情シスが一番取得しているIT資格は? 保有、活用のホンネを大公開:30の質問で暴く情シスの実態 2024年
多くの情シスはスキルアップや評価アップ、給与アップに備えてどういったIT資格を取得すればよいのか気になるところだろう。調査の結果を基に、情シスのIT資格の取得状況や取得目的、業務での活用シーンなどをまとめる。
多くの情報システム部門の従業員(以下、情シス)は、スキルアップや評価アップ、給与アップに備えてどういったIT資格を取得すればよいのか気になるところだろう。そうした情シスの疑問を解消するため、キーマンズネットは情シスに関する読者調査を実施した(実施期間:2024年8月7日〜10月4日、回答数:246)。
調査の結果を基に、情シスのIT資格の取得状況や取得目的、業務での活用シーンなどをまとめる。IT資格を取得して本当に業務に役立つのだろうか。情シスのホンネが明らかになる。
企業規模で分かれるIT資格の取得傾向
現在保有しているIT資格を尋ね、回答割合順(44資格)に示したものが図1だ。IT資格の保有割合について、以降で詳しく見ていこう。
まず、IT関連の資格の保有状況を聞いたところ、57.7%が「保有している」と回答した。具体的な保有資格としては、「基本情報技術者」(43.0%)、「応用情報技術者」(26.8%)、「ITパスポート試験」(26.1%)と汎用的なIT知識を問う資格が続いた。
4位は「ネットワークスペシャリスト」(19.7%)、5位は「情報セキュリティマネジメント」(17.6)、6位は「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」(12.7%)とインフラ、セキュリティの専門知識を問う資格が続いた。7位は「AWS認定各種」(12.0%)、8位は「Microsoft Azure認定各種」(9.9%)とハイパースケーラーに関する資格だ。「Google Cloud認定各種」については2.1%と、AWS(Amazon Web Services)とMicrosoftに後れを取っているのが分かる。
企業規模別に見ると、5001人以上の企業は「基本情報技術者」が32.4%(全企業平均:43.0%)、「応用情報技術者」は20.6%(全企業平均:26.8%)、「ITパスポート試験」(全企業平均:26.1%)が14.7%と全て平均を大きく下回った。一方、「Microsoft Azure認定各種」が26.5%(全企業平均:9.9%)、「VMware認定資格各種」が8.8%(全企業平均:2.8%)、「G検定」が14.7%(全企業平均:6.3%)、「ネットワークスペシャリスト」が32.4%(全企業平均:19.7)、「データベーススペシャリスト」が11.8%(全企業平均:6.3%)と、専門性を求められる資格では他の企業規模帯を大きく上回った。業務が細分化され情シスの役割が限定されていることが保有資格にも影響しているのだろう。
他には、1001〜5000人の企業は「AWS認定各種」が20.6%と平均の12.0%を大きく上回り、AWSの普及率の高さを感じさせる。また、101〜1000人は「ITパスポート試験」の取得が42.9%と、平均の26.1%を大幅に上回った。
「IT資格は役に立たない」? 情シスのホンネ
次に、IT関連の資格を「保有している」と回答した人に向けて、IT関連の資格が「役に立った」と感じる具体的な場面を聞いた。結果、38.7%が「役に立ったことはない」という結果となった。以降は、「業務で役に立った」(37.3%)がわずかな差でトップを下回り、「一時金が支給された」(15.5%)、「就職、転職に有利に働いた」(10.6%)との回答が続いた。
企業規模ごとに見ると、100人以下は48.7%が「役に立ったことはない」と回答しているのに対し、5001人以上の企業は20.6%しか役に立たないと回答していない。ただ、5001人以上の企業は資格取得によって「給与が上がった」割合が2.9%で平均の9.2%を大きく下回り、資格が業務に役立っているにもかかわらず給与には反映されないという実情がありそうだ。
また、「就職、転職に有利に働いた」との回答は、100人以下が10.3%、101〜1000人が17.1%、1001〜5000人%が8.8%、5001人以上が5.9%と、企業規模が大きくなるに従って割合が小さくなった。大手企業では資格の取得が有利に働かないのか、そもそも大手企業の人は転職をしない傾向にあるのかは気になるところだ。
実際に「業務に最も役に立ったIT資格」を聞いたところ、「基本情報技術者」(9.9%)、「応用情報技術者」(9.2%)、「ITパスポート試験」(7.7%)と続いた。役に立った人の割合が低く、そもそもの取得者も多いことから参考程度にしておきたい
最後に、IT資格が業務でどのように役に立ったのかについて具体的なエピソードを聞いた。特に多く寄せられた回答としては、「知識を得たことで、ベンダーとの打ち合わせがスムーズになった」「ベンダーと打ち合わせをする際、これまで全く話が通じない状態だったが、自分が担当するようになってからは話が通じるようになったと感謝された」「外部のベンダーと話しが通じる。意思の疎通で問題を生じない。基本的なITの用語や意味が分かっていないと、会話できない」など、ベンダーとのコミュニケーションが円滑化したとのコメントだ。情報をかみ砕いたり瞬時に理解したりする上で資格の取得は役立ちそうだ。
同様、「自分の発言について、意見が通りやすくなり、仕事がしやすくなった」といったポジティブな意見がある中で、「ITがよく分からない人を圧倒することができた」と資格で得た知識で優越感に浸るコメントもあった。以降では、その他のフリーコメントをまとめている。
その他の資格取得が役立ったエピソード
- システムの構造を理解できる。何をやるにしてもリスクが読める上、障害対応にも役に立つ
- 新人のころ、従業員が何を喋っているのかさっぱり分からなかったときに専門用語などを学ぶために役立った
- サービス構築時にヘルプを見る。概念を理解していたため、ヘルプの理解が早かった
- IT導入、システム導入の際に運用目線に偏らず、管理やセキュリティ、運用などの多角的視点で判断できるようになった
- 自社および他社のITサービス運用における、管理監督業務のあるべき姿(目標設定)を設け、実施すべき管理項目や実施すべき運用工程が設定できた
- 医師、看護師などの資格職相手には、資格保有していることがコミュニケーションの最低条件になる
- トラブル対応が迅速にできた
- セキュリティの知識が身に付き、システム戦略を立てられた
- 各種基礎知識をきちんと再学習することによって業務に役立つ発見があった
- 資格が持っていることで有識者判定され、検討会議への参加許可をもらえた
- 試験の勉強をすることで知識が増え、対応できる仕事の幅が広がった
フリーコメントの結果をワードクラウドで整理したところ、「ベンダー」や「上流工程」の文字が大きくなっていることからも、ステークホルダーとのコミュニケーションで資格習得時の知識が役立つのが分かる。なお、全回答者246人のうち、100人以下の企業規模帯は72人、101〜1000人は63人、1001〜5000人は52人、5001人以上は59人であった。
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