2025年下期のIT支出、増やした方がいい? 自民大敗、トランプ関税の影響を予測
参院選の与党敗北やトランプ関税発動は今後のIT需要にどのような影響を与えるのか。ノークリサーチの予測を紹介する。
2025年7月20日投開票の第27回参議院議員選挙(以下、参院選)で自民・公明両党が改選議席数を大幅に下回り、衆参両院で過半数を割り込んだことや、米国の関税政策の発動によって景気の先行き不安が増すことは、IT需要にどのような影響を与えるのか。
自民大敗やトランプ関税、皆どう判断している?
ノークリサーチは2025年1月5日に企業の経営またはIT管理/運用に携わるビジネスパーソン(有効回答1304人)を対象に、2025年における業績とIT支出の見通しとそれらに影響を与える事象についての調査を実施している。今回は、同調査データを基に「ある事象がさらに顕著になった時、何が起きるか」を推論、予測する分析モデル(ベイジアンネットワーク分析モデル)を構築した(図1)。
同社の予測によると、「ある2つの条件」が重なった場合、日本企業のIT支出は増加する見込みだ。どういうことか、詳細を見ていこう。
まず、分析モデルに示された記号は、同調査で「2025年の業績やIT支出に影響を与える事象」として挙げられた項目だ(下図)。
ノークリサーチは今回、図1に示した分析モデルを用いて、2025年7月の参院選の結果を踏まえた今後のIT支出増減の見通しを考察した。
7月20日投開票の参院選によって衆参両院で過半数割れとなった石破政権は今後の議会運営がさらに難しい状況となる見込みだ。また、8月7日に発動した日米の「相互関税」は、多くの企業が影響を受ける見込みだ。
そこでノークリサーチは、2025年の業績やIT支出に影響を与えるさまざまな事象のうち、「Q2_8 石破政権が少数与党であることに伴う政策運営の鈍化」と「Q2_14 米国新政権(トランプ政権)の経済方針(関税引き上げなど)」の2項目の影響度がさらに高まった場合、企業における2025年のIT支出を2024年と比較した時の増減見通しが年初時点(標準状態)からどのように変化するかを予測した(図2)。
参院選の結果単体で見た場合、今後のIT支出に大きな影響は与えないというのがノークリサーチの見立てだ(左側、中央のグラフ)。しかし、「政権運営が顕著に停滞し、米国が関税が顕著に引き上げられる」状況では、「IT支出が増加」する割合が年初時点と比較して約10ポイント高くなると同社は見ている。同社はこの予測について「ただし、これは厳しいビジネス環境を乗り切るためのIT支出である点に注意する必要がある」と指摘する。
厳しいビジネス環境を背景に「内製化」が進む?
2025年8月12日時点で石破政権は続投の意向を表明しているが、与党の一部からは退陣を求める声が出ている。今後は、与野党の駆け引きに伴う外交の鈍化も想定される。
それらを受けてノークリサーチは、「Q2_14 米国新政権(トランプ政権)の経済方針(関税引き上げなど)」と「Q2_8 石破政権が少数与党であることに伴う政策運営の鈍化」が重なった状況で何が起きるかを確認する必要があると指摘する(図3)。
「政権運営が顕著に停滞し、米国が関税が顕著に引き上げられる」状態では、米中対立の懸念も高まったりするとノークリサーチは予想する。米中対立が深刻化する中、米国から見て日本が「中国寄り」に映った場合、日米間の関税交渉で一層厳しい条件を提示される可能性もありそうだ。「このように国内政治の停滞は関税交渉を含むビジネス環境の面でも大きな不安要素になる」(ノークリサーチ)
こうした状況を乗り切るために企業は何をすべきか。「石破政権の運営が顕著に停滞し、米国が関税が顕著に引き上げられる」場合、多くの企業は業種別・地域別の規制を緩和することによる活性化に期待しているようだ(図4)。また、ビジネスの活性化を支えるITシステムは企業の特性(業態や立地)に大きく依存するため、コスト削減の意味合いも含めた「IT内製化」を検討するケースも現状と比べて増えるとノークリサーチは予測している。
だが、ノーコード開発ツールで簡易な手作業を自動化するケースとは異なり、本業を担う基幹の業務システムを内製化できるユーザー企業は限られるとノークリサーチは指摘する。
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