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Microsoft 365の値上げにどう備えるべき? 契約中のプランと購入元、活用状況を調査Microsoft 365の利用状況(2025年)/前編

Microsoft 365は毎年の価格改定で利用コストが上昇する中、導入企業では購入経路の見直しやプラン選択が重要な課題となっている。最新の利用実態調査から、値上げに伴うコスト管理の現状と課題を探る。

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 「Microsoft 365」は毎年のようライセンス価格を改定し、月額利用料の上昇が避けられない状況が続くなか、導入企業にとってはライセンスの販売元選定もコスト管理の重要な要素となっている。

 キーマンズネットが2025年10月8日〜17日にかけて実施したMicrosoft 365の利用状況に関する調査では、ユーザー企業が利用するMicrosoft 365のプランと月額コスト、そしてどのような経路で購入しているのかといった項目を回答者に尋ねた。その調査結果を基に、前編ではMicrosoft 365の利用概況について、後編は「Microsoft 365 Copilot」について、ユーザー企業の利用実態を紹介する。

Teams付きプランが今も主流、M365 Copilotは6割超が利用

 勤務先における「Microsoft 365」および「Microsoft Office(パッケージ型)」の利用状況を尋ねたところ、「Microsoft 365」が78.6%、「Microsoft Office(パッケージ型のみ)」が18.4%となった。2023年2月に実施した同調査ではMicrosoft 365の利用割合は55.9%、2024年1月には62.0%であったが、今回の2025年10月調査では74.1%と大きく伸長している。2年半で20ポイント近く上昇した。

 契約中のMicrosoft 365プランについては、「Microsoft 365 Business Standard(Teamsあり)」が34.2%と最多であり、「Business Basic(Teamsあり)」が17.7%、「Microsoft 365 E3」が16.5%と続いた。傾向としては、「Business Standard」「Business Basic」「Apps for business」「Business Premium」など、中堅・中小企業向けのビジネスプランに回答が集中している。これらのプランは価格と機能のバランスが良く、TeamsやExchange、SharePointなどの必要十分なアプリケーションがそろっていることから、多くの企業にとって導入のハードルが低いと言える。

 2024年4月以降、一部のMicrosoft 365およびOffice 365スイート製品から「Microsoft Teams」が別売りとなったが、ビジネスプランを利用しているユーザーの大多数は、従来通りTeamsを含むプランを利用している。

 Microsoft 365のアドオンサービスの利用状況については、「Microsoft 365 Copilot」が63.3%と最も多く、次いで「どれも利用していない」が29.7%となった。CopilotなどのAI機能は従来のRPAやBIツールとは異なり、Copilotは自然言語を用いた操作が可能であり、非IT部門でも活用が容易である点も導入を後押ししている要因と考えられる。


図1 左/Microsoft 365の利用プラン、右/利用しているMicrosoft 365のアドオンサービス(従業員規模別)

2025年も値上げ……直販か間販か、高騰対策に購買経路も重要に?

 次に、Microsoft 365の1ユーザー当たりの月額利用料金と、ライセンスを購入する購買経路について尋ねた。コストに関連して注目すべきは、2025年4月に実施された「New Commerce Experience」(NCE)における一律5%の値上げだ。NCEは、Microsoftが法人向けに提供しているライセンス契約形態であり、これを通じてMicrosoft 365を利用している企業は多い。利用コストが増加する状況において、どのプランを選択するかと同様に、どこからライセンスを購入するかも、総コストに大きく影響する重要な検討事項となり得る。

 まず、1ユーザー当たりの月額料金については、「1001〜1500円」が15.8%、「1501〜2000円」が12.7%、「1000円未満」が11.4%となった。一方で、「その他」が34.2%と最も多く、その内訳の大半は「料金が不明」あるいは「利用部門のため把握していない」という回答であった(図2-1)。

