データを探す時間を月間370時間削減 繊維メーカーが情報共有を改善した方法
萩原工業は製造業AIデータプラットフォームを導入し、検索工数を月370時間以上削減し属人化を解消した。若手主体の改善提案が活発化し、見積精度や意思決定も向上している。
キャディは2025年9月22日、合成樹脂製の糸を製造販売している萩原工業のエンジニアリング事業部門で、製造業AIデータプラットフォーム「CADDi」が導入されていると発表した。同事業部門ではデータ検索業務の非効率性や情報の属人化が長年の課題となっていた。今回の導入で、月間370時間以上の工数削減を実現し、組織全体でのデータ活用が進んだとしている。
データ基盤で競争力を強化、DX推進事例を紹介
同社では従来、必要な情報は個人の経験や記憶に依存する部分が大きく、若手や設計未経験者にとって参照が難しい状況だった。複数のシステムを横断して検索する必要があり、結果として月650時間以上の工数がかかっていた。部門間の情報共有も十分ではなく、見積作業での認識のずれや手戻りが繰り返され、機会損失につながるリスクが存在した。改善提案は個人の工夫にとどまり、組織的な仕組みとして根付くことが難しい点も問題視されていた。
CADDiの導入でデータ検索の効率が向上し、全従業員がアクセス可能なデータ基盤が整備された。これにより若手が主体的に情報を取得できるようになり、業務遂行の場面でベテランへの依存度が下がった。データに基づいた改善提案が若手から数多く出されるようになり、社内表彰制度における成果につながっているという。
部門をまたいだ共通データの活用が可能となったことで、見積業務における認識のずれが減少し、手戻りやミスの削減が確認された。客観的なデータを基盤とした意思決定が可能となり、大型案件での調達の最適化にも結び付いた。
今後の展開として萩原工業は、設計部門における業務改革を重点課題に位置付けている。現在、設計者が過去の図面を新規に書き直すことが多く、その結果として後工程の生産管理に負荷がかかっている点を課題としている。設計部門へのCADDi活用を推進することで、部門間のデータ共有を強化し、全社的な効率化を目指す方針だ。
過去の不具合事例や加工上の注意点など、経験に依存してきた知識をCADDiにひも付ける計画も示されている。これによりベテランの持つ暗黙知をデータとして可視化し、誰もが同じ水準で判断できる環境を整備することを目標としている。
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