検索
コラム

最適なAWSの構成も? 「Claude」を何でも答えてくれる"AWSの専門家"にする方法

Amazon Web Services(AWS)が、公式MCPサーバ「AWS Knowledge MCP Server」を配布した。「Claude」などの生成AIサービスと接続すると、AWSのサービスに詳しいチャットbotにできる。どんな使い方ができるか試してみた。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

 Amazon Web Services(AWS)は実に多くのツールやサービスをリリースしています。それらを使いこなすには、公式ドキュメントを読んで概要を把握し、マニュアルを見ながら実践し、常に最新の情報をキャッチアップすることが必要です。問題が起きればコミュニティーの投稿を探し回ることもあるでしょう。

 AWSのドキュメントは情報量が膨大かつ断片的であることも多く、必要な情報にたどり着くまでに相応の労力を要することも少なくありません。

 AIは、こうした情報の探索と収集を得意とします。ユーザーの質問を解釈してインターネットを検索して、集めた情報を基に回答を生成してくれるなら、情報収集がかなり楽になすはずです。ただし、一般的な生成AIチャットbotは、そのままの状態ではAWSに特化した知識や深い理解を備えているわけではありません。

 AWSは7月16日(現地時間)、MCPサーバ「AWS Knowledge MCP Server」(以下、Knowledge MCP)を公開しました。これを使えば生成AIがAWS知識にアクセスできるようになります。今回は、生成AIチャットbotサービス「Claude」に同MCPサーバを適用して、どんなことができるのか見ていきます。

「MCPサーバ」とは?

 MCP(Model Context Protocol)は生成AIと外部ツールを接続するための規格です。Claudeを提供するAnthropicが2024年11月に発表したもので、同社はMCPを「生成AI時代におけるUSB Type-Cのような規格」と位置付けています。

 USB Type-C端子を備えたPCが同じ端子を持つキーボードやマウスと接続することで多様な操作を可能にするように、MCPに対応した生成AIも、対応ツールと組み合わせることでさまざまな機能を実現できるようになります。

 今回AWSが公開した“道具”であるKnowledge MCPは、AWS公式のドキュメントを取得して生成AIに渡せるものです。説明によると、AWSの入門知識や各種サービスの設定方法、ベストプラクティス、最新情報などを参照できるようです。

 Knowledge MCPはAWSアカウント不要で無料で使えます。早速Claudeに適用して使ってみます。

難解な“AWS語”をほぐしてもらおう

 まずはシンプルにAWSのサービスを分かりやすく説明してもらいましょう。

 「Amazon EC2」の概要を、非ITインフラエンジニアでも分かるようにかみ砕いて説明してください

 ちなみに公式の説明は「事実上あらゆるワークロード向けの、安全でサイズ変更が可能なコンピューティングキャパシティ」「極めて幅広く、奥深いコンピューティングプラットフォームを提供します」とのこと。

 好みが分かれるところかとは思いますが、筆者としては「Amazon EC2は仮想サーバを構築できるサービス」くらいの書き方だと分かりやすいと思います。

 Knowledge MCPを使ったClaudeは、EC2を「シェアオフィス」だと例えて説明しつつ、料金体系と選定意義を提示しています。公式の説明よりは分かりやすいですね。

photo
Claudeの回答

 なお、Claudeは生成AIであるため、ハルシネーションには気を付ける必要があります。Knowledge MCPはユーザーから質問を受け取ると必要に応じて「search_documentation」「read_documentation」という機能を実行しています。この過程で参照したWebページを明言しているため、気になる場合はそこを見て確認してみるといいでしょう。

最新情報を収集してもらう

 今度は最新情報を取得してもらいます。本来、生成AIは学習していない情報を正確に生成するのは困難ですが、MCPサーバから情報をもらえるためこれを実現できます。

 S3の最新アップデート情報を教えて

 基本的には「Simple Storage Service」(Amazon S3)のように表記するのがいいはずですが、今回はAWS公式のKnowledge MCPを使っているため、S3と表記するだけでも十分通じます。

 Claudeは複数のWebページを渡り歩いて、情報を収集しています。人間もできなくはないですが、煩雑な作業なので生成AIに丸投げできるなら効率的ですね。

photo
Claudeの推論過程

構成を考えてもらう

 最後に、以下のようなリクエストをしてみました。

 当社はB2B専門の機械部品メーカーです。顧客企業向けに、注文サイトを構築したいです。既存の経理システムや顧客管理ツールとの連携を重視する場合、どのような構成が適切ですか?

 今度は具体的なシチュエーションを指定して、適切な構成を考えてもらいます。Claudeは、Amazon EC2を中心にAWSのサービスで構成を出すとともに、ランニングコストの見積もりと導入プロジェクトのタイムラインを提案しました。1カ月のコストは約20万円で、導入には約半年かかるとのことです。

photo
Claudeの回答

 規模の大きい話ですので、丸ごと信じるというよりは、一つのプランとして持っておいて、SIerなどと本格的に検討する際の参考情報にするのがいいかもしれません。Claudeが出してきたプランを基にコストや導入期間を考えて妥協ラインを探るのも現実的な使い方でしょう。

 今回試した内容はMCPを使わない状態のClaudeでもそこまで大きく外さず似たような結果が出力されました。Claudeには標準でインターネット検索機能がありますし、AWSの主要なサービスについてなら学習量も十分なようです。具体的なシチュエーションを想定した見積もりでは数字の乖離(かいり)が見られましたが、構成とコスト感、導入スケジュールは同様に出力しました。

 とはいえ、Knowledge MCPは無料で使えるので、どうせなら精度向上のために適用しておくのがいいでしょう。これは「ネット検索ができて一般的なAWS知識は十分頭に入っている人」と「ネット検索ができてAWS知識も十分あるが、毎度AWSの公式ドキュメントを見る人」の違いです。大きく外しはしないですが、安心感は違いますよね。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る