。Slackユーザーはサードパーティー製のアプリケーションのAIの作業場所としてSlackを使用している。現在、ユーザーによって1万3400以上のAIカスタムSlackアプリケーションが構築されている。SlackやSalesforceのパートナーエコシステムの中で、成長中のスタートアップから規模拡大中の企業に至るまで、多くの企業がSlackにAIを統合している。
AIを搭載したアプリの一部は以下の通りだ。
- PagerDuty: PagerDutyは、デジタルオペレーション管理のためのクラウドベースのプラットフォームだ。「PagerDuty Copilot」をSlackに導入することで、インサイトを表示し、改善パスを提案し、チームのインシデント対応を効率化する
- Notion: SlackでNotionのページのリンクが共有されると、Notion AIによるサマリーが即座に表示され、ドキュメントやWikiのコンテキストが会話に反映される
- Perplexity: Perplexity.AIは、OpenAIが開発した自然言語処理モデルを使用した会話型検索エンジンで、テキストで質問を投げかけることでAIが回答するサービスだ。ChatGPTよりも時事性の精度が高いとしている。気になるトピックに関する情報を購読し、更新を自動的にSlackに投稿できる。PerplexityのCEOであるアラビンド・スリニヴァス氏は次のように述べる
「Perplexityは、知識に即座にアクセスできる最先端のLLMを適用し、次世代のアンサーエンジンを構築しています。そして今、『Perplexity Push』によって、AIを活用した洞察をSlackに直接もたらすための統合を提供しています。チームは、会話やコラボレーションがすでに行われている場所で、気になるトピックに関する最新情報を簡単に得られます」
今後も新機能を拡充予定
Slackは、検索と要約という核心的な領域にAIを導入した。その背景には、大量の情報を迅速に見つけ、理解することが、Slackからさらに多くの価値を引き出すために重要だという考えがある。今後もAI機能の拡充によって、顧客体験の向上を目指す。
ローンチ予定の新機能として特に注目されているのは、関心のあるチャンネルの主要なハイライトを要約したダイジェストを作成する機能だ。ユーザーは即時の注意を必要としない情報の要約を提供することで、ユーザーが優先順位の高いトピックに集中することを助ける。ユーザーが要約したいチャンネルをカスタマイズさえすれば、残りの作業をSlack AIに任せられる。この機能により、情報のオーバーロードを防ぎながら、必要な情報を効率的に得ることが可能になる。
その他、Slack AIはSalesforce CRMの新しい会話型AIアシスタントである「Einstein Copilot」との統合を予定している。信頼できる顧客データに基づいて、AIがSlack内で直接質問の答えを提供することで、ユーザーは作業を迅速に進められる。
Slackは、従業員やデータ、アプリケーション間の洞察とアクションをシームレスに結び付け、合成するAI駆動の会話型インタフェースとしての役割を果たす。Slack AIが日常的な作業をする間、ユーザーは意味のある作業に集中できるようになり、業務がシンプルで、快適で、生産的になるとしている。
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