Copilot、Gemini、Zoom AI Companion……会議用AIアシスタント8選
現在の会議用のAIアシスタントには、従業員の生産性や会議のワークフローの改善に寄与する機能が搭載されている。本記事で、自社に最適なAIツールを確認してほしい。
多くのビジネスパーソンはカレンダーアプリで週ごとの予定を確認する際、会議の予定が詰まっている中で、生産的な仕事に集中する時間をどのように確保すべきか、会議後のタスクをどのように管理すべきか、また、会議に遅れたり、そもそも出席できなかったりした場合に重要な議論や決定を見逃してしまうのではないかという不安を感じているのだ。
企業がこれらの懸念を解消し、従業員の体験における課題に対応しようとする中で、会議のワークフローや成果を向上させるために検討すべきテクノロジーがある。それが会議用のAIアシスタントだ。
会議用のAIアシスタントと一口に言っても、「Zoom」や「Microsoft Teams」(以下、Teams)に内蔵されているものもあれば、単体サービスとして提供されるものもある。本稿では、8つのサービスについて強みや特徴を紹介する。
AI搭載型のミーティングアシスタントの人気の高まり
調査企業であるMetrigyが2024年の秋に実施したグローバル調査「Employee Engagement Optimization 2025」(2025年における従業員のエンゲージメントの最適化)によると、調査対象となった400社のうち45.8%は、職場における連携を支援する製品群の一部としてAI搭載型のバーチャルアシスタントを既に導入している。
同調査によれば、20.8%の企業は2025年の終わりまでに導入を計画しており、23%の企業は導入の可能性を評価している状況だ。AI搭載型のバーチャルアシスタントのライセンスを持つ従業員の割合も増加している。平均すると、現在従業員の49.2%がAI搭載型のバーチャルアシスタントのライセンスを所有しており、2025年末までに、その割合は65.7%に達すると予測されている。
AI搭載型のミーティングアシスタントへの期待
AI搭載型のミーティングアシスタントは、会議の前後や会議中にさまざまな役割を果たす。基本的なものとして、機械学習や自動化といった高度な機能を利用し、スケジュールの調整や再調整、会議の文字起こしや翻訳、メモの作成、会議の要約、レポートの作成などの作業を代行する。AIのサポートにより、参加者は進行中の議論やプレゼンテーションに集中でき、聞き逃した発言を確認するために録音を再生する時間を節約できる。その結果、ミーティングアシスタントは業務の効率化や生産性の向上を促し、個人やチームがより価値のある会議を実現できるようになる。同時に、会議自体の体験をより快適なものにすることも可能だ。
Metrigyの前述の調査において、回答者が重要度の高い順にランク付けしたAI搭載型のミーティングアシスタントの主な用途は次の通りだ。
- 会議に関連するデータの照会
- 会議の要約
- タスク自動割り当て
- 会議の文字起こし
- 音声やビデオの品質向上
- カレンダーにおける自動スケジューリング
- 言語の翻訳
- 従業員の代理として会議に参加するパーソナルアシスタント
CiscoやGoogle、Microsoft、Zoom Communicationsといったミーティングアプリの提供企業に加え、認知度を高めようとする独立系ベンダーにとっても、AI搭載型のミーティングアシスタントの強化は優先課題となっている。多くの企業が生成AIを利用し、ミーティングアシスタントに新たな機能を追加し、さらに高度な能力を持たせている。
ITリーダーは、基本的な機能にとどまらず、次のような高度な機能や特性を備えているかどうかを基準に、AI搭載型のミーティングアシスタントを評価すべきだ。
- 進行中の会議のキャッチアップ。AIアシスタントは、会議に遅れて参加した人に向けて最新の要約を提供する
- 会議への代理出席。参加者の代わりにAIアシスタントが会議に出席し、意見を共有し、終了後に要約を提供する
- 会議の要約作成。AIアシスタントがキーワードやアクションアイテムを抽出し、参加者に電子メールやチームチャットで要約を配信する
- 感情分析。AIアシスタントが会議の文字起こしを分析し、ネガティブな発言や問題のある内容を検出。必要に応じて、マネジャーにアラートを送信し、最適な対応策を提案する。AIアシスタントが自然言語による質問に応じて回答を提供。例えば、「私のチームにとって重要な3つのポイントを教えて」などと質問できる
- タスク作成。AIアシスタントが会議の要約を基に次のアクションを生成し、プロジェクト管理アプリでタスクを作成および整理し、担当者への割り当てや進捗(しんちょく)管理を支援する
AIアシスタントがコラボレーションを促進する方法
AI搭載型のミーティングアシスタントのもう一つの利点は、従業員同士のコラボレーションを促進し、強化することだ。この点においても、AIアシスタントは会議のあらゆる段階で重要な役割を果たす。
