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Salesforceユーザー以外も利用できる生成AI「Agentforce」とは

Salesforceはプラットフォーム「Agentforce」で高みを目指す。多くの企業においてデータの整備が必要とされる時期にどこまで到達できるかは未知数だ。

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 Salesforceが提供する自立型AIエージェント「Agentforce」は、顧客や従業員との対話を通して、課題の発見やタスクの優先順位付け、質問や要望への対応などを自律的に実施するものだ。2024年10月30日にはセールスフォース・ジャパンが日本市場でAgentforceの提供を開始するとした。

 Salesforceは「Agentforce」をSalesforceユーザーだけでなく、大半の企業のITプラットフォームで利用できるようにしたいと考えている。

Salesforceユーザー以外も利用できるAgentforceとは

 Agentforceは2024年9月17日のDreamforceで正式に発表された。Salesforceは同年7月からAgentforceの詳細を少しずつ公開しており、最初はマーク・ベニオフ氏(CEO)のXアカウントを通じて情報が発信された。同年9月9日の週に同社は、大半のユーザーが使用する標準バージョンと、Agentforceの自律エージェントがAtlas Reasoning Engineを意思決定に使用する2つのバージョンがあることを明らかにした。

 その裏側では、Agentforceを動かす大規模なアクションモデルについても議論された。

 年次カンファレンス「Dreamforce」において、通常であればSalesforceは自社の製品を大々的に発表する。Agentforceについても例外ではなく、ユーザーである開発者や管理者、コンサルタントはデモやキーノートの盛り上がりに向けて準備を整えた。

 しかし、Salesforceは明確な言葉を使って、AgentforceがSalesforceだけでなく大半の企業向けクラウドアプリケーションやサービスの自動化を構築できるプラットフォームであるとしている。同社のAgentforce Partner Networkは、2024年7月末に発表されたWorkdayとのパートナーシップに始まり、年末までに稼働する予定で、Salesforceのデータを他のアプリのデータとゼロコピーかつアクセス制御された形で統合する。

 Salesforce AIのクララ・シー氏(CEO)は、次のように述べている。

 「セキュリティの観点から共有モデルはアプリケーション層で定義される。つまり、どの営業担当者がどの顧客情報にアクセスできるかをアプリケーション層で定義しているのだ。これは『Microsoft』のCopilotや他の競合他社製品に見られるセキュリティの問題の一部だ。データがモデルに漏れたり、従業員や顧客がアクセスしてはいけないデータにアクセスするリスクは回避しなければならない」

 Salesforceの「Einstein Trust Layer」は、Agentforce内外でユーザーの顧客データを保護することを主張している。同社のデータクラウド部門のラフル・アウラドカル氏(エグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャー)によると、これがSalesforceを利用していないユーザーに対して、コード不要で使える「Agentforce AI自動化プラットフォーム」を試してもらうための方法だという。プライバシーとコンプライアンスのポリシーはメタデータに組み込まれているため、データストアを通じてAgentforceに移行できる。

 Salesforceが他のアプリとの連携を拡大するために導入したもう1つの要素は、「Salesforce VenturesのGenerative AI Fund」への5億ドルの資本投資だ。これまでに同技術に投資された金額は10億ドルに達した。Salesforce Venturesのジョン・ソモルジャイ氏(チーフコーポレートデベロップメント兼インベストメントオフィサー)は「Salesforceのベンチャーキャピタルファンドは、AnthropicやCohere、Mistral AI、Hugging Faceといった汎用的な生成AIモデルやプラットフォームへの初期投資をしたが、今回のラウンドは特定の業界に焦点を当てる可能性が高い」と述べた。

 「私たちは、大規模言語モデルをより適切に支援し、ポートフォリオ内の企業がSalesforceとより効果的に連携できる状態を実現したと考えている。そのような投資について非常に満足している。新たな資金を活用して注力したいのは、より小規模なモデルや、特定のケースに特化したモデルだ。これらは少ないGPUで実行可能になると考えており、非常に興味深いツールだ。これによりモデルやエージェントがより効果的かつ正確に動作できるようになる」(ソモルジャイ氏)

 SalesforceとGoogleは2024年9月17日にパートナーシップを発表し、AgentforceがGoogle WorkspaceとSalesforce Customer 360のアプリに連携できるようになる。この双方向の統合により、SalesforceのデータからGoogleのスライドやドキュメントを作成したり、Googleの電子メールやカレンダーのデータをSalesforceの記録に送信することが可能となる。

データハウスベンダーと競合するつもりはない

 アウラドカル氏は「SalesforceはDatabricksやSnowflakeのようなデータウェアハウスベンダーと競合するつもりはない」と述べた。AgentforceはSalesforceや他のクラウドアプリ、またはSnowflakeのような大規模なリポジトリにあるデータをより使いやすくすることを目的としている。

 「Data CloudはSalesforceのプラットフォームにおける最大のアップグレードであり、これらのデータレイクハウスやウェアハウスにとっても最大のアップグレードだと言えるだろう。SnowflakeとDatabricksの両方にとってのアップグレードだ。私たちはそれらのデータを実際の業務の流れで活用できるようにしている」(アウラドカル氏)

 調査企業であるConstellation Researchのリズ・ミラー氏(アナリスト)は「これら全てがどれほどの費用になるのかはまだ明らかではない」と述べた。

 ベニオフ氏は、Salesforceが目指しているAgentforceの価格のベンチマークとして、1会話当たり2ドルを提示しており、ボリュームディスカウントも追加されるとのことだ。ミラー氏によると、1会話当たり2ドルというコストは、コンタクトセンターでの人間による会話にかかる費用と比べても有利だという。業界の推定では1会話当たり2.70ドルから5.60ドルかかるとされている。しかし、Agentforceは人間ではない。一部の会話は複雑過ぎて最終的には人間による対応が必要になるかもしれない。

 顧客が何を購入しているのか正確に理解するためには、さらなる情報が必要だ。

 「顧客は『1会話当たり2ドル』が実際に何を意味するのかを見積もるための計算機や方法を持っているだろうか。ある時点で、私たちは理解の不足を認める必要があるかもしれないが、それでも今は問題ないだろう。しかし、私たちが想定していない収益への影響が発生する可能性もある。例えば、エージェントのおかげで、返品や簡単な購入に関する会話の処理能力を3倍に増やせるとしよう。素晴らしいことだ。しかし、それが実際にどのような形で行われるのか、そしてそのコストに対して私たちは準備ができているのだろう

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