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生産性に大きく影響する議事録業務の実態【調査】議事録作成に関するアンケート調査(2024年)/前編

企業がAIを活用したいユースケースは幾つもあるが、中でも期待を集めるのが議事録の作成や共有、管理の領域だ。これらを求める企業においてはどのような課題を抱えているのだろうか。

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 AI技術の進歩とともに、多くの企業がそれらの導入の検討や計画に乗り出している。企業がAIを活用したいユースケースは幾つもあるが、中でも期待を集めるのが「議事録作成」の業務だ。議事録は会議内容の共有や確認に必須の文書だが、その作成や共有は担当者に大きな負荷がかかる。最近は、会議の内容をテキスト化する音声認識技術や、会議の内容を要約、編集できる生成AIなどが進化し、それらの効果に期待を寄せる企業もあるだろう。

 キーマンズネットでは、「議事録作成に関する調査(実施期間:2024年8月26日〜9月13日、回答件数:206件)」を実施した。その結果を基に、本稿では企業における議事録業務の課題について紹介する。

読者から寄せられた議事録業務の不満と弊害

 はじめに、勤務先の会議で議事録を作成する習慣があるかを聞いた。「必要に応じて作成している」(79.1%)、「重要な会議のみ作成している」(11.7%)、「ほとんど作成していない」(5.8%)、「全く作成していない」(3.4%)となり、約9割の企業で議事録作成業務があると分かった。

 その理由としては「後から議論内容を確認するため」(80.7%)、「不参加者への情報共有のため」(60.4%)、「トラブルの際に相談内容、合意内容を振り返るリスク管理のため」(52.9%)、「決定事項やアクションアイテムの確認のため」(50.8%)の4つが過半数で、会議内容の確認や共有はもちろん、決定事項が合意に至った背景や理由、責任所在を明らかにするという目的が多かった(図1)。


図1 議事録を作成する理由

 議事録を作成していない理由としては、「会社としての規模が小さいので、議事録を作成しなくても必要な事項は伝わっているため」や「在籍人員的に不要」「人数が少ないので議事録作成不要」との意見が寄せられ、会社やプロジェクトの参加者数によっては、記録を残さなくても情報やタスクを明確化できるケースもあるようだ。

 次に、議事録作成にかかる負荷に関わる質問をした。議事録を取る会議への参加頻度を聞いたところ「週に1〜2回」(30.5%)、「月に2〜3回」(26.7%)、「月に1回以下」(20.3%)と続き、まとめると「週に1回以上」と「週に1回未満」でほぼ回答者が二分される結果となった(図2)。


図2 議事録を取る会議への参加頻度

 議事録作成に要する総時間については「30分〜1時間」(47.2%)、「1時間30分〜2時間」(19.4%)、「30分未満」(18.9%)、「2時間以上」(12.2%)となり、まとめると「1時間以内」が過半数だった(図3)。さらに約3割が「1時間30分以上」の時間を費やしていることも分かる。


図3 議事録作成にかかる時間

 議事録作成時に負荷が高い作業としては「会議の内容を記録、テキスト化すること(発言内容の漏れや誤解を防ぐ)」(75.6%)と「決定事項やアクションアイテムの整理(何が決まったかを明確にする)」(53.9%)に票が集中した(図4)。


図4 議事録作成業務で作業負荷が高い作業

 議事録作成においては単に話者の発言をテキスト化することも骨の折れる仕事だが、議論の流れや合意事項を表現したり、決議事項やネクストアクションを簡潔に明記したりすることは、一定のスキルや慣れが必要になる。

 なお、どの粒度で議事録を作成しているかを聞いた設問では「ある程度会議中の発言を記載」(52.9%)、「決定・重要事項やアクションポイントだけを記載」(49.2%)、「要点と文字お越しも両方記載」(37.4%)となった。

 ここまで企業における議事録作成業務の実態を見てきたが、実際に読者からは不満の声も寄せられている。議事録作成に対して負担や不満を「やや感じる」とした回答者は47.2%、「とても感じる」とした回答者は35.0%で、合わせ81.9%は不満があるとした。「それほど感じない」は16.1%、まったく感じないは1.7%と少数派だ。

 フリーコメントでは2つの課題が見えてきた。

 1つ目は、会議に集中できないといった声だ。「議事録の作成に集中して会話が頭に入らないことがある」や「会議中にメモしなければならないため会議に集中できない」など、また「司会進行をしながら意見も求められる中で、議事録作成までやってくれ、というのはしんどい」や「議事録作成と討議への参加のバランス」といった不満が寄せられた。

 2つ目は、議事録の完成までに時間がかかる点だ。一般的な議事録業務は、作成と確認、共有の3つの工程があるが、それぞれで課題が散見された。作成工程においては「要点が漏れていないか、あるいは発言者が思い付きで言ったことで記載しない方がいいことも記載したのではないか神経をつかう」や「会話した内容全てを記録することは少なく、要点をまとめて記載することが多いため、出席者全員が納得できるような要点をまとめることに思考を要する」など、会議内容をどこまで忠実に再現するか、どこまで整理するか、といったまとめ方に頭を悩ませることが多い。

 これは「どこまで記録するかの粒度が決まっていない」や「会議内容の再現性、正確さ、参加者の記憶に基づく合意の必要性、時間、書き方が決まっていない」といったコメントからも分かるように、議事録作成の目的や活用シーンがあいまいであることも原因だろう。

 確認や共有の工程では「発言や結論があいまいな場合があり、正確な記載のための調査や確認が必要」や「記載もれなど会議後に参加メンバーに確認する必要がある」というコメントが寄せられた。「上司へ承認を依頼し、承認もらってメールで展開するので時間がかかる」や「作成後、承認までしなければならず、メールで承認依頼し、承認後、展開メールを作成するなど手間がかかる」など承認フローまで組まれているケースもあり、想像以上に多くの工数がかかるケースもあるようだ。

 なお、議事録を残す形式も負荷にかかわる要素だろう。大多数が「『Microsoft Word』や『Google ドキュメント』などのオフィス系ソフトでのメモ、記録」(83.4%)と回答し、これに「TeamsやSlackなどのチャットツールのコメント」(19.8%)や「電子メールの文面」(18.7%)が続いた(図5)。

 作成目的が情報共有のみならず、リスク管理やネクストアクションの確認を含む際には、オフィス系ソフトなどによるストック型の情報管理が向いているだろう。一方、スピーディーな情報共有を目的とする場合には、チャットやメールといった情報が即座に流れるフロー型を選択するケースが多いとみられる。どちらも後から見返すことを考えると、どこにどの情報があるのかをすぐに判断できるような仕組みや運用が求められる。

 以上、前編は企業における議事録業務の実態を紹介した。後編では課題を解消する議事録作成ツールに焦点を当て、導入状況やツール満足度などを見ていく。


図5 議事録をどのような形式で残しているか

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