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たった20分でサーバ準備完了、あるお菓子メーカーが開発効率化に選んだAIツールとは?CIO Dive

スナック菓子メーカーのMondelēz Internationalが、コーディングアシスタントして「Amazon Q」を導入した。生成AIの活用でクラウドエンジニアの仕事がどう変わったのかを解説する。

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CIO Dive

 スナック菓子メーカーのMondelēz Internationalは大規模なシステム開発に着手し、技術チームや開発者の負担を軽減する方法を模索している。

世界的お菓子メーカーが語る、開発を劇的に効率化できた理由

 Mondelēzのグローバルクラウドエンジニアリング部門に所属するショーン・ティボー氏(ディレクター)は、CIO Diveに対して「エンジニアの作業を迅速化させ、より俊敏に動けるようにし、能力を高める方法を見つけることが最優先事項だった」と述べた。このような要望には、コーディングアシスタントを活用することが最良の選択だった。

 ティボー氏は、開発者に生成AIアシスタント「Amazon Q」へのアクセスを可能な限り早い段階で提供することにこだわった。エンジニアの業務フローにAmazon Qを組み込むことでMondelēzは開発サイクルの短縮に成功し、新入社員も同ツールを学習リソースとして活用するようになった。

 Mondelēzは、Amazon Qを定量的および定性的評価、実際の利用者の声という3つの視点から評価している。

 「私たちは利用を促進する仕組みを整えており、フィードバックも得ている。Amazon Qが実際にどのような業務に使われているのかを把握し、投資した費用に見合う価値を得られているかを確認できる」(ティボー氏)

 エンジニアによるコーディングアシスタントの活用が進み、技術が進化したことで、企業は開発のより広い範囲にAIを取り入れるようになった(注1)。スタンフォード大学のInstitute for Human-Centered AIが発表した「AI指標に関するレポート」によると(注2)、2024年にAIが解決したコーディングの問題は72%に達しており、2023年の4.4%から急増している。

 Mondelēzの開発者は、社内のどのプロジェクトにおいてもAmazon Qを自由に使える。暗号化キーによるデータ管理および利用状況のモニタリングの実施、社外の用途に向けたトレーニングの無効を条件に、同社のAI審査委員会はAmazon Qの導入を承認した。

 「私たちは従来のデータセンターからクラウドへの大規模な移行を進めている。これは当社のクラウド移行プロジェクトの第3段階に当たる。今回の移行の対象は、難易度の高い複数のレガシーシステムだ。これらのシステムを最新化し、大規模に運用する新しい方法を模索している」(ティボー氏)

 コード作成に加え、エンジニアはAmazon Qにツールや人間が作ったコードの検証やテストも依頼している。ティボー氏は「エンジニアたちはコード作成の効果のみならず、開発に入る前のコード検証のスピードアップも実感している」と語った。

 Amazon Qにより従来は7〜10日かかっていたサーバ準備の期間が大幅に圧縮された。ティボー氏によると、現在は要件を完全に満たしたサーバを約20分で用意できるという。

開発者の体験

 多くの企業と同様に、Mondelēzも技術者不足に悩まされている。スキル不足はプロジェクトの進行を妨げ、無駄な時間が生まれたり効率が悪化したりする原因となっている(注3)。人材不足により既存の従業員への負担も増加している(注4)。

 ティボー氏は「クラウドエンジニアを迅速に採用し、自社の業務にすぐに馴染んでもらうのは難しい」と述べた。

 「社内において、クラウドエンジニアは需要の高い職種だ。Amazon Qは単にコードを書くためのツールではなく、チャット機能を通じてサービスや機能に関する学びを提供するチューターにもなるのだと気付いた」

 従来であれば、チーム内の先輩に質問をした開発者は回答を待たなければならなかった。Mondelēzは世界中で事業を展開しており、待ち時間がプロセス全体の遅れにつながることもあった。

 「先輩エンジニアが眠っている時間に質問が届く場合もある。Amazon Qの導入により、学習にかかる時間が短縮され、改善のスピードが大幅に向上した。特に新入社員向けの研修で、全員に活用されている姿を見るのはうれしいことだった」(ティボー氏)

 スキルが不足すると、従業員が自分で解決策を探すようになる。その結果、従業員が勝手にITツールを導入する「シャドーIT」のような問題につながる。

 「高品質なコーディングアシスタントを提供したことで、「Microsoft Copilot」のような別のツールを使いたいと考える従業員が減った。私たちは依然としてセキュリティ面に十分な注意を払っており、取り組みが適切であることを常に確認している」(ティボー氏)

 AIを活用した生産性向上の取り組みは、品質の低下やセキュリティ上の問題といった予期せぬ結果を招くことがある(注5)(注6)。コーディングプラットフォームを提供するHackerRankの調査によると、開発者の3分の2以上は、AIツールの導入でより迅速にプロジェクトを完成させなければならないというプレッシャーを感じている。成果に対する期待が高まる中で(注7)、適切な制御やセキュリティ対策が求められている。

 「企業の文化が大きな違いを生み出す。私はエンジニアチームを誇りに思っている。責任感が強く、信頼できるメンバーばかりだ。正しい行いをしたいという意識を持っており、コードを確認する際も私と同じ基準で判断してくれる。それは『このコードはどれだけ役立つのか。また、将来的な問題や不具合につながるかどうか』という視点だ」(ティボー氏)

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