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TeamsとZoomのシェア事情、ビデオ会議の人気再燃……Web会議トレンドの裏側Web会議ツールの利用状況(2024年)/後編

キーマンズネットが実施した「Web会議ツールの利用状況に関する調査(実施期間:2024年3月13日〜24日、回答件数:300件)を基に、Web会議ツールのシェアや活用シーンの変化、Web会議ツールへの不満や意見、ビデオ会議ツールの利用状況などを紹介する。

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 コロナ禍をきっかけに普及したWeb会議だが、近年は大企業を中心に、多様な働き方の実現を目的としてWeb会議を導入するケースが増えている。Web会議の利用シーンや場所も多様化したことで、ベンダー各社は機能のアップデートに努めているが、ユーザーからは意見や不満の声が挙がっている。

 さらに、ここ数年でWeb会議ツールのシェアは固定化したかに見えるが、実際にはターゲット層の違いの中で、競争が続いているようだ。Web会議ツールが普及する傍らで、会議室でのWeb会議の専用システム「ビデオ会議ツール」のニーズも高まり、古くからある成熟したツールに再び光が当たっている。

 本稿では、キーマンズネットが実施した「Web会議ツールの利用状況に関する調査(実施期間:2024年3月13日〜24日、回答件数:300件)を基に、Web会議ツールのシェアや活用シーンの変化、Web会議ツールへの不満や意見、ビデオ会議ツールの利用状況などを紹介する。

TeamsとZoomの勢力図はどうなった?

 はじめに、勤務先で利用しているWeb会議ツールを聞いた。

「Microsoft Teams」(以下、Teams)(70.6%)、「Zoomミーティング/有償版」(35.7%)「Zoomミーティング/無償版」(34.0%)が上位だった(図1)。「Cisco Webex Meettings」(14.5%)や「Google Meet」(11.5%)などが続いたが、これらは有償版より無償版での利用が多い傾向にある。


図1 勤務先で利用しているWeb会議ツール

 2023年3月に実施した前回調査と比較すると順位に大きな変動はない。一方、企業規模別に結果を見ると、前回調査においては、従業員数100人以下の中小企業においてはZoomミーティングの利用割合が高い傾向にあったが、今回はどの企業帯でもTeamsが最も利用率が高かった。

 有料版、無償版問わずTeamsやZoomミーティングが選ばれる理由は何だろうか。お気に入り機能を聞いたところ、Teamsでは「画面共有機能」(67.4%)、「テキストチャット機能」(40.9%)、「ファイル共有機能」(40.4%)が上位に上った。Zoomミーティングでは「画面共有機能」(63.1%)、「背景設定・切り替え機能」(36.9%)、「会議用URLの発行機能」(29.2%)に票が集まった。Teamsでは「Microsoft 365」との連携性の高さを生かした機能、ZoomミーティングではWeb会議やオンラインセミナーに特化した機能に人気が集まった。

 なお、Web会議ツールの利用シーンは「会議・打ち合わせ」(94.7%)と「オンラインセミナー/ウェビナー(57.3%)」が多くの票を集めた。前回の調査結果と比較すると、「雑談やランチ会など業務以外での用途」(7.8%)が25.5ポイントと大幅に下がった(図2)。コロナ禍の収束が見え始めて対面コミュニケーションに対するハードルが下がり、Web会議ツールでの実施が減ったためと考えられる。

 企業規模別に結果を見ると、企業規模が拡大するにつれて、Web会議ツールを「クライアントとの商談」や「1 on 1ミーティング」「人事評価面談」で利用するとした割合が増えている。コロナ禍をきっかけに普及したWeb会議だが、近年は大企業を中心に多様な働き方の実現を目的としてWeb会議を導入するケースも増えていることから、時勢にかかわらずWeb会議の利用シーンが多様だと分かる。


