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パンク寸前の情シス、でもIT業務の外注サービス「6割が利用予定なし」はなぜ? 実態調査IT系BPOサービスの利用状況(2024年)/前編

情報システム部門の負荷を軽減したいと考えるときに、選択肢の一つとなるのが、業務の一部を切り出してIT系BPOサービスに委託することだ。しかし、キーマンズネットの調査によると、サービスの認知度が高い割に、回答者の多くが「利用予定なし」と答えた。その理由とは。

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 PCのキッティングやトラブル対応、システム運用やIT関連のヘルプデスク対応など、主に情報システム部門における業務プロセスの一部を外部委託することで効率化やリソースの有効活用を実現するIT系BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービス。2023年10月、矢野経済研究所が発刊した「2023-2024 BPO市場の実態と展望」によると、2022年度のIT系BPOサービス市場規模は事業者売上高ベースで前年度比3.5%増の2兆7829億円で、2027年度には3兆2410億円にまで成長すると予測されている。

 キーマンズネットでは「ITアウトソーシングサービスの利用状況に関する調査」(実施期間:2024年5月8日〜22日、回答件数:219件)を実施した。前編となる本稿では、企業におけるIT系BPOサービスの利用実態について調査結果を読み解き、現状を明らかにする。

なぜ、多忙でもサービスを「利用する予定はない」のか?

 今回の調査で、IT系アウトソースサービスは「名称もサービス内容も知らない」と回答した人を全体から引いた割合は82.3%と多くの人に認知されている一方で、「現在利用しておらず、今後も利用する予定はない」という回答が59.8%に上った。

 IT部門が関与するタスクは年々増え続け、人手も増やせない状況の中で、IT業務を外部委託する予定のない企業が約6割に上る背景には、どのような事情があるのだろうか。

IT系BPOサービスの利用状況
IT系BPOサービスの利用状況

 ちなみに、IT系アウトソースサービスの利用率は501人以上の企業帯では3割を超えるのに対して、500人以下では1割に満たないなど従業員規模による差が顕著で、一定規模の大きい企業群で利用されているのが現状だ。

 利用しない理由としては、「アウトソースした業務のランニングコストが割高になる」(34.6%)という回答が最も多かった。「サービス内容をあまり理解できていない」(29.3%)、「業務ノウハウやナレッジが自社に蓄積されない」(21.8%)が続き、後編で触れるようにサービス内容が分かりづらいと感じる回答者が多いこと、サービス内容の詳細と費用が周知されていないことを指摘する声や、ノウハウやナレッジが自社に蓄積されないことへの懸念など、理由が多岐にわたることが分かった(複数回答可)。

 BPOサービスの利用開始時期は、利用中の企業では「2000年以前」(23.8%)が最多で、「2021年以降」(7.1%)が最少だった。一方、「利用に向けて具体的に検討中」や「利用していないが、興味はある」など、現在利用に前向きな姿勢を示している企業は「2021年以降」や「2016〜2020年」が上位に挙がった。

 ここ数年の働き方改革の推進や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大をきっかけに、IT業務の切り出しを検討し始めた企業が多いことが推察される。BPOサービス利用に前向きな企業は、101〜500人の中堅・中小企業で27.5%、100人以下の中小企業でも15.7%と小規模企業帯が中心で、今後はこうした層を中心に利用が進む可能性がありそうだ。

利用目的の3位は「残業削減」、2位は「人件費削減」 1位は?

 続いてIT系BPOサービスの利用目的を尋ねたところ「慢性的に不足しているITリソースを補填するため」(62.5%)が最多で、「人件費などのランニングコストを削減するため」(45.5%)、「従業員の時間外労働時間を削減するため」(26.1%)、「自社従業員をコア業務に集中させるため」(23.9%)と続いた(複数回等可)。

図 IT系BPOサービスの利用目的
図 IT系BPOサービスの利用目的

 働き方改革による時間外労働の上限規制や、コロナ禍による事業変革への対応、慢性的なIT人材不足も大きな要因となっていることがうかがえる。また、2012年に公布された改正労働契約法により、アルバイトやパートタイム労働者、派遣社員といった有期労働契約で働く人について、通算5年以上契約が更新された場合は労働者の申し込みにより無期労働契約に転換できるようになった。この法改正を受けて、人件費の高騰を抑えるために雇用契約ではなく業務委託契約に基づくBPOサービスを利用したいという企業のニーズが増加した可能性もある。

 フリーコメントでは他にも「エンドユーザーとの窓口業務をアウトソースすることによって標準化が進み、問い合わせ内容を正しく可視化、分析出来るようになった」や「サービス品質の向上(均一化、対応の迅速化、内容の充実)」「PCキッティングなど、需要の変動があるものに対応できる」「IT導入戦略に注力するため、他のほとんどの業務はアウトソースしている」など、業務のプロセス改善や品質向上、効率アップを目的に挙げる声も多く見られた。

 実際に外部委託している業務としては「PCなどの端末調達やソフトウェアのインストールや配布を含むキッティング業務」(55.7%)や「PCやITサービスに関する問い合わせ対応などのヘルプデスク業務」(38.6%)といったPC関連業務が多いことが分かった。

図 外部委託している業務
図 外部委託している業務

 サービス利用について「検討している」「興味がある」と答えたサービス利用に前向きな回答者に絞ると、「PCのキッティング業務」に次いで「ネットワークの運用・管理」や「ネットワーク構築」が上位に挙がった。オフィス回帰やハイブリッドワークに見られる働き方の変化を受けてネットワーク環境を見直す企業が増えていることがうかがえる。

利用率の高いBPOサービス事業者は? 

 よく利用されているIT系BPOサービス事業者名については「把握していない」(45.5%)が最多だった。具体的に上がった中では「大塚商会」(13.6%)、「日立システムズ」(11.4%)、「アクセンチュア」(8.0%)が上位に挙がった。

図 利用しているBPOサービス事業者
図 利用しているBPOサービス事業者

 「サービス利用を検討している」「興味がある」を選択した企業に絞ると、「大塚商会」「アクセンチュア」「日立システムズ」という上位3社の顔ぶれは変わらず、「NECマネジメントパートナー」「富士フイルムビジネスイノベーション」が続く結果となった。

 一方で、「利用しているが、他サービスに乗り換えを検討中」「以前利用していたが、利用を中止した」と回答した人に絞ると、「KDDI」「日立システムズ」に票が集まった。「アグレックス」「NECマネジメントパートナー」「大塚商会」「パーソルプロセス&テクノロジー」を挙げる回答者もいた。

 今回はIT系BPOサービスとひとくくりにしたが、各社によってサービスの特徴や得意領域は異なる。アウトソースを検討する領域の実績や強みを比較した上で、課題にあった事業者を選定することが重要になるだろう。

 前編ではIT系BPOサービスの認知度や利用状況、利用目的などの現状を紹介した。後編では利用メリットとして上位に挙がった「IT部門のコア業務」に焦点を当て、今後のIT部門の役割について企業はどう考えているのか、事業規模による差があるのかどうかを明らかにする。

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