検索
特集

「追加料金なし」Zoomの生成AIボットはMicrosoftやGoogleに勝てるのか?

ZVCの「Zoom Workplace」は、追加料金を支払うことなくAIアシスタント機能を利用できる。MicrosoftやGoogleといった同業他社とどう戦うのか。同社の勝ち筋とは。

PC用表示
Share
Tweet
LINE
Hatena

 Zoom Video Communications(ZVC)は、企業の従業員の生産性を向上させるために、社内外のアプリケーション向けにAIを搭載したコラボレーションハブ「Zoom Workplace」を発表した。

 Zoom Workplaceは、「Zoom ミーティング」(以下、Zoom)のチャットや電話、ビデオ、電子メールを統合したものだ。APIやSDKの他、「Zoom App Marketplace」で利用できる製品との統合を実現する機能も備わっている。これには、GoogleやMicrosoftの電子メールやクラウドストレージサービスなどが含まれる。

 2024年3月25日の週の「Enterprise Connect」で発表されたZoom Workplaceには、Zoomの追加料金を支払うことなくAIアシスタント機能を利用できる。MicrosoftやGoogleといった同業他社とどう戦うのか。

「追加料金なし」Zoomの生成AIボットはMicrosoftやGoogleとどう戦う?

 Zoom Workplaceは、生成AI機能「AI Companion」を無料で提供することで、生成AIを1ユーザー当たり月額30ドルで提供しているMicrosoftやGoogleなどの同業他社よりも優位な立場に立つ可能性がある。

 調査企業であるMetrigyのアーウィン・レイザー氏(アナリスト)は「2024年、企業はAIアシスタントを評価し、有料版が追加コストに見合うかどうかを判断している」と述べた。

 その評価には、ZoomのAI利用に対する最近の批判も含まれる可能性がある。2023年8月、Zoomは利用規約を変更し、管理対象となるユーザーデータの範囲を広げた。この動きは顧客の懸念を呼び、Center for AI and Digital Policyが連邦取引委員会(FTC)に苦情を申し立てた。

 Gartnerのアビバ・リタン氏(アナリスト)は、「批判を受けて、ZVCはこの変更を撤回しており、この混乱が企業との長期的な信頼性の問題を引き起こす可能性は低い」と話している。

 一方で、リタン氏は「企業は、Zoomや他のAIアプリケーションを備えたプラットフォーム内での会議の会話、チャットスレッド、電子メールの内容を完全に管理したいと考えている」とも述べている。現在、ほとんどのコラボレーションプラットフォームは、企業の法務部門を満足させるような管理機能を備えていない。

 「コラボレーションツールや生成された書き起こしについて、企業は大きな懸念を抱いている。これらの記録が裁判や競合他社に持ち込まれることを誰もが恐れている」(リタン氏)

Zoom WorkplaceのAI Companion

 ZVCは、ミーティングやチームチャット、ホワイトボードを含むWorkplace内の製品にAI Companionを統合した。この統合により、AIアシスタントがメッセージや電子メールを作成したり、全ての会話の要約を作成したりできるようになった。また、会議中の文書やホワイトボード、メモの共同編集も可能になる。

 Zoomは、AI Companionを「Zoom Phone」にも組み込み、AIアシスタントが通話の要約、ボイスメールの優先順位付け、フォローアップタスクを提案できるようにした。

 ZVCは2024年5月に、「Ask AI Companion」と呼ばれる機能を追加する予定だ。この機能を活用すると、Zoomプラットフォームおよび選択したサードパーティー製アプリケーションの複数のソースから情報を収集、統合、共有できる。この機能は、ユーザーがミーティングの準備をしたり、ミーティング後のフォローアップをしたりするのに役立つ。

 ZVCは、Workplaceを導入し、ビデオ会議プラットフォームにも改良を加えた。ZVCは、複数の参加者を表示して、発言者を強調する機能を備えたMeetingsアプリに変更を加えた。

 ZoomがZoom Workplaceを立ち上げたのは、収益の伸びが鈍化した時期である。2024年1月31日に終了した会計年度では、収益は前年度の7%に対して3.1%の成長だった。

 アナリストは「Zoomは企業の従業員に人気があり、彼らにとってWorkplaceの機能は有益だろう」と述べた。

 「Zoomはユーザーに好かれている。私たちのデータによると、MicrosoftやGoogleの顧客がZoomを利用できると分かると、彼らの多くは会議にZoomを使う」(レイザー氏)

 TechTargetのEnterprise Strategy Groupのアナリストであるゲイブ・クヌース氏は「Zoomは「Microsoft Teams」(以下、Teams)と真っ向から競合している。Microsoft Teamsは、「Microsoft 365」のプロダクティビティスイートの一部として、数年前からコラボレーション市場でのシェアを拡大してきた」と述べた。

 「Zoomには、TeamsやMicrosoft 365のコラボレーション機能でできること以上の価値を示す義務がある」(クヌース氏)

 ZVCに関連する他のニュースとして、同社とAvayaは彼らの顧客がWorkplaceからZoomのコミュニケーションコラボレーションスイートにアクセスできるよう提携を結んだ。Avayaは2024年のうちに製品統合を実現する予定だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る