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データ活用失敗につながる“幻想” 価値発揮のコツとは? 製造業の事例【後編】事例で学ぶAI活用とデータ基盤

製造業では日々膨大な量のデータが生成される。それを適切に活用できるとどんなことができるのか。事例を基に効果を引き出すコツを探る。

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事例で学ぶAI活用とデータ基盤

生成AIの活用で成果を上げる企業が増えている。データの適切な収集、管理、分析は業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)、競争力の強化をもたらす。本連載では、事例を通してデータ活用がもたらすメリット、デメリットを具体的な事例を通して紹介する。

 生成AIや機械学習(ML)などの先進技術を活用することで多くの企業が成果を上げています。これらの技術を効果的に運用するためには、データの適切な収集と管理、分析が不可欠です。本連載の第1回では、データ基盤や生成AIの役割、そして企業が直面している課題と機会について説明しました。この第3回では前回に引き続き製造業に焦点を当てます。データやAI活用において製造業が抱える課題を取り上げ、どのように競争力を高めていくかを探ります。

失敗につながる“幻想”

 データ活用によってビジネスプロセスの変革やイノベーションを起こし、新たなビジネスモデルを定義し、新たな収益源を確立する道を切り開けます。しかし製造業の企業はAIを含む新技術を採用することに課題を感じているといいます。

 ガートナーの調査によると、製造業CEOの80%はAIやIoT、データ、分析などに代表されるデジタルテクノロジーへの投資を増やしています。しかし、DXへの取り組みが成功していると回答した製造業企業は全体の8%です。投資に対する効果を実感できていないのです。AIを有効活用できない背景には以下のような要因が挙げられます。

 問題は適切なデータの収集と管理ができていないことです。生成AIなどの先進技術はDXの一部に過ぎません。DXによって効率化や競争優位性を得たい場合、データの役割と価値を理解しなければなりません。

 センサー技術の進歩とコストの低下により、製造業界におけるデータ収集と活用の可能性は飛躍的に拡大しています。温度や湿度、圧力、振動、音響、画像などのさまざまな物理量や状態を高精度に計測できます。新しい製造設備には多種多様なセンサーが標準装備されるようになり、既存の古い製造設備にも低コストのセンサーを後付けすることが容易になっています。

 これらの産業用IoTによって収集される大量のデータは、製造業者にとって非常に価値のある情報源となります。しかし、これらのデータをただ収集するだけでは、MLを含むAIのシステムが適切に分析できず、最適な結果を得られません。収集したデータにはあらゆるシナリオが含まれており、アルゴリズムがそれを自動的に解明してくれるだろうという考えは誤りです。信頼できるデータと堅牢(けんろう)なデータ基盤がなければ、MLを含むAIへのアプローチは偏った信頼性の低いものとなり、失敗のリスクが高まります。組織がAIの価値を実感できないのは、欠陥や不足のあるデータにAIツールやデータ分析を適用しているからなのです。

AI・データ活用で実現できること

 製造業ではIoTやAIの導入でどのようなメリットが得られるのか、幾つかのユースケースを紹介しましょう。

 まず1つ目が「予知保全」です。設備から得られるセンサーデータや過去のメンテナンスログなどを活用し、AIによる分析で設備や部品の故障を予測し、適切なタイミングできるようになります。突発的な設備トラブルによる生産停止を防ぎ、稼働率の向上とメンテナンスコストの削減を期待できます。

 高品質なデータを活用すれば「品質向上」も実現できます。人による目視検査の代わりに画像認識AIを用いたり、AI分析で歩留まりを最適化したりすることで、大きな効果が期待できます。半導体業界では、歩留まりのわずかな改善が数百万ドルのコスト削減につながるため、AIによる品質管理の導入は大きなメリットをもたらします。

 外部データも加えた「需要予測」も期待できます。過去のデータやトレンド、天候、休日、季節性、市況などの要因を考慮したAIによる需要予測により、適切な生産計画の立案や在庫管理の最適化が可能になります。在庫の過不足を防ぎ、生産効率の向上と機会損失の削減が実現できます。

 この他にも、AIの活用は自動化によるスマートな生産や生産プロセスの最適化、パターン分析、パーソナライゼーション、ナレッジ管理、異常検知など多くのメリットをもたらします。そのためには、信頼できるデータを集め、適切に管理できるデータ基盤の構築が不可欠です。

著者紹介 大澤 毅(おおさわ たけし)Cloudera株式会社 社長執行役員

IT業界を中心に大手独立系メーカーや大手システムインテグレーター、外資系IT企業のマネジメントや数々の新規事業の立ち上げに携わり、20年以上の豊富な経験と実績を持つ。Cloudera入社以前は、SAPジャパン SAP Fieldglass事業本部長として、製品のローカル化や事業開発、マーケティング、営業、パートナー戦略、コンサルティング、サポートなど数多くのマネジメントを担当。2020年10月にClouderaの社長執行役員に就任。

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