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ツールを入れてもトラブルに? 調査で見えた、注意すべきIT資産管理の盲点IT資産管理ツールの利用状況(2024年)/後編

脆弱性を抱えたエンドポイントを狙うサイバー攻撃が横行している。全台に最新のパッチが適用できているかどうかを把握しておかなければならないが、果たして適切に管理できているだろうか。独自調査からずさんなIT資産管理の実態が見えた。

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 脆弱(ぜいじゃく)なエンドポイントを狙うサイバー攻撃が激化している。クライアントPCのOSアップデートやパッチの適用管理はもちろん、シャドーITやBYODの現状も把握しておく必要があり、IT資産管理の重要性が増している。

 これらの作業を効率化するものがIT資産管理ツールだ。企業はどこまでツールを活用できていて、IT資産管理の問題点はどこにあるのか。後編となる本稿では、キーマンズネットが実施した「IT資産管理ツールの利用状況に関するアンケート」(実施期間:2024年9月13日〜27日、回答件数:144件)の結果を基に、IT資産管理にまつわるトラブル事例や、ユーザー企業がベンダーに望むこと、ライセンス当たりのコストの相場について説明する。

IT資産管理ツールを使っていてもトラブルに 情シスはココに注意

 前編でも触れたが、回答者の52.1%がIT資産管理ツールを「利用している」と回答する一方で、約4割が「必要性を感じるが導入は検討していない」「必要性を感じない」と答えた。その理由として「まだトラブルが発生していないから」「特に問題は起きていないから」などが挙がった。

 実際に、これまでIT資産管理にまつわる問題やトラブルが起きたことはあるかと尋ねたところ、「経験したことがある」が29.2%、「経験したことがない」とした割合は70.8%となった。「ある」の回答割合は2022年が20.2%、2023年は24.9%と年々増加傾向にある(図1)。単純計算すると3社に1社の割合で何らかのトラブルが発生していることになる。これは決して低い数値とは言えない。


図1 勤務先でIT資産管理にまつわるトラブルが発生したことがあるか

 具体的にどのようなトラブルが発生したのかを尋ねたところ、内容は次のように2つに分けられる。中には、IT資産管理ツールを利用していてもトラブルにつながった事例もある。ツールの利用有無にかかわらず、注意したい点をまとめた。

 1つ目は、端末の不正管理に関するトラブルだ。「管理対象外の端末が放置されていて、セキュリティインシデントを生んだ」「(IT部門で)確認していない個人のデバイスがトラブルを起こした」「IT資産管理ツールが認知していなかった端末によって事故が発生した」など、管理外の端末が原因でインシデントにつながった事例だ。「廃棄済みのPCが資産管理台帳に残っていた」「退職者が会社貸与の端末を返却していなかった」「貸与している機器が行方不明になった」など背景はさまざまだが、いずれも端末の管理不備が原因だ。

 2つ目がデータ消失やソフトウェアライセンスに関する例だ。「管理対象のPCがクラッシュしてデータが破損してしまった。バックアップも取っていなかった」「利用開始時は無償ソフトだったが、途中で有償化になったことに気付かずにそのままインストールしていた」といった実例が寄せられた。

 その他、「『Microsoft Update』を適用したことでバックアップツールが動作不能になり、ロールバックした際にIT資産管理ツールのデータベースが破損した」「古いバージョンのOSが稼働していた」「リプレース時期や製品情報が不明な機器がある」といったEOLへの対応不備に関するものなど、数々の事例が寄せられた。

ユーザーがベンダーに望む2つのコト

 ユーザーは、IT資産管理ツールのベンダー、提供事業者に対してどのようなサービスや機能を求めているのだろうか。フリーコメントで要望を募ったところ2つに大別できる。

 1つ目は、セキュリティ機能だ。「確実、かつ低トラフィックでセキュリティパッチを配布できる機能」「ファイアウォールをスムーズにアップデートできる機能」「最新のウイルスやトロイの情報提供、管理」「(エンドポイントからの)情報漏えい防止機能」「SBO(ソフトウェア部品表)の管理機能」といった機能の実装を望む声が目立った。

 2つ目は、利用端末を正確に把握機能についてだ。「モバイル機器(スマートフォンなど)を含めたデバイスの一括管理」「従業員のPCの利用状況も管理できる機能がほしい」「システムの寿命を把握できる機能」「(PCなどの)原価償却の時期を管理したい」など、アップデートやバージョン管理だけではなくIT資産の全数把握、棚卸しを効率化する機能を望む声も上がった。

IT資産管理ツール、1ライセンス当たりの導入コストが高騰傾向

 最後は、管理対象とするクライアント端末数とライセンスコストについてだ。

 管理対象の総数は「1001台〜5000台」(20.7%)、「1万台以上」(19.5%)、「101〜500台」(18.4%)が上位に続いた(図2)。この結果を従業員規模別に見ると、全規模帯で従業員数と同等の管理台数を挙げる回答が最多であった。従業員数が大きくなるにつれて、管理台数が従業員数を上回る傾向がみられた。従業員規模が大きくなるにつれ従業員1人当たりの配布端末が増える傾向があり、結果として管理対象のクライアント端末も増えているようだ。


図2 IT資産管理ツールで管理対象としているクライアント端末数

 IT資産管理ツール1ライセンス当たりの導入コストは、回答割合の高い順に「1001〜3000円未満」(36.8%)、「1000円未満」(27.6%)という並びとなり、合計すると全体の64.4%が3000円未満となった。2023年に実施した調査と比較すると「1000円未満」が7.1ポイント減少し、「1001〜3000円未満」が11.8ポイント増加した。値上げが続く世相と相まって、全体的にコスト高となる傾向がみられた。為替の関係はもちろん、AIや機械学習といった技術対応を背景に価格改定に踏み切るサービス事業者が増えてきたことも影響しているだろう。

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