新国立劇場がAzure移行 コスト35%削減に成功 どうやって?
JBCCは新国立劇場の情報システムとネットワークを「Microsoft Azure」へ移行し、セキュリティを強化するとともにシステムコストを35%削減した。クラウド移行コンサルやマネージドサービスを通じ業務の安定運用とIT負荷の軽減を実現している。
JBCCは2025年4月24日、新国立劇場運営財団(以下、新国立劇場)の情報システムおよび基幹ネットワーク基盤のクラウド移行およびセキュリティ強化を支援し、システムコストを35%削減したと発表した。移行先には「Microsoft Azure」を採用し、最新のクラウド脅威に対応するセキュリティ体制も構築している。
ハード更新、トラブル、インシデントリスクの悩み
新国立劇場では5年ごとのハードウェアの更改や頻発するシステムトラブル、そして限られたIT人材による運用負荷が大きな課題となっていた。こうした状況を受け、安定的かつ効率的なシステム運用を実現するためにクラウド移行を決断。導入後はクラウド基盤による安定性の向上に加え、従来のオンプレミス環境では困難であった災害時対応力も向上した。年1回の全館停電時も、クラウド基盤を通じて外部から業務継続できる。
セキュリティ面ではMicrosoft Azureにファイアウオールを構築し、エンドポイントにはJBCCが提供する「マネージドサービス for EPP Plus」を導入。加えてマルウェア対策として「Cortex」も採用し、多層的な防御体制を確立した。セキュリティインシデントの発生リスクが低減し、担当者の対応負荷も軽減している。
運用開始後は「クラウドコスト最適化サービス」により、利用状況に応じた月次レポートを通じて、常に適切なクラウドリソースの割り当てとコストコントロールを実施している。さらにJBCCの運用支援付きクラウドサービス「EcoOne」により、システム管理業務の大幅な省力化も実現した。定期的な人事異動がある組織体制において、ITの専門家による継続的なサポートは重要な支えとなっている。
今回の取り組みを通じて新国立劇場では過去には毎月のように発生していたサーバトラブルが激減し、IT管理者の業務負荷が軽減しているという。導入前はクラウド移行に対するコスト面の懸念があったものの、JBCCによるアセスメントの結果、想定よりも低コストであることが判明し、本格的な導入を後押しした。
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