Google WorkspaceのGeminiカスタマイズ機能「Gem」で業務効率化を促進するコツとは
「Gemini」は「Google Workspace」に標準搭載された生成AIだ。そのカスタマイズ機能「Gem」を使えば、業務効率化を促進できる。G-genのウェビナーで解説されたGemini Gemの活用方法を紹介する。
「Google Workspace」に生成AI機能「Gemini」が標準搭載され、多くのユーザーが利用できるようになった。この新機能をより効果的に活用するためのカスタマイズ機能「Gem」について、Google関連サービスの導入支援で実績を持つG-genの荒井雄基氏(クラウドソリューション部カスタマーサクセス課)がウェビナーで解説した。
システムについてのFAQ対応を担うチャットbotやベテラン従業員として新入社員向けに業務の説明をするチャットbotなど、頻度の高い業務を効率化するAIを簡単に構築できるという。
Google Workspaceユーザーは追加料金なしでGeminiが使える
Googleが開発したAIモデル「Gemini」は、テキストや画像、コードなど、さまざまな種類の情報を理解し、アウトプットを生成する。Google Workspaceでは、Geminiアプリでの自然言語での対話、もしくはGoogle Workspaceアプリケーションに組み込まれた機能としてGeminiを利用できる。
2025年1月のGoogle Workspaceアップデートにより、アドオンライセンスなしでGemini機能が追加されることになった(ただし、プランの料金改定もある)。これにより、「Gmail」や「Google ドキュメント」「Google スプレッドシート」「Google スライド」「Google ドライブ」「Google Chat」のサイドパネルからGeminiを利用できる。
企業がGeminiの導入を検討する際、最も多く寄せられる懸念は情報セキュリティに関するものだ。「AIの業務利用は不安」「社内情報が漏えいしてしまうことはないのか」といった声に対し、荒井氏はこう説明する。
「Google Workspaceには、エンタープライズグレードのデータ保護機能が実装されています。送信されたデータはモデルのトレーニングに使用されず、人の目による審査もありません。Geminiとのやりとりは、既存のGoogle Workspaceコンテンツと同様に保護され、組織外に共有されることはありません。つまり企業でも安心してご利用いいただける環境が整っています」
AIを業務で利用する際の注意点として、荒井氏はハルシネーション(幻覚)の問題を指摘する。
「ハルシネーションとは、AIが事実に基づかない情報や実際には存在しない情報を生成してしまう現象です。Geminiは従来のモデルと比較して精度は向上していますが、やはりAIの回答は人間がしっかりと確認する必要があります」
これらの課題に対する認識を持ちつつ、実際の業務でどのように活用できるのか。その答えの一つが「Gem」というカスタマイズ機能の活用だ。
Gemとは、Geminiをカスタマイズできる機能
Gemは、Googleの生成AIチャットbotであるGemini Webアプリをカスタマイズするための機能だ。
Gemには大きく2つの使い方がある。一つは、Googleが用意した「プリメイドGem」の利用だ。「アイデア出しのプロ」「キャリアアドバイザー」「コーディングパートナー」「コピーライター」など、15種類のテンプレートが用意されている。特別な設定なしですぐに使え、業務効率化の第一歩として活用しやすい。
利用時は、Gemini Webアプリ画面の左メニュー下部にある「Gemマネージャー」をクリックする。すると画面右側がGemマネジャーの画面に切り替わり、幾つかのプリメイドGemが表示される。「もっと見る」をクリックすると、全部のプリメイドGemが表示される。その中から目的のGemを選び、あとはプロンプトを打ち込むだけで利用できる。
もう一つのGemの使い方が「カスタムGem」、つまりユーザーが独自にGemを作成する方法だ。カスタムGemを作成するには「Gemマネージャー」を開き、「Gemを作成」ボタンをクリックする。
そして次の4ステップで作成を進める。まず(1)Gemの名前を入力、次に(2)「カスタム指示」を入力する。(3)プロンプトを入力して出力内容を確認し、(4)保存して作成完了、となる。なお(3)は省略することも可能だ。
