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コラム

無料のBIツール「Looker Studio」で始めるデータ分析 ゼロから分かる使い方解説

データの可視化や分析に使えるGoogleの無料ツール「Looker Studio」を非IT系職の筆者が使い、初心者でもSNSデータ分析用のダッシュボードを作れるか試してみた。

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 最近、「YouTube」のショート動画を出している中小企業も増えてきました。建材の卸業者さんや材木屋さん、金属加工業者さんの職人さんが思わず納得する知識を披露していたり、技術的に面白い動画を投稿したりしています。「X」(旧Twitter)でフレンドリーに日常を報告している企業もありますね。

 広報戦略として使われる動画やSNSですが、これらの運用は「なんとなく」になりがちです。動画の内容と視聴者の属性、視聴数、さらにその効果を可視化するには、想像以上に手間と工夫が必要です。

 複雑なデータを整理・可視化する手段として、有効なのがBIです。今回は、非IT系の筆者がGoogle Cloudの無料BIツール「Looker Studio」を実際に使い、どこまでデータを可視化できるかを検証しました。無料で使えるのなら、活用しない手はありません。

Looker Studio……の前にBIとは

 データ分析という言葉には耳なじみがあるかもしれませんが、BIとなると、特定の業界や職種に関わっていなければ、具体的に何ができるのかイメージしにくいかもしれません。一般にBIというときは「ビジネスインテリジェンス(ツール)」を指します。データを集めて加工してビジネスに役立つ情報を吸い出すためのツールですね。

 Google CloudはBIツールとして「Looker」を提供し、高度な分析機能を備えていますが、有料サービスです。Looker Studioは機能は制限されますが無料で使えます。難しい機能がないということは、その分使いやすく、比較的簡単に扱えるとも言えます。中小企業も業界によっては大量のデータを抱えていますから、Looker Studioで事足りるとは言い切れません。ですが、低コストでスモールスタートするのには良い選択肢です。

 「Microsoft Excel」や「Google スプレッドシート」でもデータ分析は可能ですが、BIの明確な強みは、データ接続が簡単でリアルタイムに更新できる点だと考えています。日次や週次で必ず確認したい指標はBIで可視化した方が良いでしょう。なお、データを接続する際には自社のルールや法令に従ってください。

YouTubeのデータを接続してみよう

 今回は筆者個人のYouTubeチャンネルを個人のLooker Studioアカウントに接続してデータを可視化してみます。チャンネルを伸ばす方法が分かるとうれしいですね。

 BIでデータを可視化する大まかな流れは「データを用意する」「ダッシュボードを作る」「BIにデータを接続する」です。それぞれ前後することはあります。

 まずはデータを用意します。今回は筆者のYouTubeアカウントにデータが存在していますので、特に作業はありません。自社で保管しているデータの場合は、Looker Studioに取り込むために、データを適切な形式に整理する必要がある場合もあります。

 データの準備が整ったら、ダッシュボードを作成します。とはいえ、見やすくおしゃれなダッシュボードを作るのは大変ですので、テンプレートを使います。ダッシュボードを作る画面に「[Sample] YouTube Channel Report」というテンプレートがあるのでこれを開きます。このボードでは視聴回数と合計視聴時間、シェアされた回数、平均視聴時間、再生数ランキング、評価などを見られるようになっています。

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Looker Studioのサンプルダッシュボード

 画面上部の「自分のデータを使用」ボタンをクリックすれば、自分のYouTubeチャンネルのデータを接続できます。まれに気まぐれのように動画を投稿するだけのチャンネルなので、全体的に数字は小さいですね。

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筆者のチャンネルのデータをインポートした状態

 この時点で、かなりの情報を引き出せる画面ができました。筆者は数分の音楽動画を中心に投稿しているのですが、動画1本当たりの平均視聴時間が長く、動画序盤で飽きられる割合が低いことが分かります。低評価も0件ですね。見れば高評価だが、閲覧につなげられていないことが課題であることが分かります。

ダッシュボードを自分用に作り変える

 課題の方向性が見えたので、チャンネルを伸ばすのに必要そうな情報を一覧できるダッシュボードにします。動画がどれだけシェアされたか、登録者がどれだけ増えたかは確認できるようにしたいですね。

 編集ボタンを押して、ダッシュボード上の数字やグラフをクリックするとプロパティーが表示されます。グラフの種類や取得するデータを変更でき、チャンネル登録者数の増加を確認したい場合は「ユーザーが追加した登録チャンネル数」を指標として設定します。これだけですね。今回の場合なら設定できる指標は40種類あります。

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テンプレートを編集して、必要なデータに差し替えればひとまず形になる

 これで、どんな動画がチャンネル登録につながるのか分かります。今回は「視聴回数」「動画の共有数」「新規コメント数」「新規登録者数」をグラフで表示するようにし、動画一覧は視聴回数とユーザーが追加した登録チャンネル数でソートできるようにしました。

 初めて触ったのでここまで30分くらいかかりましたが、慣れれば5分程度でほしいダッシュボードを作れるのではないでしょうか。

コネクター一覧から見るLookerStudioの使いどころ

 このようにすんなりYouTubeのデータを接続できるのは、Looker Studioがデータを接続するための「コネクター」を持っているからです。標準で用意されているコネクターを見てみると、広告やSNS、決済システム、eコマースに関するものがかなりあることが分かります。「Ads」でコネクターを検索すると305件ヒットします。

  • Google広告
  • Facebook Ads
  • LinkedIn Ads
  • Instagram Insights
  • TikTok Ads
  • Shopify
  • Amazon Seller Central
  • Microsoft Advertising
  • eBay Seller Center
  • Stripe
  • Reddit Public Data
  • Yahoo Native Ads
  • Google AdSense
  • PayPal

 CRM(顧客関係管理)には、「Salesforce」「HubSpot」「Zoho」などのサービスがあります。マーケティングや通販のデータを見たいならいったんLooker Studioで始めるのも手でしょう。

 ただし、これらのコネクターはGoogleが用意しているものとパートナー企業が作ったものがあります。それぞれにデータの扱いやセキュリティについてのスタンスが異なりますので、注意してください。

 BIツールは、「これをこうすれば利益が○○%上がる」といった直接的な答えを示してくれるわけではありません。しかし、データの塊を可視化して情報にしてくれることで、戦略が見えてきます。あとは使う人がいかにデータの読み方を身に付けていくかが勝負になるでしょう。

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