一度決裂したGoogleのWiz買収 合意に至った背景とは
Googleはサイバーセキュリティを強化するためにWizを買収した。セキュリティに定評のあるGoogleがなぜこのような行動に出たのだろうか。
AlphabetはGoogleを通じて、2025年3月18日にWizを320億ドルで買収することに合意した。両社は2024年に230億ドルで取引することについて話し合っていたが、交渉が決裂した経緯がある。
一度決裂したGoogleのWiz買収 合意に至った背景とは
その背景にはクラウド環境の課題があるのだという。
主要な政府機関と企業で増加しているマルチクラウドへのニーズを取り入れる狙いが買収にはある。
AIの導入が急速に進み、企業はクラウドセキュリティを強化しなければならない。多数の企業や組織がマルチクラウド環境での運用を望む中で、今回の取引が成立した。Wizの製品は「Amazon Web Services」や「Microsoft Azure」「Oracle Cloud」などの主要なクラウドプラットフォームで利用されているからだ。
GoogleはWizの買収により、Google Cloudの顧客だけでなく、規模に関係なくあらゆる種類の組織にセキュリティソリューションを提供するプラットフォームを実現できると考えている。
Googleと親会社のAlphabetでCEOを務めるスンダー・ピチャイ氏は、2025年3月18日の電話会議で次のように述べた。
「世界中の政府のリーダーやCEOにとって、セキュリティは基本的な優先事項だ。現在は状況が変わりつつある。侵害のペースと影響は悪化している。AIは新たなリスクをもたらす一方で、新たな機会ももたらす。同時に、マルチクラウドとハイブリッドが主流になりつつある」(ピチャイ氏)
Google Cloudのトーマス・クリアン氏(CEO)は「このたびの合意により、顧客は強固なセキュリティを維持するトータルコストを削減できる(注1)。それはマルチクラウドだけでなく、オンプレミスでもだ」と述べた。
スタートアップ企業から大企業、政府機関まで幅広い組織がWizのセキュリティプラットフォームに依存する。同社のプラットフォームには、クラウドネイティブアプリケーションに対する保護が含まれており、開発ライフサイクル全体を通じてセキュリティを提供する目的で(注2)、セキュリティチームと開発チームの両方が同サービスを利用している。
MSとの競争で劣位に立っていたGoogle
調査企業Forrester Researchのアンドラス・チェール氏(バイスプレジデント兼プリンシパルアナリスト)によると、Googleは独自のCNAPP(Cloud Native Application Protection Platform:さまざまなクラウドセキュリティ機能の統合)のプラットフォーム開発に取り組んでいた。だが、Microsoftが2021年にCloudKnoxを買収して「Defender for Cloud」を開発したため、計画よりもさらに機能を拡大する必要に迫られていたという。
「CNAPPの開発を手掛ける独立系のプロバイダーは、機能面における優位性を保つための激しい競争に直面している。このたびのGoogleによる買収に加え、MicrosoftがCNAPPとアプリケーションのセキュリティに投資を続けていることを考慮すると、他のプロバイダーが成長を維持したり、実現したりするのは難しくなるだろう」(チェール氏)
出典:Google acquisition of Wiz driven by enterprise embrace of multicloud(Cybersecurity Dive)
注1:Google + Wiz: Strengthening Multicloud Security(Google Cloud Blog)
注2:Wiz to Join Google Cloud: Making Magic Together(Wiz)
© Industry Dive. All rights reserved.
関連記事
たったそれだけ? クラウドセキュリティのお寒い実態
広く普及したクラウドサービスには弱点がある。セキュリティ対策だ。サービス事業者に任せきりにできる部分はあるものの、ユーザー側の防御が不可欠だ。調査の結果、最低限の対策ができていない企業が残っていることが分かった。頻発するクラウドインシデントを防ぐ「だろう」運用と対策
クラウドでインシデントが起きると情シス担当者の評価に大きく影響します。今回はこうしたクラウドのインシデントを整理し、どのような対策ができるかについてお話しします。情シスの6割がクラウドサービスのセキュリティに不安 解決すべき課題は
セキュリティ評価プラットフォームを提供するアシュアードは、従業員数1000人以上を有する大手企業の情報システム部門に所属する300人を対象としたクラウドサービスのセキュリティ評価に関する調査を実施した。