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業務課題をAIと解決する時代へ、これからは「Copilot Studio」が課題解決の切り札に?

今、注目されているのが、AIを“共創パートナー”として活用する動きだ。その中核を担うのが「Microsoft Copilot Studio」。業務現場が抱える課題を、従業員自らがAIとともに解決へ導く。そんな時代が到来しようとしている。

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アバナード  西村卓也氏

 生成AIが急速に普及し、業務の効率化やコミュニケーションの質向上に寄与している。ビジネスの現場では、AIの進化に伴い業務プロセスやコラボレーションの在り方が再検討されており、今後はAIと人間が共創するための仕組みづくりが不可欠となるだろう。

 本稿では、AI活用の現状と今後の展望、そしてその基盤となる「Microsoft Copilot」の活用法について、アバナードの西村卓也氏(クライアントソリューションズモダンワークプレイスリード ディレクター )の見解を基に詳しく解説する。

本稿は「アバナード Beyond AIフォーラム 2025」における西村卓也氏の講演「Copilot+Agent活用による新しい働き方と企業コラボレーションの進化」の内容を基に、編集部で再編成した。

チャットAIだけでは終わらない、AI活用の次なるフェーズ

 生成AIの浸透に伴い、仕事の進め方やコミュニケーションの在り方にも変化が生まれている。西村卓也氏は、こうした動きは今後さらに進むと話す。西村氏自身も、業務では「Microsoft Copilot」などのサービスを活用し、日々のコミュニケーションにはチャットAIを積極的に活用しているという。かつては「あると便利」な存在だったAIは、今や「なくてはならない存在」へとなっている。

 一方で、最近注目を集めているAIエージェントに象徴されるように、AI活用は次のステージへに向かいつつある。AIは今後、「不可欠な存在」から「より賢く、より便利な存在」への進化が期待されている。こうした変化に企業のコミュニケーションやコラボレーションの在り方も柔軟に対応し、見直していくことが求められている。

 西村氏は、日本企業におけるAIソリューションの導入状況について、3つのステージに分けて説明する。

 ステージ1は、「ChatGPT」に代表されるようなAIチャットの導入フェーズだ。ステージ2は、RAG(Retrieval-Augmented Generation)やファインチューニングなどにより、企業固有のデータとの連携が進む段階であり、ステージ3はマルチモーダルAIや自律的にタスクをこなす機能を取り入れた業務やビジネスとの統合が進むフェーズだ。

 その次のステージとして注目されているのが、AIエージェントやAGI(汎用《はんよう》人工知能)との共創のフェーズだ。これまでAIが補いきれなかった部分を、カスタム可能なエージェントによって補完し、より便利に使えるようになる。こうした段階的な変化をITコラボレーションの視点で捉えると、これまでツールだったAIが、コラボレーションの“相手”となる時代に移ろうとしている。


ITコラボレーションとAIの変化(出典:イベント投影資料、筆者撮影)

 2023年のChatGPT登場以降は、AIがコラボレーションを支援する役割を担うようになり、翻訳や要約、議事録作成、提案など、人の業務を補助することで、コラボレーションの効率と質を大きく向上させた。AIは単なるツールから「頼れる補佐役」へと進化している。

 西村氏は、2025年以降のコラボレーションを「ヒューマニック・コラボレーション」と呼ぶ。AIが単なる補助ではなく、知性を持った仕事仲間として人間と共に働くことを意味する表現だ。同氏は、AIが対話相手や提案者として、適切に反応、発言し、人間と共創していく時代が到来するだろうと語る。

「Copilot Studio」で業務課題をAIと解決する時代に

 その鍵を握るのが、「Microsoft 365 Copilot」の拡張や、自社独自AIエージェントの構築を可能にする「Copilot Studio」だ。

 「Copilot Studioを活用すれば、従業員自身が安全にAIエージェントを作成し、業務効率化を自ら推進できます。もちろん、情報システム部門がAI機能を開発・提供する方法もありますが、現場の従業員が主体となって進めることも重要です。例えば最近では、Copilotを使ったディープリサーチ用の『Researcherエージェント』や、データアナリストの役割を担う『Analystエージェント』が登場しています。Analystに『Microsoft Excel』データを渡すと、行列の因果関係を解析し、内容をレポートとしてまとめてくれるなど、従来のCopilotでは難しかったデータ分析の課題を解決できます」(西村氏)

