「脱VMware」か「続VMware」か? 結局、企業はどちらを選んだ?【調査】:VMwareに関するアンケート(2025年)/前編
BroadcomによるVMware買収によってライセンス体系が変更になったVMware製品。結局多くの企業が選んだのは「脱VMware」と「続VMware」のどちらなのか。キーマンズネットが実施した調査を基に、多くの企業が取った選択肢とその満足度について“答え合わせ”をしよう。
BroadcomによるVMware買収を経て、2024年2月からライセンス体系が変更になったVMware製品。IT基盤を見直すきっかけになったライセンス体系変更を受けて、多くの企業が選んだのは「脱VMware」と「続VMware」のどちらなのか。
キーマンズネットが実施した調査「VMwareに関するアンケート(2025年)」(実施期間:2025年5月16日〜6月6日、回答件数:173件)で、VMware製品の移行先として人気の製品や、今も次期IT基盤を決めかねている“VMware迷子”の割合、ライセンス体系変更後のVMware製品に対する満足度とその理由が明らかになった。
同調査を基に、ライセンス体系変更から約1年後の“答え合わせ”をしよう。
意外と少ない? 「脱VMware」派の割合が判明
まず、勤務先におけるVMware製品の利用状況を調査したところ「利用している」が48.6%(図1)、中でも1001人以上の中堅・大企業で5〜7割と利用率が高かった。
勤務先の対応について聞いたところ「分からない、未定」(35.8%)がトップで、「VMwareの新ライセンスに移行した(全ての環境)」(14.5%)、「他社製品に移行した(全ての環境)」(10.4%)が続いた。
全体から「もともとVMware製品は利用しておらず、今後も利用する予定はない」(22.5%)と「その他」(4.6%)を除いた回答者を「以前からVMware製品を利用していた」と考えると、「VMwareの新ライセンスに移行した」割合は「一部移行」を含めて27.8%、「他社製品に移行した(全ての環境)」が14.3%、「分からない、未定」が49.2%になった。
「VMwareの新ライセンスに移行した」と「VMwareの無償版(ESXi)に移行した(全ての環境)」を合わせると、VMware製品を利用していた企業のうち約4割が今後も何らかの形でVMware製品を使い続ける「続・VMware」派であることが分かった。
ちなみに、現在利用している仮想化製品やサービスについて尋ねたところ、VMware製品以外ではMicrosoftの「Hyper-V」が最多だった。他にはNutanix製品やProxmox製品を挙げる回答者が多かった。
VMware継続利用企業も「今後が不安」
全ての環境でVMware製品を引き続き利用している企業は「次の一手」についてどう考えているのか。
「VMwareの新ライセンスに移行した(全ての環境)」「VMwareの無償版(ESXi)に移行した(全ての環境)」「一部はVMwareの新ライセンスに移行したが、それ以外は無償版(ESXi)に移行した」のいずれかを選択した回答者に尋ねたところ、48.7%が「VMware製品を現状のまま使い続ける(全ての環境)と回答した。「他社製品に移行(全ての環境)」との回答は12.8%にとどまり、VMwareの新ライセンスや無償版を一部利用するケースも含めると、実に76.9%が「今後もVMware製品を利用する」と回答した(図2)。
今後もVMware製品を利用し続ける企業は、その理由として「VMware製品の機能を評価しているから」(43.3%)、「VMware製品の互換性やサポートを信頼しているから」(43.3%)を選んだ(複数回答可)。「移行時に発生するリスクを回避したいから」(20.0%)や「移行に必要な予算やITスキルが不足しているから」(13.3%)といった、環境移行への懸念よりも、VMware製品の機能や互換性、サポートへの信頼が厚いことが見て取れる。
一方で、課題もあるようだ。VMware製品を継続利用するに当たって今後課題になりそうなものを聞いたところ、「ライセンスやサポート費用の増加」(58.2%)や「VMware製品やサポート体制の将来が不透明」(40.3%)に票が集まった(複数回答可)。この2つは「他社製品に移行した」または「移行予定」の回答者からも多く選ばれていることから、ライセンス体系変更による混乱の記憶がまだ新しい中で、ユーザーはコスト体系やサポート体制の今後を決して楽観視しているわけではないようだ。
ライセンス体系変更後、「不満」が8倍に 「2大不満」は?
