生成AI活用の年に企業が使う自動化ツールは進化したのか?
2024年は「生成AI活用の年」と呼ばれ、生成AIモデルやそれをシステムに組み込んだサービスが登場した。こうした中、企業の自動化はどのように変化したのか。
2024年は「生成AI活用の年」と呼ばれ、生成AIモデルやそれをシステムに組み込んだサービスが登場した。多くの企業がそれらの導入の検討や計画に乗り出している。
AIの高度化によって、業務自動化の可能性はますます押し広げられているが、企業では具体的に何の技術をどのように利用しているのだろうか。
連載3回目の本稿ではキーマンズネットが実施した調査の結果(「業務自動化に関するアンケート調査 2024」、期間:2024年8月6〜30日、有効回答数:359件)を基に、企業における業務自動化の取り組み状況をお伝えする。
生成AI活用の年に企業の自動化はどう変わったか?
業務自動化のツールといえば長らく「RPA」(Robotic Process Automaton)が話題の中心だったが、生成AI活用元年にその傾向は変わったのか。
「業務自動化のために利用している(利用を検討している、利用していた)技術について聞いたところ、「RPA」が62.5%で、「Microsoft Excelのマクロ機能」(39.9%)、「生成AI(チャットbot以外)(27.4%)が続いた(図1)。
前回調査と比較すると、1位のRPAは10ポイント以上利用率が下がり、2位の「Microsoft Excel」(以下、Excel)も約20ポイント下がる結果になった。昨年と2トップは変わらないものの、その利用率には変化が起きているようだ。また今回から新規に追加した「生成AI(チャットbot以外)」の利用率は27.4%で、1001〜5000人の企業では75.8%、5001人以上の企業では71.4%が利用していると回答した。
その他にも「生成AIを利用したチャットbot」(19.8%)、「生成AI以外のAI/機械学習」(14.6%)などをまとめると、AIの利用率はRPAに匹敵するものとなる。
近年は、さまざまなサービスにAI機能が連携され、「裏側でどのようなAI技術やモデルを使っているか」をユーザーが意識することなく、その利便性を享受できるようになってきた。今後もAIが製品に深く組み込まれるほどに、利用率は高まると考えられる。
なお、企業はこれらのツールをどのような業務に適応しているのだろうか。1位は「ワークフローの自動実行」(41.3%)で、次に「定型メールの送信」(34.0%)、「集計レポート制作」(28.5%)、「社内システム向けの巡回、定型データ収集」(20.8%)などが続いた。
また、自動化対象の業務領域では「データ分析」(34.0%)、「販売管理」(25.3%)、「営業管理」(24.7%)がトップに挙がった(図3)。
データ分析は昨年も回答率がトップで、人気の対象領域だ。近年は、膨大なデータを迅速かつ正確に分析し、意思決定に生かすことが企業における成長のカギになっている。手動でデータを処理するのは時間がかかり、ヒューマンエラーも発生しやすいため、自動化によって制度とスピードを向上させるニーズが高いと考えられる。また、データ分析の領域は、AI技術によって精度や分析スピードの向上が見込め、場合によっては意思決定を自動化できる可能性もある。今後の技術の進化を考えると、自動化対象領域として大きな可能性を秘めていると言えるだろう。
また、販売管理や営業管理は、多岐にわたる作業が含まれ、業務量が多くなることが一般的だ。これらを自動化することで、ミスを減らし、効率化が見込めるために人気の自動化対象領域になっていると考えられる。
RPAの導入率は
最後に、自動化ツールとして利用率が1位だったRPAの利用状況を見ていこう。RPAに前向きな姿勢を示す回答としては、「現在RPAツールを利用しており、別の業務に拡大する予定」が40.4%、「導入していないが興味はある」が13.1%、「導入していないが具体的な導入に向けて検討中」が6.4%という結果になった。約4割が導入済みとした結果については前回調査と変わらないものの、RPAはエンタープライズITとして堅固な地位を築いているようだ。
企業規模が大きくなるほど、導入率も上がり、5001人以上の企業では55.6%が利用していると回答した。
一方、「現在導入しておらず、導入予定はない」(24.2%)、「導入を検討したが、取りやめた」(5.8%)、「以前利用していたが中止した」(2.5%)、「RPAツールから他のツールに乗り換えた」(1.1%)、「RPAツールからExcelなどのマクロによる自動化に切り替えた」(1.1%)といった、RPAに後ろ向きな項目にも回答が集まった(図4)。
企業での利用率が上がるほど、多くの企業の業務にマッチしたツールを提供することが難しくなり、ツールに対する不満も増えてくる。RPAのリプレースを検討したことがあるかを聞いた質問では「リプレースしたことがある」とした回答者が14.5%だった。
リプレースの理由としては、スキル不足や人材不足といった企業の体制の問題の他、既存のツールのコストや機能、業務との親和性などが挙がった。
<リプレースの理由>
- コストと機能の兼ね合い
- 業務との親和性と効果
- 使いにくかった
- サポート体制が追い付かなかった
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