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1000万GBもデータを保存できる「DNAコンピュータ」がいよいよ実現?:797th Lap

DNAを使って情報処理をする「DNAコンピュータ」。コンピューティングの世界で注目されている技術だが、実現に近づける新技術が開発された。

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 生物が持つ生体分子システムの処理能力は莫大(ばくだい)なパワーを持っている。生体分子の一つである「DNA」(デオキシリボ核酸)が持つ膨大な記憶領域を応用することで、より複雑な処理を人工的に実行しようとするのが「DNAコンピュータ」だ。

 少量のDNAで大量の情報を並列処理できる新世代のコンピューティングシステムとして期待が寄せられている。その実現は程遠いと言われているが、DNAコンピュータの実現を一気に近づける研究結果が発表された。DNAコンピュータによってコンピューティングの世界はどう変わるのか?

 現代のコンピュータはいわゆる「フォン・ノイマン型」と呼ばれ、DNAコンピュータでは同様の仕様を実現するのは難しいとされてきた。しかし、それを覆す現代のコンピュータと同等の処理を可能にするDNAコンピュータが発表された。

 発表したのは、ノースカロライナ州立大学とジョンズ・ホプキンズ大学の研究者による研究チームだ。2024年8月22日に科学誌『Nature』に論文が掲載され、それを受けて科学技術ニュースサイト「ZME Science」が2024年9月17日に解説記事を公開した。

 記事では、研究チームがDNAコンピュータの研究と開発において極めて重要な技術を開発したと紹介されている。研究チームは、フォン・ノイマン型のコンピュータで実行しているデータの保存や取得、消去、書き換え、情報の移動などをDNAコンピュータでも実行可能にする、メモリやストレージに該当する技術を開発したという。

 記事には「DNAは自然界における究極のデータ記憶媒体だ」と記されている。DNAに膨大な量の情報を保存できることからだ。ヒトのDNAには約30億の塩基対があり、単純に換算すると細胞1つ当たりに約800MBものデータが保存されているという。これまで、それらのデータを管理、処理することは難しく、実質的には不可能とされてきた。

 しかし、研究チームは「primordial DNA store and compute engine」と呼ばれる新技術が、これまでの常識を打ち破る可能性があると発表した。この新技術のカギとなるのは「デンドリコロイド」という柔軟なポリマー構造で、これをDNAの“足場”として使うという。小さな木のような構造をしているデンドリコロイドを足場にして、DNAの分子構造を保持しながら表面に大量のDNAを保存していく。

 研究チームは「DNA情報とそれが保存されているナノファイバーを区別する機能により、デジタルデバイスと同様に多くのことを実行できる」と論文に記している。演算はもちろん、今まで不可能とされてきたDNAに記録された膨大なデータを消去、取得できるようになったことで、DNAコンピュータは3×3マスのチェスや、3×3マスの数独を解くこともできる。

 今回、研究チームがデンドリコロイドによって実現したDNAコンピュータは、角砂糖ほどの大きさに1000万GBものデータを保存できる。非破壊的なファイルアクセスも可能だ。さらにシステムの安定性も非常に高く、一度構築したDNAコンピュータは適切な条件下であれば数千年にわたって持続できるという。DNA凍結技術を併用すれば、数百万年も保存することができるそうだ。

 ZME Scienceの記事では、このシステムはコンピューティングパワーの面ではスーパーコンピュータに及ぶものではないものの、長期的なビジョンには大きな魅力があると解説されている。「たとえ文明が滅びたとしても、人類の知識を長く保存できるアーカイブになり得る」とも言及されていて、その高い期待感が伝わってくる。

 研究チームのリーダーであるアルバート・キョン氏は「われわれはDNAコンピュータ分野に刺激を与える物を開発したいと考えてきた。そして今回の研究が新たな一歩となることを願っている」と話している。

 もちろんDNAコンピュータの研究はまだ初期段階ではあるものの、今回の研究結果については、1つのブレークスルーになることは間違いないだろう。現実味を帯びてきたDNAコンピュータの開発。その登場が待ち遠しくなるというものだ。


上司X

上司X: DNAコンピュータの新しい地平を開く技術が登場した、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: DNAコンピュータですか。もちろん聞いたことはありますけど、まだ現実化は遠いようなイメージです。


上司X

上司X: だからそういう現状を打破しかねないような論文発表ってことさ。


ブラックピット

ブラックピット: そういうことですね。


上司X

上司X: まあ、ぶっちゃけよく分からないのは俺もだけどな。なんというか、DNAコンピュータというものをイメージしにくい。どういう外見なんだろう。いろいろハテナだ。


ブラックピット

ブラックピット: それは僕も思います。チェスとか数独とかが解けるって話ですけど、問題をどういう風に入力するのかとか、答えはどうやって出力されたのかとか……。


上司X

上司X: まあ、しっかりと論文を読み込めば分かるのではないかな。俺はもうZME Scienceの記事を読むだけでオナカいっぱいだよ。


ブラックピット

ブラックピット: 僕も似たようなものですけどね。それでも記事を読むに、DNAコンピュータの未来は明るいんだなとビンビンに感じましたけどね。楽しみで仕方ないですよね、DNAコンピュータの実現ってヤツが。


上司X

上司X: ずいぶん取って付けたようなまとめコメントだな。しかし、今回の研究結果で実現が一気に近づいたのは確かなようだ。実現したらわれわれの文明崩壊後も多くのデータが残る可能性があるというから、なんとしても実現して欲しいところだよ。今後の研究にも期待を寄せたいな。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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