誰もやりがちな“生成AIへの気遣い”が数十億の損害に……ってどういうこと?:829thLap
ChatGPTなどのAIチャットbotに対する丁寧なあいさつ。その何気ない「礼儀」が、実はサービス事業者に大きな負担を強いているという。なぜ、そんな深刻な問題になり得るのか。
最近は「ChatGPT」のようなAIチャットbotを利用する際、「こんにちは」や「お願いします」といったあいさつで会話を始め、質問への回答を得た後に「ありがとう」と返す。そんな礼儀正しい対応をするユーザーが増えているという。
だが、そんな「AIへの礼儀」が、事業者の大きな損失の原因になっている可能性があると「X」やメディアで話題になっている。なぜAIへのあいさつが問題なのか?
「自分はそんなことしていない」と思う人もいるかもしれないが、Tech系メディア「TechRadar」が掲載した記事によれば、2024年12月に実施された調査では、AIチャットbotを利用する米国のユーザーの67%が、そして英国のユーザーの71%が「please」(お願いします)や「thank you」(ありがとう)といった丁寧な言葉を使っているという。
これが一体どう問題なのか。この点について、Tech系ニュースサイト「Futurism」が2025年4月19日に公開した記事で解説された。
記事によれば、端を発したのはあるユーザーが「X」に投稿したポストだ。ユーザーがAIに「please」や「thank you」と言うことで、OpenAIはどれほどの電気代を失っているのだろうかという投稿に対し、OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏が「数千万ドルは使われているでしょう」と答えた。ただし、文末には「--you never know」(何とも分からないけど)と添えられていた。
Futurismの記事ではさらに、Microsoftで「Copilot」のデザインマネジャーを務めるカーティス・ビーバーズ氏の見解も紹介された。ビーバーズ氏は、「AIに対するエチケットは、敬意と協力に満ちた成果を生み出すのに役立つ」と述べ、丁寧な言葉遣いがAIの応答に影響することを指摘している。
とはいえ、「お願いします」や「ありがとう」といった一言を追加することでAIが処理するトークン数が増え、その分だけ演算コストが増加するのは事実だ。
Futurismの記事では、「The Washington Post」とカリフォルニア大学の共同調査も引用されており、AIによるエネルギー消費量に関する興味深いデータが示されている。それによると、1年間にAIを使って週に1通のメールを送信するだけで、約7.5キロワットの電力を消費するという。これはワシントンD.C.の一般家庭9軒が1時間に消費する電力量に相当する。
さらに、現在AIチャットbotの処理を担うデータセンターは、世界の総エネルギー消費の約2%を占めているという。ChatGPTのようなAIには、世界中から日夜絶え間なくプロンプトが送信されている。たとえ1件ごとのデータ量がごくわずかでも、あいさつの積み重ねによって膨大なリソースが消費されていることになる。こうした「礼儀正しさ」が、一方で無駄なリソースの浪費を招いている可能性も否定できず、アルトマン氏の言うように数千万ドル規模のコストが発生している可能性はあるだろう。
人間と接するようにAIに接することで、より良い応答が得られるというメリットがある一方で、そうした丁寧なやりとりがエネルギーの無駄を生んでしまうという相反する難しい課題だ。今後、このジレンマを解消するための持続可能な仕組みや技術が生まれることに期待したい。
上司X: AIチャットbotに「お願いします」「ありがとう」と言うことが、大きな電気代の負担になっているのでは、という話だよ。
ブラックピット: アルトマンCEOによれば数千万ドルとか。日本円なら数十億円ってところですかね。
上司X: 「you never know」って言ってるから正確なところではないようだけどね。
ブラックピット: まあ、きっちり算出するのは難しいところでしょうね。
上司X: だろうな。ちなみにキミは礼儀正しくAIチャットbotを使っているかい?
ブラックピット: 当然じゃないですか。僕は対AIも対人もいつでも丁寧な人間ですよ!
上司X: うんうん、そうだね。
ブラックピット: ちなみに、ChatGPTに丁寧なあいさつについて尋ねてみたら「うれしいし、大切なことと思っています」って言ってましたよ。その上でリソースが消費されることにも触れましたが「必ずしもムダなことではない」というような回答でしたよ。
上司X: 俺も聞いてみたよ。俺の環境でも、確かにChatGPTはあいさつや丁寧な物言いは「価値があることだ」って言ってたな。「AIが人間らしさを学ぶ一助になる」とも回答したよ。決して無意味じゃないってことだ。だからさ、たとえムダだと言う人がいても、キミも俺も今後とも丁寧に、敬意を払いながらAIと付き合っていこうじゃないか。
ブラックピット(本名非公開)
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
上司X(本名なぜか非公開)
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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