2024年11月11日、Zendeskが提供する顧客および従業員向けのエクスペリエンスツールの料金プランに「動的価格設定」という選択肢が追加された。
Zendeskの動的価格設定は、顧客や従業員からの問い合わせを解決した数に基づいて料金が算出される成果ベースの料金プランとは異なる。動的価格設定により、顧客は席数に基づくZendeskの契約を変更することなく、AIエージェントに支出を振り分けられるようになる。どのようなメリットがあるのか。
生成AI“高スギ問題”の処方箋となるか? 「動的価格設定」とは
Zendeskの広報担当者によると、顧客は、動的価格設定と成果ベースの価格設定のどちらか一方を選ばなければならないわけではないとのことだ。これらの補完的な料金プランの目的は、顧客がビジネスのワークフロー内でAIエージェントを試験的に導入できるようにするところにある。今後、人間とbotの最適な組み合わせを把握できるようにしているのだ。
AIに関連する料金プランは、多くのCXベンダーにとって課題だ。MicrosoftやAWS、Googleといったクラウドの大手企業を除き、大半のベンダーは生成AIのための大規模言語モデル(LLM)を持っていない。そのため、他社のLLMを活用するコストを顧客に転嫁しつつ、米国のブラックフライデーの販売期間中のように、小売業者が需要に応じてスケールアップやスケールダウンできる仕組みを提供する必要がある。
Salesforceは、Zendeskに類似したコンタクトセンター向けの料金プランを採用しており、Agentforceを1会話当たり2ドルで提供している。
調査企業であるConstellation Researchのリズ・ミラー氏のようなアナリストは、カスタマーサービスにおけるAI botの料金プランが依然として不明確だと指摘している。顧客とベンダーの双方が、人間のエージェントと比較した場合に最終的にどれだけのコストが発生するのかを正確に把握できていない状況だ。
Zendeskの顧客は、AIと成果ベースの価格設定について議論した
2024年10月にニューヨーク市で開催されたZendeskのAIサミットでは、同社の成果ベースの価格設定について顧客が学ぶ機会があった。このアイデアに熱意を示す人もいれば、反応が控えめな人もいた。例えば、カスタマーサービスのためのAIを導入する初期段階にある顧客は「料金プランがどのようなものであろうと、自社の年間のIT予算の範囲を超えない限り気にしない」と述べた。
中規模の消費者向け企業で事業開発およびカスタマーサービスのディレクターを務めるZendeskのユーザーは、次のように述べた。
「どのような料金プランが採用されるとしても、サービスからもたらされる利益に見合った価格であれば問題ない。一律の料金プランであろうと、チケットを消費していくプランであろうと、一定以上の額を請求されることに変わりはない。価値を感じなければ、使わなくなるだけだ」
従来のインタラクティブ型の音声応答(IVR)電話システムは、AIによって課題を解決できる製品の一例である。ZendeskのCTO(最高技術責任者)であるエイドリアン・マクダーモット氏は、Zendeskが提携しているベンダーの1社であるPolyAIが、従来のルールベースのIVRを生成AIを活用した音声アシスタントに置き換えることで、カスタマーサービス組織を支援できると確信している。このAIアシスタントは、1年以内の問題解決を期待されている。
「重要なのは、支援できる内容を尋ねてユーザーの意図を抽出し、その後、音声botがバックエンドで大量のデータを参照しながら対話を進めていくことだ」(マクダーモット氏)
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