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メールの文面を紙で承認……最新ツールを入れた企業にIT記者がもの申す

先日、あるセキュリティ関連のソリューションを導入した企業を取材した。最新のソリューションを導入してさぞかし達成感があるのだろうと思いきや、その企業のIT推進者は「とにかく歯がゆい」と吐露する。その理由を聞くと、「あまりにもアナログ」な業務の実態に驚きを禁じ得なかった。

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 最近日常が慌ただしい。長男と次男がサッカーチームに入っている影響だ。

 土日は練習や試合でほぼつぶれてしまう。特に次男の代で学年代表なんて引き受けたものだから、当番の差配や遠征の配車調整、お金の出し入れなどやることがめじろ押し。

 年度の入れ替わりの時期でもあるため、新しくチームに参加する子どもや継続、退部の手続きがひっきりなしに続く。とはいえ、子どものためでもあるので、やむを得ない。


子供のサッカーの様子

 ただ、どうしても改善したいのが紙の扱いだ。

 手続きは全て紙である。団体への入部や継続、保険契約、ユニフォームや練習着の発注など、あらゆる手続きが紙を中心としたアナログな処理である。

 せめてデジタル化できるところは何とかしたい。

メールの文面を紙で承認? 最新セキュリティツールを入れた企業の裏の顔

 先日、あるセキュリティ関連のソリューションを導入した企業を取材した。高度化する外部脅威への対策として、インターネットやSaaSを安全に利用するために仮想ブラウザを導入したという。最新のソリューションを導入してさぞかし達成感があるのだろうと思いきや、その企業のIT推進者は「とにかく歯がゆい」と吐露する。その理由を聞くと、「あまりにもアナログ」な業務の実態に驚きを禁じ得なかった。

 仮想ブラウザはクライアントPCだけでなく、サーバのリソースも必要になる。その企業は、数千万円規模の大掛かりな投資をしたと言っていた。役員の方は「安全な環境づくりと生産性を両立させた」と胸を張る。ただ、導入効果を聞いてみると、セキュリティ対策を強化しているという対外的なアピールとしては有効だが、生産性という観点ではあまり歯切れが良くない印象だった。

 役員が退席した後、「最近は標的型メールなど巧妙な手口も増えていますけど、メールも仮想ブラウザ経由で利用しているのですか」と現場担当者に聞いたところ、「いや、メールはほとんど使えてないんです」とのこと。よくよく聞くと、個人PCからはメールが送れず、送る場合は文面を作成して紙で上長の許可を得て、外部発信専用PCから送信する手順らしい。「電話が外部との橋渡しをするコミュニケーション手段」だそうだ。

 「投資の優先順位は合っているのかしら……」という私の顔を察してか「とにかく歯がゆい」と担当者は吐露する。

  多くの企業が生成AIで生産性を高めようと躍起になる中、企業間で大きな温度差を感じずにはいられなかった。

 当然、役員以外はスマートフォンが貸与されておらず、現場は、IT推進担当者も含めてアナログでの業務で、そのための改善のアナログな方法を余儀なくされているわけだ。

 各企業や業界によって考え方や進め方が違うことは重々承知しているが、さすがに厳しいのではと感じた。数年後、その企業の業績がどうなっているのか、ウォッチ対象リストに加えておこうと胸に刻み込んだ。

フロントのデジタル化は成功、発注処理は悩むところ

  そんな歯がゆい状況の企業を目の当たりにして、自分のサッカーチームの手続きぐらいはデジタル化しようと、「Google フォーム」で新規や継続手続きに必要な情報を入力できるようにした。また練習着の発注も「Google フォーム」でデジタル化し、スマートフォンだけでエントリーできるようにした。

 親御さんからは大変好評で、誰かがやってくれるのを待っていたみたい。こんなの1時間もかからないんだけどな。

 でも練習着を発注するために外注先に渡す帳票は「Microsoft Excel」で、その固定された帳票でないと受け付けてくれないという。業者特有の番号管理が連番で振られているらしく、長年の慣習を変えたくないようだった。

 RPA(Robotic Process Automation)使って自動的に書き込みしたら怒られるかしら。説得しなければいけないスタークホルダーが他にもいそうな気がする。


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