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情シスが「AIエージェント」に持つ“3つの懸念”とは? 【調査】

新規技術の導入に当たっては期待だけでなく懸念もつきものだ。特に自律的に振る舞う「AIエージェント」に関しては、これまでよりも多くの課題が出てきそうだ。調査から判明した、情シスがAIエージェント利用に感じている懸念点のトップ3とは。

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 UiPathは2025年2月6日(現地時間)、IT部門の経営幹部を対象にした「エージェンティックAI」(Agentic AI)に関する調査結果をまとめたレポート「UiPath 2025 Agentic AI Research Report」(2025年エージェンティックAIレポート)を発表した。

「AIエージェント」に抱く“3つの懸念”とは。

 UiPathによると、エージェンティックAIとはバズワード化した「AIエージェント」が実現する自律的なシステムを指す。AIエージェントには現在、業務効率化や業務自動化の実現などさまざまな期待や不安が集まっているが、IT部門が持つ懸念とは何か。同調査から浮かび上がった懸念点のトップ3を紹介する。

 UiPathによる調査レポートは、売上高10億ドル以上の米企業で働くIT部門の経営幹部252人を対象として2024年10月に実施された。回答者全員がAIや業務自動化に「精通している」と回答しており、IT部門のバイスプレジデントやディレクタークラスの役職に就いている。調査レポートでは、調査結果に加えて特にAIや業務自動化分野に特に精通しているIT部門のシニアリーダー8人へのインタビューによる質的分析も実施している。

 UiPathはエージェンティックAIを、AI技術やAIモデル、アプローチを組み合わせて、データを分析して目標や目的を設定し、その達成のために行動する自律型AIエージェントシステムと定義している。AIエージェントが環境を認識し、情報を処理し、特定の目標や目的を達成するために自律的または半自律的に動作する。対象のドメインで人間のような意思決定や問題解決が実施できるように設計されている。

 今回の調査結果によると、回答者の37%が「エージェンティックAIを既に使用している」と答え、93%が「エージェンティックAI活用への投資に極めて高い関心または高い関心」を示している。

 回答者の90%は「エージェンティックAIによってビジネスプロセスが改善する」と考えており、77%が「今年中にエージェンティックAIに投資する準備ができている」と回答していた。

 エージェンティックAIの企業にとっての利点は何か。「ワークフロー管理の改善」(58%)、「アプリケーション同士の統合性向上」(53%)、「複雑なワークフローの自動化」(52%)が挙がった。


エージェンティックAIをビジネスで利用するメリット(出典:「UiPath 2025 Agentic AI Research Report」)

 これに対し、既存のAIツールについては、回答者の87%が「複数のAIテクノロジー間の互換性が組織にとって必要不可欠、または重要」と答えており、異なるビジネスアプリケーションとの統合性の欠如が既存のAIツールの重大な制限事項になっていることが分かった。

 特にさまざまなシステムにまたがる複雑なワークフローに対処する場合、企業はAIトランスフォーメーションを推進する上で課題に直面している。UiPathは「大半の企業で、本来期待される生産性向上がまだ実現しておらず、最も重要なビジネスプロセスにおいてはAIが信用されていない」と指摘する。

 同調査では、エージェンティックAIに対する最大の懸念事項として「ITセキュリティの問題」(56%)、「既存システムとの統合」(35%)が、「導入コスト」(37%)と並んで挙げられた。


エージェンティックAIを利用する懸念(出典:「UiPath 2025 Agentic AI Research Report」)

 エージェンティックAIのワークフローを効果的に導入するために最も重要な機能は何かという質問に対して最も多かった答えは「安全性とプライバシー」で、次に「既存システムとのシームレスな統合」が続いた。IT部門の経営幹部は、ガバナンスが有効で、安全性が高く、信頼できるものであれば、自律型エージェントにビジネス上の価値があると考えているとUiPathは分析している。

 ITリーダーがエージェントに対して抱いている安全性、プライバシー、倫理、規制上の懸念を払拭するためには、自動化によるオーケストレーションが必要不可欠となる。

 調査結果の総評として、UiPath夏目 健氏(プロダクトマーケティング部 部長)は、「エージェンティックAIは、より大規模で複雑なビジネスプロセスの自動化能力を大幅に拡大し、強化する画期的なアプローチだ。エージェンティックAIが有意義な影響をもたらすために、組織はエンタープライズグレードのガバナンスとセキュリティの中で、ロボットやエージェント、従業員、システム全体にわたって、インテリジェントに計画を立てて行動を同期化するために必要な基盤をエージェントに提供する必要がある」と述べた。

 企業が持つ懸念については、「AIシステムがより自律性を高めるにつれ、企業は、予期せぬ結果を回避し、AI主導の行動が倫理的かつコンプライアンスや法的基準に沿うことを保証するために、自律性と人間による監督のバランスを取らなければならない。エージェンティックオートメーションの新時代は、オーケストレーション、ガバナンス、そしてエージェンティックAIによってもたらされる価値に関する課題に取り組むことになるだろう」と指摘した。

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