だまされる理由、全部明かします セキュリティのプロが教えるサイバー詐欺の心理戦(1/2 ページ)
サイバー犯罪は金品を盗み出す方向から詐欺へと変化している。これは警察庁が発表した統計からも明らかだ。では、どうすればこのような詐欺に対抗できるのだろうか。ラックの専門チームが語った。
インターネットを利用した詐欺が急速に増え始めた。個人としてはもちろん、企業の従業員であってもこのような詐欺に対応する方法を抑えておかなければならない。
ラックは2025年5月27日、同社が運営する金融犯罪対策センター(FC3:Financial Crime Control Center)による、昨今のデジタル詐欺のトレンド「だます技術」を紹介するセミナーを開催した。金融犯罪や詐欺が無視できない今、主に個人ができる詐欺対策について語る内容だ。組織の中にいる従業員としても重要な“詐欺に遭わないための知識”をまとめよう。
詐欺対策 敵を知り、己を知ることから始める
ラックの木村将之氏(金融犯罪対策センター長)はこれまで三菱UFJ銀行でサイバー犯罪・金融犯罪対策に従事し、2021年にラックに入社、2025年に金融犯罪対策センター長に就任した経歴を持つ。ラックの金融犯罪対策センターは金融機関や決済サービス事業者と、関連する日本サイバー犯罪対策センターや金融ISACをつなぐことで、金融犯罪被害をゼロにする活動を進めている。
木村氏は今回のセミナーについて、「詐欺の被害に遭う可能性を下げるために、詐欺に対する理解を深めることが目的だ」と語る。そのために重要なポイントとして、「相手を知ること」そして「自分を知ること」の2点を挙げた。理解が深まることで似た手法を取る詐欺に気付くことができ、詐欺に巻き込まれても冷静に判断し、新しい手口にも応用して対処できると述べる。
犯罪者はどのようにお金をだまし取るのか?
金融詐欺犯罪の具体的な手法に関して、ラックの三輪治郎氏(金融犯罪対策センター担当部長)と新林直樹氏(金融犯罪対策センター)が解説した。
2025年に入って証券会社の不正取引による被害が注目を集めている。これは詐欺被害の急増と軌を一にした動きだ。警察庁によれば、日本国内では、2024年に振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺が約2万件、有名人をかたり資金を奪うSNS型投資詐欺・ロマンス詐欺が約1万件発生している。この2種類の詐欺だけでも「毎日約80件発生しており、被害総額は2000億円を超えており、これは東京都港区の年間予算に匹敵する」と三輪氏は述べる。
著名人になりすまして安心させる 「なりすまし・投資詐欺」
続いて、詐欺の被害例に関して、5つの類型の事例と対策が語られた。
・なりすまし・投資詐欺
・サポート詐欺
・フィッシング詐欺
・銀行口座売買
・劇場型・預貯金詐欺
まずは、「なりすまし・投資詐欺」と呼ばれるタイプの詐欺だ。これはWebサイトやSNSを閲覧中に「投資の始め方の講義が無料で受けられます」というような文言の広告が表示されるところから始まる。広告をクリックすると担当者がグループチャットに誘導してくる。グループチャットでは有名人の名をかたる人物が登場し、さらに情報を知りたければ指定された口座に振り込め、というような形で詐欺に遭う。
新林氏はこの手口に関して、「著名人になりすまして、被害者を安心させてくる」と述べる。チャットでは「著名人」が身分証明書を提示して安心させようとすることが多いが、それは偽造されたものであり、著名人本人とは限らないことに注意する必要があると指摘する。
対策は「自分にとって都合が良さそうに見える表現には注意せよ」ということだ。「無料だ」「絶対にもうかる」といった表現で閲覧者を釣る。これらのフレーズがよく使われることを知っておく必要があるだろう。加えて、SNSやニュースサイトの広告が起点になることが多いため、「広告ブロッカーを活用することも有効な手段だ」と新林氏は述べる。
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