外注サービスを利用しても多忙を極める 働く情シスのリアル【実態調査】:30の質問で暴く情シスの実態 2024年
DXが叫ばれる中、情報システム部門が関与する仕事は増え続けている。「働き方と情報共有」にフォーカスして情報システム部門の現状や課題を探った。
情報システム部門と一口にいっても、企業によって業務内容や勤務状況、求められるスキル、取り組むプロジェクトなどは大きく異なる。
そうした情報システム部門の方々の働き方や本音を探るため、キーマンズネットでは情シスの「働き方と情報共有」「セキュリティ対策」「キャリア/スキル」「採用状況」「業務内容」のテーマで読者調査を実施した(実施期間:2024年8月7日〜10月4日)。
本稿では、「働き方と情報共有」にフォーカスして、情報システム部門の現状や課題を紹介する。
外注サービスを利用しても情シスが多忙すぎる理由
DXが叫ばれる中、情報システム部門が関与する仕事は増え続けている。情報システム部門の負荷の指針として残業時間があるが、どのような状況なのか。
ここ1年間で月当たりの平均残業時間を聞いたところ、「0〜10時間」(37.4%)、「11〜20時間」(27.2%)、「21〜30時間」(18.3%)、「31〜45時間」(11.8%)、「46時間以上」(5.3%)となった(図1)。
従業員規模別にこの結果を見ると、大企業ほど残業時間が増える傾向にあった。
IT業務の負荷を軽減する方法として、外注サービスを利用するという選択肢がある。調査によれば、業務を外注している企業は「全て外注している」(2.8%)、「一部外注している」(52.4%)を合わせて55.2%だった(図2)。
従業員別の結果では、大企業ほど外注サービスを利用している傾向にあり、1000人以上の企業では67.3%、5001人以上の企業では73.2%が外注サービスを利用しているとした。一方で、現在は利用していないが「利用予定」とした企業は、501〜1000人の企業で最も多く22.3%、次いで101〜500人の企業で8.9%と小規模企業帯が中心で、今後はこうした層を中心に利用が進む可能性がありそうだ。
関連して、外部委託する業務としては、「PCなどの端末調達やキッティング業務」(49.3%)が最も多く、「ヘルプデスク業務」(39.3%)、「システムの開発、構築」(36.7%)が続いた(図3)。
「PCなどの端末調達やキッティング業務」や「ヘルプデスク業務」は、定型化しやすい傾向にあるため、外部に委託することで、コスト削減や効率化を図りやすく、社内リソースをより戦略的な業務に集中させられる。「システムの開発、構築」は、専門的な技術やスキルが求められるため、外注により技術力や最新の知見を活用したいという意図がありそうだ。
一方で、「IT戦略の企画、立案」と回答した方はわずか5.3%で、自社で実行すべき事柄として認識されていると分かる。
企業規模別の回答を見ると、企業規模が大きくなるほど「PCなどの端末調達やキッティング業務」や「ヘルプデスク業務」の外注割合が多くなる一方、「システムの開発や構築」の回答率が下がる傾向にあった。大企業は専門人材を抱えられる余地があること、自社で開発を主導することが戦略的に重要とされる風潮などが相まって、自社での対応を優先するケースが多いと考えられる。
まとめると、企業規模が大きいほど外注サービスを利用して定型業務を効率化している傾向にある一方で、大企業ほど残業時間が多くなる傾向にある。大手企業においては、システムや業務プロセスが多岐にわたる上、情シスが多数のプロジェクトに関与するケースもあり、業務量が膨大になりがちだ。近年は、DX推進の重要性が叫ばれ、定型業務以外の領域の重要性が増しているため、情シスの負荷が依然として高いと考えられる。
なお、情シスの働き方に関連して1週間のテレワーク率も聞いた。「0〜20%」(47.8%)が最も多く、「21〜40%」(22.4%)と、テレワーク率40%以下が大半という結果になった。物理的な機器の管理やトラブル対応、セキュリティ対策など、オフィスやデータセンターでの対応が必要な業務が多いことがその理由と考えられる(図4)。
情シスが使う情報共有ツールは?
最後に、情報システム部門の情報共有の方法について聞いた。最も多く使われているのは、「Google WorkspaceやMicrosoft 365に含まれるコラボレーションツール(Teamsなど)」で54.5%。「定期的なミーティングによる情報共有」(35.0%)、「ドキュメント管理ツール(SharePoint、Evernote Business)」(28.5%)が上位に挙がった(図5)。
情報の種類によって共有ツールも異なり、「社内システムの変更やアップデート」についてはメールが最も多く、チャットツールやグループウェアが続く結果となった。また、システム障害についてもメールが5割を超え、口頭での伝達やチャットツールといった手段が多く使われている。
利用率の高かったGoogle WorkspaceやMicrosoft 365といったコラボレーションツールやメール、電話、チャットなどは、リアルタイムの共同作業やコミュニケーションを可能にする便利な手段だが、システム変更や障害時には対応履歴を残すことも求められるため、近年はストック情報を蓄積するためのドキュメント、ナレッジ、プロジェクト管理ツールの重要性が指摘されている。今後それらのツールの利用率がどのように上がるのか、編集部でも引き続きレポートしていきたい。
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