 Copilot Studioによって、自然言語を使って多様な機能を備えたAIエージェントを簡単に作成できる。アバナードでは、Copilotを活用するソリューションとして「Avanade AI Agentソリューション」を提供しており、業務に必要な各種資料を効率的に生成することも可能だ。


Copilot Studioを活用した業務効率化(出典:イベント投影資料、筆者撮影)

 「当社のお客さまでも、Copilotエージェントを活用してさまざまな業種の企業が独自のAIエージェントを開発しています。特に、これまではCopilotだけではカバーしきれなかった実務領域で、AIエージェントの活用により自ら業務を効率化し、利便性を大きく高めています。具体的には、『Microsoft Power Platform』のサポートエージェントや情報エージェント、コンプライアンスエージェント、予知保全エージェントなど、多彩な開発事例が生まれています」(西村氏)

 また、Copilot StudioやAIエージェントの活用を支援するサービスも展開している。支援は大きく3つのステップに分かれる。

 まずCopilotの基本的な習得、次に高度活用と業務への適用、そして最後にCopilotの価値を最大化するためのサポートだ。具体的には、エージェントの開発・利用環境の整備やポリシー策定、社内カルチャーの変革支援、さらに日々進化するAI機能を活用するための伴走型支援も提供している。加えて、高機能なエージェント開発に向けては、アジャイル型やウォータフォール型の開発支援メニューも用意している。

ヒューマニックコラボレーションを実現するために重要な4つの要素

 西村氏が提唱する「ヒューマニック・コラボレーション」の特徴は、「人だけの輪」にAIが加わることで、これまでにない価値を創出できる点にある。これまで人と人の間で交わされていた対話にAI botが参加することで、会話の流れを理解し、適切な示唆を与えるだけでなく、感情や文脈の補完といった役割も担うようになる。

 「現在、AIは議事録の作成や音声の文字起こしといった支援的な役割を果たしていますが、今後は単なるアシスタントではなく、実質的に人のような存在として会議に加わるようになるでしょう。例えば、1対1のミーティングであっても、AI botが第三の参加者として関与すれば会話の質が高まり、“三人寄れば文殊の知恵”のような効果が期待できます。参加者が増えれば増えるほど、botが扱える領域や提供できる価値も広がっていきます」(西村氏)

 実際のユースケースとしては、AI botがコンサルタントのように会議に参加する「バーチャル・コンサルタント」、発言のテンションを色で可視化して感情的な議論を抑える「感情インジケーター」、そして会議中の文脈を理解して、必要な情報や重要なトピックを即座に関係者へ共有する「知識の即時連携」などが挙げられる。

 文字起こしの内容をAIエージェントが再構成することで、単なる文字データを超えて、新たな気付きを会議の場に還元することも可能だ。さらに、役員会議などで情報提供を行うAIbotの運用も、既に一部で始まっているという。

 西村氏は、こうしたヒューマニック・コラボレーションを実現するには、4つの重要な要素があると指摘する。それは、「人(People)」「コネクター(Connector)」「AI」、そして「ナレッジ(Knowledge)」だ。それぞれにおいて、従来とは異なるアプローチが求められる。

 「まず人の面では、会話の中にbotが存在するという意識が必要です。AI botは、会話に参加するために待機している状態ですから、適切に話しかけることが重要です。また、返ってきた回答を確認しながら、さらに質問を重ねるといった対話のリズムを身につける必要があります。そのためには、新しいコミュニケーションの訓練や意識改革が不可欠です」(西村氏)

 一方でbotの運用では、適切な管理体制が必要だ。botがアシスタントとして機能するためには、単に使うだけでなく、人間と同様の権限を付与した上で、その実行履歴や操作内容をしっかりと管理する仕組みも重要だ。

 さらに「コネクター」では、エンタープライズサーチなどの技術を活用し、社内の情報を正確に検索できる環境を整えることが求められる。同時に、外部情報を安全かつ適切に取得するための仕組みづくりも不可欠だ。そして「ナレッジ」に関しては、社内に蓄積されるデータや情報を整理・構造化し、有効な情報資産として活用できる状態に整えておくことが必要だという。

 西村氏は、「市民開発と全社領域の両面でAIエージェントの活用を支援していきます」と述べ、AIとの共創による新たな企業コラボレーションの実現に向けてアバナードとして積極的にサポートしていくことを強調した。

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