例えば、チームは自動スケジューリング機能の利用により、単発の会議および定期的な会議において、参加者が最大になる時間帯を見つけられる。また、前述した機能により、会議に参加できなかったメンバーも自分の意見を伝えることが可能だ。さらに、決定事項や必要なアクションの要約を受け取ることで、チームの進捗から取り残されることなく状況を把握できる。
会議中、AIアシスタントは翻訳や字幕をリアルタイムで提供し、非ネイティブスピーカーを含む全ての参加者が議論を適切に理解し、発言しやすくなるよう支援する。これにより、単に話の展開を追うだけでなく、積極的にコラボレーションに参加できるようになる。
さらに、AIアシスタントはチームの過去の活動を分析し、新たに協力すべき課題を提案することも可能だ。このような提案によって、チームメンバーは目標を見失うことなく、プロジェクトの期限を守れるようになる。また、一部のAIアシスタントはブレインストーミングモードを備えている。特にビジュアルホワイトボードをサポートする会議アプリの場合、より効果的なコラボレーションを促進できる。
会議後、AIアシスタントは録音データを分析し、継続的に議論されるトピックやトレンドを抽出する。チームマネジャーはこれらのインサイトを利用して戦略的な計画を立てたり、さらなるコラボレーションのためにAIアシスタントを使ってチームミーティングを調整したりすることが可能だ。
ビジネスワークフローにAIアシスタントを組み込む
投資から最大の効果を得るために、ITリーダーは従業員に対し、AI搭載型のミーティングアシスタントを日々のワークフローにどのように組み込むかを考えるよう促す必要がある。事前にこの点を考慮することで、業務の効率化と生産性向上が期待できる。
AIアシスタントはアクションアイテムを収集し、製品開発マネジャーがそれをプロジェクト管理アプリケーション内で割り当て、進捗を追跡することで、プロジェクトのスケジュールを維持できる。また、カスタマーサポート担当者は、会議アシスタントが自動生成した要約を顧客記録に更新し、次の対応策を作成したり、フォローアップ会議を自動でスケジュールしたりすることも可能だ。
大半の企業が複数の会議アシスタントを利用している。
企業のITリーダーは、AIアシスタントの基本的な機能を理解しておくべきだ。従業員のニーズに最適な機能を備えたツールを選定し、会議に関連する業務負担をさらに軽減するためには、複数の選択肢を比較検討する必要がある。
この点に関して、職場のコラボレーションを支援するコンサルティング企業のMetrigyの「Employee Engagement Optimization 2025」調査に参加した企業の半数強が、複数の会議アプリを利用していると回答した。また、そのうちの約20%は、主に使用している会議アプリに必要な機能が不足しているため、追加のアプリを導入している。
会議アシスタントに関する懸念
AIアシスタントは有用である一方で、懸念も伴う。Metrigyの調査によると、AIバーチャルアシスタントの使用を許可していない企業のうち、39.5%がセキュリティの懸念を理由に挙げ、26.3%はコンプライアンス管理が課題であると回答した。また、18.4%は、文字起こし、翻訳、会議要約の精度が不十分であるなど、技術の成熟度に疑問を持っている。
これらの課題に対処する最善の方法の一つは、AIの利用に関するガバナンス戦略を策定することだ。Metrigyが調査した企業の多くは、既にガバナンスポリシーを導入しているか、策定に向けて取り組んでいる。このようなポリシーには、AI生成コンテンツに対するデータプライバシー、セキュリティ、コンプライアンス管理の適用方法や、AIの出力の正確性を検証する仕組みが含まれることが多い。
2025年の会議用のAIアシスタント
TechTargetの編集チームとMetrigyは、会議用のAIアシスタントの市場調査を実施するにあたり、会議アプリを提供する統合型コミュニケーション(UC)プロバイダーと、独立系ベンダーの単体サービスという2つのセグメントに注目した。本調査では、市場を分析し、主要な選択肢を検討している。
ここで挙げる会議用のAIアシスタントは、基本的な機能は共通しているものの、特定の機能の提供方法に違いがある場合がある。あるAIアシスタントは会議の要約機能を独自の方式で処理するかもしれない。前述の通り、企業のリーダーは自社の従業員のニーズに最も適したソフトウェアを選定するため、比較検討をする必要がある。また、既存のソフトウェアとの適合性も重要な要素となる。既に会議ワークフローに深く統合されているCiscoやMicrosoftのアシスタントを選択する企業も少なくない。以下に、2025年に検討すべきAI会議アシスタントをアルファベット順で示す。
AudioCodes Meeting Insights
「AudioCodes Meeting Insights」は、会議の要約やアクションアイテムの抽出、検索可能な会議記録、話者識別機能付きのリアルタイム文字起こし、会議準備機能を提供する。Microsoft TeamsおよびZoom Meetingsと連携可能だ。料金プランは、Essentialプランが1ユーザー当たり月額6ドル、Proプランは1ユーザー当たり月額10ドルで利用できる。
Cisco Webex Assistant
