Excelから移行しても先祖返りする不都合な真実とは【読者調査】:Excelの利用状況(2024年)/前編
キーマンズネットの読者調査の結果を基に、企業におけるExcelの利用率や満足度、用途などを紹介する。
キーマンズネットでは、「Excelの利用状況/2024年(実施期間:2024年7月5日〜19日、回答件数:428件)を実施した。キーマンズネット読者においては、98.6%が「Microsoft Excel」(以下、Excel)を利用していることが分かった。
重くても思い通りにならなくてもExcelから離れられない読者の声
近年は、「脱Excel」というキーワードとともに、Excelから他ツールへの移行がトレンドになっているが、それでもやはり「Excelを手放せない」「移行してもExcelに先祖返りしてしまう」とする声もある。その理由は一体どこにあるのか。Excelの利用率や用途、満足度などの調査項目を基に考察する。
Microsoft 365の利用率は1年でどれくらい伸びた?
利用しているExcelのバージョンは「Microsoft 365版」(72.3%)が最も多く、「Excel 2019パッケージ版」(16.6%)、「Excel 2021パッケージ版」(14.7%)が続いた。従業員規模が大きくなるほどMicrosoft 365の利用率が高まる傾向が見られた。一方、100人以下の中小企業や教育・医療・官庁といった公共機関においてはパッケージ版の利用が多い傾向にあった。
経年変化としては、Microsoft 365の利用率が年々高まっており、2022年3月の調査では57.1%、2023年8月の調査では67.1%、今回は72.3%と約2年半で15.2ポイント増加した。一方、パッケージ版は全バージョンを合わせて51.4%と、前回調査時の60.1%から約1年で8.7ポイント減少した。SaaS移行の機運が高まっていることが分かる。
満足度90.0%も……利用者の「不満」から浮かび上がる3つの課題
Excelの満足度を調査したところ「とても満足」(13.5%)、「まあ満足」(76.5%)を合わせて90.0%の人が満足していると分かった(図1)。
満足している理由としては「計算だけでなく、表作成、VBAによる自動化が可能だから」や「カスタマイズ性やマクロ、関数が豊富」「取引先やグループ企業で共通に使えるツールだから」など多様な業務に活用できる点や使いやすさ、教育コストの低さを挙げる声が目立った
一方、フリーコメントに寄せられた不満からは大きく3つの課題も見えた。1つ目は「起動が遅い、または、正常に起動しないことがある」や「データ量が多いと時々誤動作する。フリーズ、Excelが勝手に終了する、暴走など」など、動作の重さに関する課題だ。オンプレからM365に移行してから「レスポンスが遅くなり、しかも安定しなくなった」とする声も挙がった。
2つ目は互換性の不満だ。「x32とx64でマクロの互換性がない」や「ローカルのアプリ版とブラウザ版で操作できることが異なる」といった声が寄せられた。関連して「PC付属のOfficeを使うため個人でバージョンが異なり、使える機能にバラツキがある」など運用上問題が発生しているケースも見られた。関連して、「バージョンアップのタイミングで、挙動がおかしくなることがある」など、バージョンアップによって使い勝手が悪くなると感じる方もいるようだ。
3つ目は機能が多すぎるという不満だ。「機能が増えすぎて習得に時間がかかる」や「全ての機能を満足に使いこなせていない」などの声が寄せられた。一方で、「Microsoft 365はパッケージ版と比較して使えない機能がたくさんある」といった、SaaS版の機能不足を訴える声もあった。
その他にも、「IT部門の把握していないマクロが随所に散乱している。互換性のため『Excel 2003』が捨てられない」や「マクロの開発環境が旧態依然としていて生産しにくい」との声も聞かれ、マクロファイルが属人化しているという悩みもあるようだ。
それでもExcelから離れられない理由
こうした不満から、近年はExcelを他のツールに置き換える「脱Excel」がトレンドになっている。その実施率などは後編で詳しく紹介するが、苦労をしてExcel業務を別のツールで代替したとしても、結局はExcelに戻ってしまった回答者もいた。その理由をフリーコメントで聞いたところ、以下のようなコメントが挙げられた。主に、移行先のツールとExcelの操作性が異なり「今までできていたことができない」という声が多かった。
<使い勝手、操作性>
- Excelでできたことができない
- UIが使いにくかった
- 共同作業の管理を「Apache Subversion 」する予定だったが機能しなかった
- 使える人があまりいない状態だったため
- Accessの使い方が難しすぎた
- Excelのように直感的には使えなかった
- Accessの機能全体を簡単に把握できなかった
- 「Kintone」の入力項目が多すぎた
<費用>
- Accessのライセンス費用がかかるから
<既存資産の移行可否>
- 既存資産が移行できなかった
- 使用している関数に互換性がなかった。操作性が異なるので、慣れるのが大変だった。
- 一部のセル関数に互換性がなく、Excelに戻った
<運用、管理性>
- 社内の業務プロセスではExcelが中心だったため
大企業ではデータ分析、中小企業では帳票作成……企業規模別でExcel用途に違い
次にExcelの用途を調査したところ、「表計算、集計業務」(87.0%)や「資料作成」(75.1%)、「データ分析、レポーティング」(57.8%)、「帳票作成」(50.0%)が上位に挙がった(図2)。
従業員規模別の傾向では、大企業ではデータ分析やレポーティング、進捗管理(ガントチャートなど)、中小企業では見積もりや名簿などの帳票作成に利用する傾向が高かった。帳票の数や種類、それらを取り扱う従業員がそれほど多くない企業においては、専用の帳票ツールではなくExcelを利用するケースが多いと考えられる。
Excelの機能であるマクロ(VBA)の利用率も81.5%と非常に高く、大企業では約9割が「利用したことがある」と答えた。
「表計算、集計業務」(75.3%)や「データ分析、レポーティング」(54.7%)での利用が中心で、具体的には「データベースへのデータ登録、抽出」や「外部システムへインポートするためのデータを複数のExcelファイルから作成」「設定ファイルなどの自動作成」などがコメントで寄せられた(図3)。なお、業態別では、IT関連業でマクロの利用率が88.2%と突出しており、見積作成や進捗管理を中心に使われているようだ。
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