「ChatGPT」一強崩れる 中堅・大企業で「Copilot」が逆転トップに――2025年版生成AI活用実態調査:生成AIの活用に関する調査(2025年後半)/前編
企業の生成AI利用は拡大を続け、導入率は半数に達した。本稿では「ChatGPT」や「Microsoft 365 Copilot」などの生成AIサービスの利用動向を分析し、業務での活用方法と評価についても解説する。
業務効率化が期待できると話題の生成AI。積極的に従業員に利用を促す企業も増えている。キーマンズネットでも「生成AIの活用意向と課題」に関するアンケートを定期的に実施し動向を追っている。前編となる本稿では調査結果(実施期間:2025年8月13日〜8月27日、回答件数:221件)を基に、企業における生成AIの利用状況を紹介する。
9割が生成AIに「関心がある」と回答 利用率も増加
はじめに、生成AIの業務利用についての関心度を聞いたところ、「大変関心がある」(53.4%)が過半数となり「やや関心がある」(36.2%)を合わせると89.6%と全体の9割が関心を寄せていることが分かった(図1)。過去の調査と比較すると、2024年6月の前々回調査では79.0%、2025年2月の前回調査では84.4%で、年々関心度が高まっている。企業規模別では、従業員規模が大きくなるにつれて関心度も高まる傾向が見られ、特に10001人を超える大企業においては95.3%とほぼ全ての企業が関心を寄せていた。
現在生成AIを「利用している」割合を調査したところ、全体では52.5%と半数を上回り、1001人以上の中堅企業帯では64.4%、10001人を超える大企業帯では72.1%と、こちらも従業員数に比例して利用率が高まる傾向にあった(図2)。2024年6月時が26.5%、2025年2月時が38.4%であり、半年に10ポイント以上のペースで急伸している。生成AIの業務利用はこのまま堅調に増加するものと予想できる。
業務で利用されている生成AIサービスランキング
業務で利用されている生成AIサービスは「ChatGPT」(72.1%)が最も多く、次いで「Microsoft 365 Copilot」(63.4%)、「Gemini」(45.9%)、「Bing」(15.1%)、「Claude」(12.6%)となった(図3)。2025年2月実施の前回調査比では、順位に大きな変動はないものの「Microsoft 365 Copilot」が14.0ポイント増と利用率を伸ばした。特に101〜10000人の中堅企業から大企業では「ChatGPT」を抑えて1位となり、企業における「Microsoft 365」のシェアの高さも影響していると見られる。
GoogleのGeminiは前回から15.2%増加して3位となった。「Google Workspace」にGeminiが統合され、利用が増えていると思われる。またAnthropicの「Claude」も急激に利用が増えている。Anthropic日本法人の立ち上げも予定されており、今後も導入が広がるか注目される。
業種別に見るとIT製品関連業において「GitHub Copilot」や「Claude Code」などコーディングを支援するサービスの利用率が高かった。開発現場でも生成AIの利用が広がっているようだ。
次に、こうした生成AIサービスがどのような業務で利用されているのか調査したところ「ドキュメントの要約」(76.8%)、「調査、情報収集」(76.1%)、「ドキュメント作成」(69.6%)、「文章の添削、校正」(55.8%)、「アイデア出し」(52.9%)が上位に続いた(図4)。約1年前に実施した2024年6月の前々回調査からの増加順では「ドキュメントの要約」が最多の29.6ポイントで、次いで「調査、情報収集」の17.2ポイント、「ドキュメント作成」の15.2ポイントであった。
従業員規模別では、規模が大きくなるにつれて「ドキュメントの要約」で利用される割合が高い。大企業の従業員はこれまでに蓄積された文書を読み解く業務が常態化しており、その効率化に生成AIが利用されていると思われる。
「活用できる」が約8割、もはや”常識”となった生成AIの業務利用
業務利用における生成AIの評価についても調査した。「生成AIは業務やビジネスで活用できるレベルであるか」を聞いたところ「未熟であり、活用できるレベルではない」(5.4%)は1割以下に留まり、「十分に活用できるレベルである」(15.4%)と「課題はあるが活用できるレベルである」(63.3%)を合わせると78.7%が「活用できる」と評価した(図5)。過去調査比で見ると2024年6月時は58.0%、2025年2月時は61.6%と、回を追うごとに生成AIが業務で活用できるとの認識が高まっていることが分かる。特に「未熟であり、活用できるレベルではない」は1年前から約3分の1に減少しており、既に生成AIの業務利用は”常識”となっていると言える。
従業員規模別では、規模が大きくなるほど「活用できる」との評価が増える傾向にあり、同時に「課題はあるが活用できるレベルである」とする割合も増えている。前述のように大企業では生成AIの利用率が高く、各現場において様々な分野で積極活用を進めていることが予測され、試行錯誤を繰り返している段階での評価と見られる。
ちなみに、生成AIの業務活用に対して「未熟であるが、活用できなくはない」や「未熟であり、活用できるレベルではない」とした人に、どのような点が「未熟」「活用できない」と感じるのかフリーコメントで聞いたところ、次の2種類の意見が多かった。1つ目は成果物の“正確性”を懸念する声で「調査に使用すると偽のデータを引用する場合がある」や「著作権の問題やハルシネーションなどもろもろの課題をクリアしないと使えない」というコメントが寄せられた。また「プロンプトによって解答精度が左右される。1番の問題はその影響を正しく判断できる利用者が必要なこと」のように、リスク回避のためには正しく運用できる人材の確保や体制整備が必要であるとの意見もあった。
2つ目は「プロンプトの書き方を整えないと成果は出ない」や「明確な回答が出るようなプロンプトが難しい」に見られる、生成AIを効果的に使うための“スキル不足”を心配する声だ。こうした“プロンプトの属人化”によりAI活用ノウハウが社内に広がらず、活用範囲が狭まってしまうケースもある。大手企業やIT企業を中心に専任組織を設置してノウハウ共有を制度化した事例もある。プロンプトのテンプレート化するなど様々な手法が出てきているため、企業での導入事例を中心に情報収集して、生成AIによる業務効率化を進めてほしい。
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