VMware製品を利用している回答者を対象に「VMware環境に対する満足度」を5段階評価で聞いたところ、ライセンス体系変更前では、「5」(21.4%)や「4」(29.8%)といった高い評価の合計が51.2%に上った一方で、ライセンス体系変更後はそれぞれ10ポイント以上減った。
特に強い不満を表す「1」がライセンス体系変更前の3.6%から変更後は27.4%へと約8倍になったことからも、ライセンス変更に不満を抱くユーザーは多いことがうかがえる。
フリーコメントで評価の理由を尋ねたところ、結果は大きく2つに分類できた。
「現実的ではないコスト高」
1つ目は「コスト」に対する不満で、「値上げ幅が大きすぎる」や「一方的なライセンス料の値上げに憤っている」といった率直な声が寄せられた。中小企業からは「高額で中小企業には合わなくなっている」といった、利用料金が予算規模と合わなくなっているという指摘もあった。
利用料金に関する不満
- 最低コア数の増加、一方的な中小向けライセンスの廃止と値上げ
- 年間維持費が7倍になった
- 現実的ではないコスト高
- コスト的にほぼ使えない
VMware製品を扱っていると思われる企業からは、「当社の顧客は混乱の影響をかなり受けている」「費用が上がりすぎて、顧客に提案できない」といった声が寄せられた。
製品ラインアップ変更に伴う“同梱販売”への不満を挙げる回答者も多かった。
“同梱販売”への不満
- 機能は良いが、不要な製品もパックで購入しなければならない
- 「vCenter」「vSphere」「vSAN」だけ利用できればよいのに、不要な「Aria」「NSX」製品が同梱されている
「信用がゼロになった」
2つ目は、ライセンス体系や製品ラインアップを変更したベンダーに対する信頼感の低下を挙げる声だった。「ベンダーの事情による一方的な変更だ」「Broadcomの方針が見えず、今後VMwareを利用してよいのかどうかがわからない」「不透明な部分が増えた」など、ベンダーであるBroadcom の今後の方針を不安視する意見が多く寄せられた。
中には、「普及させるだけ普及させておいて、ライセンス体系を急に変えるやり方は卑劣極まりない」「会社としての信用がゼロになった」と、強く非難する回答者もいた。
こうした声からは、VMware製品が多くの企業でデファクトスタンダードになっていたために変更の影響が大きかったことが改めて浮かび上がると同時に、変更前に今後の見通しを含めた情報提供や、ある程度段階を踏んだ移行を期待していたことが見て取れる。
一方で、ライセンス体系変更のVMware製品に対して高評価を寄せた回答者からは、「利用に不満なし」「使うためのノウハウも蓄積されており、安定している」といった、安定していることや変更がないことが重視されるIT基盤ならではの評価基準がうかがえた。
その他のフリーコメント
低評価
- 最低コア数の増加、一方的な中小向けライセンスの廃止、値上げ。顧客は養分ではない。
- ESXiなどを無償で利用できることが大きなメリットだった
- Broadcom買収後にサービスレベルが低下し、たびたび業務に支障が発生した
- VMware製品はサーバ環境からネットワーク環境まで高度に統合した仮想環境を実現できるソリューションだが、買収したBroadcomはその価値をマネタイズすることに専念して、IT環境や技術の発展に寄与する意識は完全にないと見える
- 料金体系や説明がわかりにくい
- 無駄に高額
- 中小企業には合わなくなっている
- サポート体制の悪化、ライセンス費用の増加
高評価
- 性能面で非常に満足しているため、費用については仕方がないと考えている
- 特に問題は起きていない。速度も低下していない。
- 大きな操作変更はなかった
- 不具合が起きていない
ここまで、ライセンス体系変更後もVMware製品を継続利用している理由や、ライセンス体系変更後のVMware製品の満足度を中心に紹介してきた。後編では、ライセンス体系変更に伴ってVMware製品から他社製品に移行した企業が苦労したポイントや、移行後の基盤への評価、その理由を深堀りする。
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