もう30TBじゃ驚けない? これでHDD容量を爆増できるかも:751st Lap
SSDがPCのメインストレージになったとはいえ、HDDが消えてなくなったわけではない。クラウドサービスを支えるデータセンターでも多くのHDDが使われている。
HDDは磁性体を塗布した円盤状のプラッターを数枚内蔵し、ヘッドがプラッタの磁気パターンを変更することでデータを書き込むことが可能になる。HDDメーカーはプラッタの枚数を増やしたり、記録密度を向上させたりすることでHDDの大容量化を実現してきた。HDDメーカーのSeagateが「Mozaic 3+」で30TB超えの容量を実現したことは記憶に新しい。
HDDの大容量化が進む中で、さらなる大容量化を可能にするかもしれない方法が発見された。一体どんな方法?
話題となったのは、強磁性体と反強磁性体の双方の特性を備えた第三の磁性体「オルター磁性体」の存在だ。
科学情報サイト「New Scientist」に掲載された解説記事によると、長らく世界には強磁性体しか存在しないと考えられていた。だが、1930年代にフランスの物理学者のルイ・ニール氏が反強磁性体を発見したことで、それまでの常識が変わった。
2019年にヨハネス・グーテンベルク大学マインツの研究チームは、一部の反強磁性体で従来の理論では説明できない「異常ホール効果」を確認した。新種の磁性である「Altermagnetism」(オルター磁性)が引き起こした現象ではないかと推測されたが、どの磁性体がどのような条件でこの現象を引き起こしたのかは明確ではなかった。
スイスのパウル・シェラー研究所のユライ・クレンパスキー氏が率いる研究チームが反強磁性体と思われていた「テルル化マンガン」の電子構造を調べていたところ、オルター磁性の存在を確認した。研究チームは光の反射を利用してテルル化マンガン内部の電子構造を調査したところ、異常ホール効果のシミュレート結果に合致する計測値が得られたという。
研究チームはこの結果をオルター磁性体の存在を認めるものと結論づけた。他の研究者もこの結果を認め、オルター磁性体に期待を寄せた。オルター磁性体は強磁性体のように外部への磁場を発生させないことから、ヨーク大学のリチャード・エバンス氏は「周辺の他の磁性体に干渉しない磁気デバイスの開発が可能かもしれない」と語った。
New Scientistの記事では、「磁場が外部に影響を及ぼさないため、オルター磁性体を利用することでより高密度な磁性体材料を開発でき、HDDの容量をこれまで以上に大容量化できる可能性がある」と記された。
ある専門家は、まだ実現されていない磁気コンピュータの開発も可能になると発言するなど、オルター磁性体にはかなりの期待が寄せられている。
まだ実用化のめどはたっていないが、オルター磁性体を活用した製品が登場する未来はそう遠くないだろう。HDDの大容量化だけでなく、新たなコンビューティング技術への活用にも期待が集まっている。今後、IT革新のトリガーになるかもしれない。
上司X: 第三の磁性体とされるオルター磁性体の存在が証明された、という話だよ。
ブラックピット: なるほど。理屈はよく分かりませんが、オルター磁性体でHDDの容量を大容量化できて、磁気コンピュータにも貢献する技術なら期待してもいいですよ。
上司X: 期待してもいいですよ、ってずいぶん上から目線だな。
ブラックピット: 別にそんな上からなつもりもないですけどね。
上司X: そうかい? その割には……。
ブラックピット: よく分からないですが、新技術が自分の未来のITライフに何かメリットをもたらすとしたら、そりゃうれしいじゃないですか。
上司X: それもそうか。SeagateのHDDが1台で30TBってのもスゴいとは思うけど、そうなった理屈を根本的に知ろうとしても理解しようもないよな。
ブラックピット: ですよね。だから理解できなくても、オルター磁性体が見つかったって話を「ほうほう」と思って聞いて、それに期待していればいいんですよ。僕ごときがどうこういう話でもないんです。
上司X: 今度はずいぶん下から目線じゃないか。まあ、それはともかくとしてだ、この発見が何かの分岐点になる可能性はあるかもしれない。われわれは、それを見守っていくしかないってことだ。
ブラックピット(本名非公開)
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
上司X(本名なぜか非公開)
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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