カスタムGemを作成するポイント
カスタムGemを作成する際、最も重要となるのが「カスタム指示」の設定だ。カスタム指示とは、ユーザーが設定する具体的な指示やガイドラインのことだ。適切な指示を設定することで、より精度の高い回答や、業務に即した出力が得られる。反復作業がある場合には、カスタム指示にそれを入力しておくことで、同じ指示を毎回入力する必要がなくなる。
カスタム指示の作成には、幾つかのアプローチがある。最も簡単な方法は、プリメイドGemを参考に作成することだ。Googleが用意したプリメイドGemには、それぞれの目的に最適化されたカスタム指示が設定されている。それらのGemをコピーしてカスタム指示を編集することで、既存の指示内容を土台としたカスタマイズが可能となる。
カスタム指示を一から考えて設定することも可能だ。Googleが公開している「カスタムGem作成のヒント」のページを参考にしながら、必要な指示を箇条書きで入力するとよい。しかし、初めてGemを作成するユーザーにとってはややハードルが高いかもしれない。
そこで、カスタム指示をGeminiに考えてもらう方法もある。Gemマネージャーの新規作成画面でカスタム指示をざっくりと入力した後、入力欄の下にある「Geminiを使用して指示を書き換える」ボタンをクリックする。するとGeminiが指示内容を分析し、より効果的な表現にしたり、必要な要素を追加したりしてくれる。
例えば「文章の校閲をします。“である”“だ”を、“です”“ます”に直してください」といった簡単な指示を入力するだけで、文体の統一、全体的なトーンなど、校閲に必要な詳細なカスタム指示をGeminiが作る。
これらを組み合わせる方法も有効だ。まずはプリメイドGemをコピーし、そのカスタム指示を参考にしながら自分なりの指示を作成し、その後Geminiに最適化を依頼する方法も考えられる。
業務効率化のためのGem作成事例
荒井氏はユースケースとして、実際の業務で活用できる具体的なGemの活用例を複数紹介した。
まずは「業務アドバイザーGem」というチャットbotだ。ベテラン従業員として新入社員向けに業務を解説し、専門用語を避けて分かりやすく説明をすることを目的とする。カスタム指示には、「あなたは○○業務に精通したベテラン職員です」「新入社員向けに業務を教えてください」「専門用語は避けてください」「回答に関連する資料がある場合は、Googleドライブの参考資料を提示してください」などと入力する。
このようなGemを作り、ユーザーが「見積書を作成したいので、参考となる資料はありますか」と質問を投げかける。すると、GemがGoogleドライブ内の関連資料を探索し、適切な資料へのリンクを提供する。
若手社員向けに、「報・連・相を整理するGem」も紹介された。「情報を、報告、連絡、相談の3つの段落で構成してください」「各段落内では、“実際に発生した出来事”“自分が考えたこと”“お客さまからの要望”を分けて書いてください」などとカスタム指示を設定してGemを作成する。若手社員は、上司への報告前にこのGemと壁打ちしておけば頭の中を整理できるというわけだ。
システムについてのFAQ対応を担う「テクニカルサポートGem」も活用頻度が高そうだ。「あなたはGoogle Workspaceのサポートエンジニアです」「Google Workspaceのテクニカルサポート対応をしてください」「質問者はあまりITスキルが高くないので、分かりやすく説明してください」「回答の際は、どのサイトを参照したかURLを提示してください」といったカスタム指示を入力してGemを作成する。これにより、生成AIにテクニカルサポートの肩代わりをしてもらえる。
荒井氏は最後に、Gemを活用した業務効率化に向けてさらなる可能性を示唆した。
「頻度の高い作業にGemを活用することで、大きな効率化が見込めます。今回ご紹介したユースケースを参考に、それぞれの業務に合わせたカスタマイズを検討してください。また、Geminiは日々進化を続けています。それに伴いGemの活用の幅も広がっていくでしょう。ぜひ積極的にGemを活用し、日々の業務効率化に取り組んでみてください」と締めくくった。
本記事は、株式会社G-genが2025年2月18日に主催したウェビナー『Gemini をカスタマイズ!?「Gems」で業務効率化!!』を編集部で再構成した。
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