輸送管理システム(TMS)の基本と選定ポイント 輸送ライフサイクルを管理しよう
輸送管理システム(TMS)の必須機能には、リアルタイムの追跡やルート最適化、輸送企業管理、積荷計画、車両管理、自動請求および請求書発行、分析ツールがある。各機能の詳細を解説する。
輸送管理システム(TMS)は、サプライチェーンマネジメント(SCM)において不可欠な存在であり、ルート最適化や車両追跡、受発注管理などの輸送に関わる全ての領域を処理する。サプライチェーンリーダーがTMSを選定する際は、ソフトウェアが必要な機能を備えていることを確認する必要がある。
企業が輸送を成功させるためにTMSが役立つが、特定の組織に最適なTMSを選ぶ際には統合機能についても考慮する必要がある。TMSに必要な機能を探っていこう。
輸送ライフサイクルを管理するTMS
TMSとは、サプライチェーンにおける商品の動きを追跡して管理するプラットフォームだ。TMSは物流を最適化し、SCMやERP、倉庫管理システムなどの他の管理システムと物流の動きを共有する。他のソフトウェアとデータを共有することで、商品が可能な限り効率的に輸送され、全ての関係者が最新の情報を保有できるようになる。
TMSは、次のような領域を含めて商品の輸送ライフサイクルを管理する。
- 輸送能力の管理
- 出荷計画とスケジュールの策定
- 商品の配送準備
- 適切な輸送業者の選択
- 最適な輸送ルートの特定
- 配送状況の追跡
- 請求や契約などの注文に関する財務管理
- 輸送業務のパフォーマンス評価
TMSは組織が配送プロセスを合理化し、車両管理を向上させ、サプライチェーンの効率を改善し、SCMのためのシステム間の調整を改善するのに役立つ。これらの利点は、運用コストや労働コスト、管理コストの削減、顧客満足度の向上、より適切な意思決定につながるだろう。
TMSに求められる7つの機能
TMSの導入前に幾つかの重要なツールを含んでいることを確認すべきだ。
1.リアルタイムの追跡
優れた輸送管理のためには、貨物の場所を常に可視化する必要がある。そのため、TMSには追跡の機能が含まれているべきだ。
この技術は、車両に搭載されたテレマティクス装置をはじめとしてさまざまな形態で利用可能だ。テレマティクス装置は車両の位置を監視し、そのデータをリアルタイムでTMSに送信する。
テレマティクス装置は商品の出荷にも役立つ。作業員は商品のバーコードやRFIDタグをスキャンし、そのデータを自動的にTMSにアップロードできる。これによってユーザーは商品が施設を出発した時刻や現在の位置、目的地への推定到着時刻を追跡できる。
より高度な機能には、イベント管理ツールと連携する追跡システムが含まれる。例えば、運転手が渋滞に遭遇した場合、これらのツールはTMSのユーザーに通知し、遅延を避けるための対策を取れるよう支援する。
リアルタイムの追跡は、消費者に出荷に関する最新情報を提供することで顧客サービスを向上させ、従業員がスケジュール管理のプロセスを改善するためにも役立つ。
2.ルートの最適化
交通パターンや道路状況、天候、車両の積載量、燃料消費量、配送時間と距離、その他のデータを分析して最適なルートを計算できるTMSを探すべきだ。
ルート最適化のための技術は、運用コストや燃料消費量の削減などに役立つ。
3.輸送企業の管理
輸送企業との連携は、輸送管理の重要な側面であり、組織が成長するにつれて、そのプロセスはより複雑になる可能性がある。TMSは、このプロセスを簡素化するのに役立つさまざまな管理機能を備えているべきだ。
例えば、システムを活用してユーザーは輸送企業のプロファイルリストを作成できる。プロファイル情報には輸送オプションや料金、パフォーマンス指標が含まれる。一部の管理ツールでは、ユーザーが料金を交渉し、契約の詳細を設定し、システム内で車両の容量を予約できる。
これらの輸送企業を管理する機能は、ユーザーがどの輸送企業が自社のニーズを満たすのかを特定するのに役立ち、輸送コストの削減や輸送企業とのパートナーシップの改善につながる。
4.積荷計画
