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「Notionを導入すべき?」3社における導入時の議論とやったこと

情報のサイロ化や情報共有の工数に悩む企業に人気のツール「Notion」。関心を持つ企業が多い一方で、「導入してもうまく活用できないのではないか」「情報がNotionの中で埋没しないか」といった不安の声も聞かれる。3社の事例を基に、こうした懸念の向き合い方や、導入前後に議論すべきことなどを解説する。

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 Notionは議事録やメモなどの「ナレッジ」、To-Doやプロジェクト、マイルストーンなどの「タスク」、帳票や顧客などの「データベース」を一つにまとめた多機能クラウドツールだ。社内に分散した情報をまとめて管理することで、情報の透明性や共有のスピードを圧倒的に上げられるとして人気を得ている。設定の自由度も高く、業務に必要な仕組みをブロックのように組み上げて構築できるので、使う人を選ばないことも魅力の一つだ。

 これまで大企業を中心に導入が進んできたが、最近は中堅中小企業の引き合いも増えている。一方、関心を持ちつつも、「導入してもうまく活用できないのではないか」「情報がNotionの中で埋没しないか」といった懸念を抱く声も上がっている。

 こうした懸念はNotionを既に導入済みの企業も直面してきたものだ。これまで、100社以上でNotionの導入サポートをしてきたNotion日本代理店ノースサンドの疇地将大氏が、3社の企業における導入前後の意思決定や議論の過程、導入時のNGポイントなどを語った。

3社の事例に学ぶ、Notion導入前後に考えるべきこと

 「当社では仕事に必要な情報のほとんどをNotionの『社内ポータルサイト』にまとめています。多くの情報や機能を一気にまとめるのは大変ですが、必要なものから一つずつ進めることが大切です」(疇地氏)


Notionで構築したノースサンドのポータルサイトをイメージしたデモ画面(出典:ノースサンドの投影資料)

 ノースサンドの社内ポータルサイトは、全従業員が必要な情報にアクセスするための入り口だ。全社的なスケジュールや通達事項、全社集会の議事録や資料、社長からのメッセージなどがトップページにある。ここを見れば新しく入社した従業員も会社の全貌や最新情報を理解できる。

 各事業部のページは、「誰がどのような仕事をしているか」が分かり、事務処理などのマニュアルや、よくある質問もまとめている。

 プロジェクト管理のページでは、一覧から各プロジェクトの詳細ページを開ける。ガントチャートで計画や進捗が可視化され、関連するタスクの情報が整理されている。プロジェクトのメンバーはこのページで自分のタスクの状況を確認し、リーダーやマネージャーはタスクの進捗状況を管理する。

 ナレッジ管理においてもNotionは有用なツールとして定着している。ナレッジを共有し合える場所を用意することで、全従業員は自分の知見を自由に投稿し、他の従業員の記事でノウハウを学べる。ノースサンドではオフィス周辺の飲食店情報もナレッジとして共有している。

 Notionには生成AI(人工知能)が搭載されたオプションサービス「Notion AI」がある。ノースサンドはNotion AIを文章の要約、翻訳、ダミーデータの生成、分析などに幅広く活用している。

 Notion AIに最近実装されたQ&A機能は、情報にアクセスする時間を大幅に短縮する。「経費精算の手順を知りたい」とプロンプトで指示すると、Notionの中にあるマニュアルやテキストドキュメントからNotion AIが最適な解を抽出する。チームの取り組みについて質問すると、議事録やプロジェクトから質問の答えを提示する。

 「Notionには機能が多いがゆえに、『導入したいが何から手を着けていいか分からない』と困るケースもあります。Notion導入において最も大切なことは『目的』と『手段』を明確にすることです」(疇地氏)

 疇地氏は、Notionがあくまでもツールであることも強調した。組織として解決したい課題があり、その先にある目的から逆算して手段を模索するのが課題解決のプロセスだ。課題解決の手段として、必ずしもNotionが最適とは限らず、別のツールが向いている場合もある。Notionの導入そのものが目的となってしまうと、導入後に思ったような成果が得られない。