Web会議ツールの利用シーン

Web会議フィーバーでも不満の声が絶えない理由

 利用中のWeb会議ツールに対する不満があるかも効いた。「ない」(61.5%)が過半数となり、2021年5月の調査の50.6%、2023年3月の調査の56.9%と続いて、3年連続で改善傾向にある。従業員規模別では5001人を超える大企業で不満が「ある」が逆転しており、規模が大きい企業では不便や不満を感じるケースが多いようだ。

 フリーコメントで不満の理由も効いたところ、3つの課題が見えてきた。1つ目は、文字起こしや自動翻訳機能の精度だ。「書き起こし機能が誤字脱字だらけ」や「マイクで話したことが自動書記に反映されない」「翻訳の精度が悪い」などのコメントがあった。「議事録起こしの機能がない」ことを不満に挙げる回答者も多く、会議の記録や翻訳のニーズがあることが伺える。

 2つ目は、ツール間の連携や互換性だ。「相手によってZoomやGoogle Meet、Teamsを使い分けないといけない」や「会議スケジュールの管理が他のスケジュール管理のグループウェアと連動しないので、会議スケジュールが管理しにくい」「一部機種でTeamsからのZoom参加(ダイレクトゲストジョイン)が使えない」といった不満があった。

 最後は、仕様変更への不満だ。Teamsは毎月のようにアップデートがあり、機能改善のサイクルが早いが、せっかく覚えた機能やUIが変更されることに戸惑いを覚える声もある。

 なお、前回調査では他にも不満が集中した項目があった。「音声や映像品質の悪さ」とファイルや画面共有などの「操作性の不便さ」だ。今回は、それらに対する不満が少なく、Web会議の普及とともに、ツールと利用者の環境が成熟してきたのではないかと考えられる。

ビデオ会議ツールが再び脚光を浴びる理由


Web会議をオフィスの会議室で実施する頻度

 オフィス出社を課す企業も増える中、Web会議を「よく会議室で実施する」(47.0%)や「常に会議室で実施する」(8.8%)を合わせ、過半数がWeb会議を会議室で実施すると回答した。「全く会議室で実施しない」(7.8%)は全体の1割にも満たない(図3)。オフィス勤務と在宅勤務を組み合わせるハイブリッドワークが普及したことで、会議の場所や方法も柔軟性が増している。今後も会議室でのWeb会議は一般化しそうだ。

 ただし、会議室でWeb会議ツールを利用している回答者の約半数が不満を感じることが「ある」(45.7%)と回答している。理由として、「会議室のモニターにPCをつなぐなどのセッティングが面倒」(55.4%)や「会議室の予約が難しい」(51.8%)などの物理環境、「音質や画質の問題がある」(29.5%)や「インターネット接続の問題がある」(21.4%)といった通信環境に対する不満が挙がった(図4)。


図4 Web会議をオフィスの会議室で実施する差異の不満

 会議室での遠隔会議については、「ビデオ会議ツール」と呼ばれる専用システムがあり、専用回線や専用ハードウェアを用いることで高品質な音声、映像による遠隔会議が実現できたり、予約システムの連携による会議室の自動予約機能があったり、前述の不満を解消する機能もある。ビデオ会議ツールは導入率が42.0%だが、会議室でのWeb会議の課題を解決するソリューションとして再びスポットライトが当たる可能性もある。

 「導入はしていないが、興味はある」(16.7%)や「具体的な導入に向けて検討中」(2.0%)など、未導入の4人に1人は関心を持っていた(図5)。具体的に導入、検討されているビデオ会議ソリューションとしては「Teams Rooms」(55.6%)や「Zoom Rooms」(46.3%)、「Cisco Webex Rooms」(19.4%)が続いた(図6)。

 近年では、話者に自動的にカメラが切り替わることで「誰が話したのか」が正確に分かるスイッチング機能や、スピーカーの位置に併せてカメラの画角をそろえる機能などに磨きがかかり、ビデオ会議の快適性が向上しているという。今後の動向にもぜひ注目したいところだ。


図5 ビデオ会議ツールの導入、検討状況

図6 導入、検討中のビデオ会議ツールの種類

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