MSの生成AI「Copilot for Sales」は販売業務をどう変えるのか？ 機能やライセンスを徹底解説

Copilot for SalesはMicrosoftの生成AIアシスタントで、営業チームの販売プロセスの効率化と意思決定の改善をサポートする。主な機能やライセンス料金を詳しく解説する。

[Griffin LaFleur，TechTarget]

　Microsoftの「Copilot for Sales」は、販売業務のために設計されたAIを搭載したアシスタントだ。日常的なタスクを自動化し、顧客に関する実用性のある洞察を提供し、販売プロセスの効率化と意思決定の改善をサポートする。CRMシステムと統合されており、営業担当者が管理業務ではなく、取引の成立に集中できるようになるという。

　主な機能やライセンス料金を詳しく解説する。

Copilot for Salesとは何か？

　2023年初頭、Microsoftは初期段階のバーチャルアシスタントである「Cortana」に代わるチャットbotとして、「Copilot」の最初のバージョンをリリースした。Cortanaは検索エンジンの「Microsoft Bing」（以下、Bing）を使って、リマインダーの設定や基本的な質問への回答をはじめとするユーザーのための単純なタスクを実行した。その後、Microsoftは、Bingと「Microsoft Edge」への組み込み機能として、「Prometheus AI」のモデルに基づいてCopilotを構築した。

　アプリの導入と機能の拡大が進むにつれ、Microsoftは、営業支援をはじめとして企業内の特定の業務をサポートする機会を見出した。そして、2024年2月にCopilot for Salesをリリースし（注3）、営業チームが日常的に使用する生産性アプリに本ツールを導入した。

　Copilot for Salesは、営業チームの複雑な活動を支援するために設計されたインテリジェントアシスタントだ。このツールは、「Microsoft 365」のアプリや「Microsoft Dynamics 365」「Salesforce」などのCRMサービスとネイティブに統合され、営業担当者の日常業務を支援する。例えば、データ入力を自動化したり、顧客とのやり取りを要約したり、生産性を高めるためのリアルタイムな提案をしたりできる。本ツールの活用により、営業担当者は管理業務に費やす時間を削減し、代わりに顧客との関係を構築して取引を成立させる活動に集中できるようになる。

　Microsoftは、見込み客の開拓から商談成立まで、営業パイプライン全体でチームを支援するためにCopilot for Salesを設計した。このツールは、AIモデルを使用して、電子メールや会議、その他のCRMデータなどの膨大な量の顧客データを分析し、洞察を抽出して次のステップを提案する。バーチャルアシスタントの役割を果たし、過去のデータや顧客感情、以前のやりとりに基づいて営業担当者に対して個別の提案をする。

　チームリーダーとしては、営業パイプラインの可視性が向上し、予測が改善され、より正確な意思決定が可能になる。Copilot for Salesは、顧客とのやりとりにおいて最も効果的な次の一手を推奨し、営業担当者が機会を逃さないようにする。

Copilot for Salesは何ができるのか

　Copilot for Salesは、生成AIを使用してタスクを自動化し、リアルタイムの洞察を生成する。Microsoft 365スイートのCRMシステムや生産性向上ツールと統合できるため、営業チームが管理業務ではなく、案件の成約や顧客との関係構築などの価値の高い活動に集中できるよう支援する。以下の機能は、営業チームをサポートするものだ。

コンテンツ制作

　Copilot for Salesは、営業担当者が電子メールの下書きや通話の要約、フォローアップテンプレートなどのコンテンツを作成するのに役立つ。顧客データと過去のやりとりを分析し、進行中の会話のトーンやコンテキストを反映した個別の電子メールを作成できるためだ。この機能により、顧客ごとの個別対応を維持しながら、カスタマイズされたコミュニケーションの作成にかかる時間を節約できる。

次のステップに関する提案

　本ツールは、次の最適なアクションを提案できる。Copilotは進行中の案件を分析し、効果的な次のステップに関する洞察を提供する。その中には、フォローアップミーティングの設定や特定の資料の送信、CRMを活用した商談の進め方などに関する洞察が含まれている。AIモデルは、過去に成功した営業活動をもとに学習して、これらの提案を行う。

通話の分析と要約

　営業電話には多くの情報が含まれているが、手作業でメモを取ると詳細な情報を見逃してしまう場合がある。Copilotは、重要なポイントや顧客の感情を抽出して通話の要約を作成し、通話の中で議論された重要なトピックを分析して、通話後にフォローアップするための情報を営業チームに提供する。

売上予測

　CopilotはCRMデータと統合できるため、より正確な売上予測にも役立つ。Copilotは、過去のデータや現在のパイプラインの傾向、顧客の行動を評価し、営業リーダーが十分な情報に基づいた意思決定を行えるように実用的なインサイトを作成する。この機能は、営業チームが戦略を調整して目標をより効率的に達成するためにも役立つ。

CRMの自動アップデート

　CRMシステムへの手作業によるデータ入力には時間がかかる場合がある。Copilotは、このプロセスを自動化し、CRM内のやりとりをログに記録し、記録を更新し、不足している情報や古い情報を特定する。このような自動更新により、営業チームはCRMデータが最新の状態であるとの信頼を得ることができ、営業パイプラインをより明確に把握できるようになる。

顧客インサイト

　Copilotは、顧客とのやりとりや顧客の行動、嗜好を分析し、営業担当者が購入者の潜在的なニーズや問題点をより適切に理解し、それに合ったコミュニケーションができるように支援する。この機能により、営業チームは価値の高いリードを優先し、成功の可能性が最も高い場所にリソースを集中させられる。

Copilot for Salesのライセンス

　Microsoftは、既存顧客と新規導入者の両方に対応する柔軟な価格モデルを提供している。

既存の顧客

　Dynamics 365やMicrosoft 365などのMicrosoft製品をすでに使用している企業は（注10）、Copilotを現在のサブスクリプションプラン内における統合ツールとして導入できる。この場合、導入は容易だ。

　既存のMicrosoft 365 Copilotユーザーは、ユーザー1人当たり月額20ドル（年間契約）を追加で支払うことで、Copilot for Salesライセンスを追加できる。既に「Dynamics 365 Sales Premiumサブスクリプション」を持つ顧客は、Copilot for Salesを追加するために、ユーザー1人当たり月額30ドルを支払うこととなる。

　新規顧客 Microsoft以外のユーザーは、迅速な導入と統合をサポートするライセンスパッケージを検討でき、これにより幅広い企業が利用しやすくなっている。さらに、Microsoftはユーザー単位の課金オプションを提供しており、組織は実際にCopilot for Salesを使用するユーザー数分のみ料金を支払う方式だ。

　ただし、新規顧客はCopilot for Salesを購入するために、Microsoft 365または「Office 365」スイートのいずれかのバージョンの製品ライセンスを必要とする。年間契約を結ぶことで、新規顧客はユーザー1人当たり月額50ドルでこのツールを利用できる。

　最終的に、Copilot for Salesは既存のMicrosoftサブスクリプションへのアドオンであり、アクセスを得るためにはMicrosoft製品の購入が必要だ。