導入事例1 課題解決の目的は明確だが手段が見えない

 疇地氏はNotionの導入に成功した企業の具体例を3つ紹介した。1つ目は、従業員数300〜400人規模のセキュリティ会社であるA社だ。従来、ドキュメント管理ツールの「DocBase」を利用して情報を共有していたが、ドキュメントが散在して、どこに何があるか分からないだった。

 「ドキュメントを適切に管理できる環境をつくること」という目的は明確だったものの、どのツールを導入すべきか悩んでいたという。


事例1 A社(出典:ノースサンドの投影資料)

 そこでA社は有志メンバーでチームを組んで検討を進めた。まずは目的の達成に必要なツールの要素の炙り出しから始めた。検討の結果、「使いやすいこと」「情報の入力がしやすいこと」「情報の整理がしやすいこと」「楽しいこと」というポイントが挙がった。これを踏まえてツールを比較検討し、最終的に「Notion」の導入を決めた。

 次に全社導入を前提として、社内に無理なくNotionを浸透させる運用体制やサポート体制を組んだ。さらに経営陣に対してNotionとはどのようなツールなのか、全社導入することによってどのようなビジョンが描けるのかを説明した。

 疇地氏は、A社の導入ステップのポイントを「手段の明確化+体制の確立」だとまとめた。

導入事例2 目的は見えないがNotionを導入したい?

 2つ目は従業員数約1000人を抱えるスポーツメーカーB社だ。情報共有には「Microsoft Excel」(以下、Excel)や「Googleスプレッドシート」などの定番ツールを利用していた。当初は課題が不明瞭だったが、従業員に困りごとをヒアリングするうちに、「誰がどのプロジェクトでどのようなタスクをしているのかを管理できない」という課題が見えてきた。

 同社では、ある担当者がNotionを利用した経験があったことから、Notionを導入すれば課題を解決できるとの思いが強くあったが、導入後にどのような組織になりたいかという目的は不鮮明だった。


事例2 B社(出典:ノースサンドの投影資料)

 導入検討をはじめた最初は、Notionを導入することが目的になりつつあると感じたため、Notionを忘れることから始めた。次に、社内で「組織としてどうなりたいか」「この課題を解決した先に描ける未来は何か」といったことを話し合って、目的を鮮明にした。

 目的を明確化した後はゴールから逆算して要件定義を重ね、ツールに対する期待値調整をして最終的にNotionの導入を決めた。B社は「目的の明確化+期待値調整」で2部署導入(約30人)を達成したと疇地氏はまとめた。

導入事例3 課題解決の目的も手段も見えない

 3つ目は従業員数約1万人の自動車部品メーカーだ。従来は「Microsoft Word」やExcelなどを中心として情報共有をしていた。業務のナレッジが属人化しているという課題は見えていたものの、課題を解決した先のビジョンが見えず、現在の状況を打開するためにツールを導入すべきなのか、その方策の議論も滞っていた。目的と手段ともに不鮮明な状況からのスタートだったという。


事例3 C社(出典:ノースサンドの投影資料)

 このケースでは、まず導入後にツールを使うメンバーにヒアリングをして課題を抽出し、その結果を基に、「会社としてどうなりたいか」を担当メンバーと詰めて目的を設定した。

 次にツールへの期待値調整をして候補をNotionに絞り、運用体制やサポート体制を組んだ。新しいツールを導入することにネガティブな雰囲気もあったが、役員に向けてツール導入の目的や期待値、運用方法などを実例や成功パターンを交えながら説明し、役員承認を得られた。

 C社は「目的の明確化+手段の明確化+体制の確立」という導入ステップで1部署導入(約40人)を達成した。

 以上、三者三様の事例を紹介した。こうしたステップを進めるためにはかなりのパワーが必要だ。下準備として、導入の目的を明確にし、導入後のゴールを見据えて手段を検討しておくことが重要となる。

本記事は、株式会社ノースサンドが2024年3月7日に開催したオンラインセミナーの内容を編集部で再構成した。

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