「Cisco Webex Assistant」は、有料ライセンスに含まれる無料機能だ。主な機能として、会議の振り返りや要約、文字起こし、翻訳を提供する。メッセージの作成や編集、要約が可能であり、「Microsoft Outlook」「Copilot」、Teams、「Slack」などのサードパーティー製アプリと連携させることで会議の要約を共有できる。
Copilot in Teams
「Copilot in Teams」は、会議の振り返りや要約、文字起こし、翻訳、センチメント分析を提供する。メッセージの作成や編集、要約が可能で、アクションアイテムの追跡やインテリジェント検索にも対応する。料金プランは、「Microsoft 365 Copilot」が1ユーザー当たり月額4497円(年払いの場合)、または月額4722円(年間契約の月払いの場合)、「Copilot Pro」は1ユーザー当たり月額3200円で提供されている。無料版も利用可能だ。
Fireflies.ai
Fireflies.aiは、会議のメモや要約、文字起こし機能を提供する。会議メモや録音、文字起こしデータをコラボレーションアプリと自動的に同期する。ベンダーが提供する「Conversation Intelligence」スイートを通じて、話者やトピック、センチメントに関する分析も利用できる。料金プランは無料版の他、3つの有料プランがあり、いずれも年払いで契約した場合の月額料金は、1ユーザーあたり10ドル、19ドル、39ドルとなっている。
Gemini for Google Workspace
「Gemini for Google Workspace」は、以前はDuet AIとして知られ、会議のメモ作成、要約、文字起こし、翻訳(リアルタイムのライブキャプションを含む)、感情分析などの機能を提供する。メッセージの要約や修正、メールやドキュメント、メッセージの作成も支援する。背景画像の作成や会議ビデオへの透かし追加による機密情報の保護、会議の見栄え、照明、音声の強化も可能だ。なお、2025年1月から、Google Workspaceの全プランにGeminiのAI機能が追加料金なしで標準搭載されることが発表された。これに伴い、各プランの料金が約2ドル値上げされた。
Notta
「Notta」は、AIによる文字起こしや翻訳、会議アシスタント機能を提供するサービスで、2024年初頭にAirgramとの合併により機能が強化された。会議メモの生成と共有やプロンプトを活用した会議の洞察取得、カスタマイズ可能な会議要約の作成が可能だ。さらに、「Cisco Webex」や「Google Meet」、Teams、Zoomに自動参加し、自動文字起こしをする機能も備えている。
料金プランは、無料で利用できるフリープランの他、1ユーザー当たり月額1980円(年払いの場合は月額1185円)のプレミアムプラン、月額4180円(年払いの場合は月額2508円)のビジネスプランがある。エンタープライズプランも提供されているが、料金は要問い合わせ。
Otter.ai Meeting GenAI
Otter.ai Meeting GenAIは、会議の要約や文字起こし、チャットによる検索機能を提供する。メールの作成支援や、異なるプラットフォーム間での利用にも対応している。さらに、会議後の管理機能として「My Action Items」を備えており、使用する会議アプリに関係なく、従業員の会議全体からアクションアイテムを自動的に特定し、集中管理できる。料金プランは、Proプランが月額16.99ドル(年払いの場合は年間99.96ドル)、Businessプランが月額30ドル(年払いの場合は年間240ドル)となっている。
Zoom AI Companion 2.0
「Zoom AI Companion 2.0」は、AI Companionのサイドパネルを導入し、プロンプトの提案や回答の生成、会議の文脈を超えた情報検索、会議中に話題に上がった内容に基づいた追加の質問ができる機能を提供する。会議の要約から次のアクションを生成し、タスクを作成することも可能だ。
Zoomは、会議体験をカスタマイズするためのAI Companionアドオンも発表した。これにより、より精度の高い会議文字起こしを実現するための用語集の追加や、カスタム会議要約テンプレートの作成が可能になる。また、プレゼンテーションやコミュニケーションスキルを向上させるパーソナルコーチ機能も提供される。このAI Companionアドオンは2025年前半にリリース予定だ。
新機能は、従来の会議の振り返りや要約、文字起こし、翻訳、センチメント分析などの機能を拡張するものであり、TeamsやGoogle Meetの通話にも対応する。メッセージの作成や編集、要約、メール作成支援などの機能も備えている。Zoom AI Companionは有料ライセンスに含まれ無料で利用可能だ。「カスタムAI Companionアドオン」は1ユーザー当たり月額12ドルで提供される予定だ。
このリストに加えて、市場には他にも多くのAI会議アシスタントが存在する。企業は、これらの高度な会議ツールを十分に調査し、自社の従業員や業務フローに最適なものを選定する必要がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.