多くの企業では、急な配送や製品不足が潜在的な問題を引き起こすため、積荷計画の柔軟性を重視している。積荷計画に関する機能を備えたTMSは、このような問題を軽減するのに役立つ。
TMSは、トラック内の利用可能なスペースの量を分析し、重量とサイズに基づいてそのスペースに収まる製品の量を計算し、利用可能なリソースを最大限に活用することで積荷計画のプロセスの大部分を自動化する。システムによっては、これらのデータを視覚化し、ユーザーが手動で積荷計画を立てられるようにするものもある。
自動化された積荷計画は、車両能力を最大化し、より効率的に積荷を配分し、オペレーションコストを削減し、配送スピードを向上させるのに役立つ。
5.車両管理
リアルタイムの追跡およびルート最適化、積荷計画は車両管理の一部だが、車両管理はこれらの機能を超えて広がっている。例えば、一部の車両管理ツールは各トラックの内部構造に接続して、燃料消費や部品の状態などの指標を追跡する。また、特定の部品が点検を必要とする際にユーザーにアラートを送信したり、メンテナンスの予約を自動的にスケジュールに登録したりする。
高度な車両管理ツールは、燃料消費を削減する機会を特定し、車両の交換時期を提案するなどの機能を備えている。
6.自動請求と請求書発行
輸送ネットワークでは、顧客や従業員への請求、運送業者や販売業者への請求書発行などの取引が必要で、財務が複雑になることが多い。支払いの頻度が高い場合、遅延が発生するリスクもある。
自動請求および請求書発行機能を備えたTMSでは、データ入力を自動化し、請求書を自動的に送信できる。これにより、事務作業が削減され、過剰請求などのエラーも減らせる。
一部のTMSには、運送業者の契約書をデジタル化したり、定型契約書を作成したりできるドキュメント管理機能や決済機能も備えている。これらの機能は、管理業務を効率化し、会社の財務管理をより組織的にするのに役立つ。
7.分析
分析を活用すれば、輸送パフォーマンスを測定・評価し、改善につなげられる。TMSの分析機能とレポート機能により、配送率、運送業者の効率、燃料消費量などのKPIを設定できる。
分析ツールは、傾向や改善の余地がある領域を特定するのにも役立つ。さらに、TMSはグラフやレポートなどのデータを視覚化する機能を提供しており、それにより、TMSユーザーは情報に基づいた適切な運用上の意思決定をできるようになる。
TMSを選択するための3つのヒント
自社に適したTMSを選ぶ際、幾つかの重要なポイントを押さえる必要がある。以下にそのガイドラインを紹介する。
1.適切なプラットフォームタイプを選択する
TMSには、オンプレミスの既製製品、クラウドベースのマネージドサービス、カスタム構築ソフトウェアといった選択肢がある。
オンプレミスの既製製品はカスタマイズを必要としない組織に最適だ。このタイプのTMSは通常、定期的なアップデートがなく、実装プロセスもシンプルだ。
クラウドベースのマネージドサービスでは、企業は導入料金とサブスクリプション料金を支払う必要があるが、システムのアップグレードやメンテナンスはプロバイダーが実施する。
カスタム構築ソフトウェアでは、企業は社内のITリソースを使ってシステムを構築、維持する必要がある。コストは高いが、複雑な業務に対応する高度なカスタマイズが可能で、大企業に適している場合がある。
2.会社の規模を考慮する
サプライチェーンのリーダーやソフトウェア選定チームは、自社の規模や業務の複雑さを考慮すべきだ。小規模企業の場合、ルート最適化ツールやリアルタイム追跡ツールだけで十分な場合もある。
また、柔軟性と拡張性も重要な要素だ。急成長中の企業には、組織規模に応じて拡張可能なTMSが必要だ。
3.潜在的な統合を検討する
TMSは、他のシステムとデータを共有する場合に最も有効だ。新しいTMSは、既存のシステムや将来導入するツールとも統合可能である必要がある。
TMSが自社の倉庫管理システムやERP、SCMシステム、さらにはスケジュール、発注、出荷、顧客管理ソフトウェアとどのように統合できるかを検討すべきだ。
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