 料金帯を「月額3000円以下」として集計すると、該当するのは全体の46.8%にとどまり、半数を下回る結果となった。これは2023年2月時点の調査結果と比較しても、Microsoft 365の月額利用料が高騰傾向にあることを示している。背景には、Microsoftが2022年以降、法人向けソフトウェアおよびクラウドサービスに対して毎年のように実施している価格改定の影響があると考えられる。

 Microsoft 365の購入経路については、「パートナー会社(販売代理店やリセラー)を通じて購入している」が44.3%、「SIerやITサービス会社から一括で購入している」が5.5%となり、間接購入の割合が高い(図2-2)。これらのユーザーの多くが、利便性の高い「年契約・月払い」プランを選択しており、NCEを経由しているケースが多いとみられる。

 当然ながら、今回の価格改定は間接販売経由の顧客だけに適用されたものではない。だが、NCEの導入により年間契約の縛りが強まった企業にとっては、柔軟な契約変更が困難になっている点も指摘されている。

 今後、企業に求められるのは、Microsoft 365の利便性や業務効率化効果を最大化しながら、費用対効果を厳格に見極めることだ。価格改定が継続的に実施される見通しである以上、ライセンス管理と契約の見直しが必要不可欠となるだろう。


図2 左/Microsoft 365の1ユーザー当たりの月額料金、右/Microsoft 365およびMicrosoft Officeの購入経路(従業員規模別)

「便利だけど不安もある」Microsoft 365ユーザーの不満トップ3

 Microsoft 365のユーザー満足度について尋ねたところ、「満足」(11.4%)および「まあ満足」(67.1%)を合わせると78.5%になり、おおむね「満足」としている(図3)。回答者からは「Teamsをはじめとして非常に使いやすく、役立つアプリ群がそろっている」「ビデオ会議機能まで一通り備わっている」「業務に支障なく使用でき、作業効率も高い」といったコメントが寄せられ、豊富なアプリケーションが統合された利便性の高さが評価の背景にある。

 満足度が高い一方で、課題もある。「不満」と回答したユーザーからは、主に以下の3つの懸念が挙げられた。

1.障害発生時のレスポンス不調と情報の不透明さ

 最も多く寄せられた不満の声が、障害によるレスポンス不調に関するものだ。「オンプレミスと比べて障害が多い」「回線の混雑によりレスポンスが安定しない」「Microsoft側の作業ミスと思われる不具合が目立つ」など、クラウドサービスならではの運用リスクに関する指摘が目立った。また、「不具合に関する情報の公開が遅く、問題が自社だけなのか他社でも同様なのか判断が難しい」といった声もあり、障害発生時の初動対応にかかる手間やストレスも課題として挙がった。

2.値上がりによるコスト負担の増加

 次に多いのが、価格改定によるコスト増」に対する不満だ。「機能には満足しているが、価格が年々上昇しており継続利用が不安」「契約更新時に毎回のように値上げされ、長期的な予算立案が難しい」などの意見が寄せられた。前述の通り、Microsoftは法人向けライセンスの価格を毎年のように改定している。サブスクリプションモデルの特性上、導入のしやすさはあるものの、長期的には運用コストが積み重なり、費用対効果の見極めが重要だ。

3.UIや機能面での使いづらさ

 3つ目の課題は、操作性・使い勝手への不満だ。「アップデートによるUIの変更に戸惑う」「突然の仕様変更により社内対応が追い付かない」といった声に加え、「機能が多すぎてどれを使えば良いのか判断しづらい」「重複する機能があり、活用が限定的になってしまう」といった指摘も見られた。特に、「旧バージョンのUIを選べるオプションが欲しい」「リボンメニューのUIが使いにくい」「F4キーの繰り返し機能の対応範囲が狭い」など、長年Microsoft製品を利用してきたユーザーからの具体的かつ実務的な要望が目立った。UIや仕様の変化が業務効率に直結する現場視点からの声だ。

 後編では、今回の調査で約6割のユーザーが導入していると回答した注目のアドオンサービス「Microsoft 365 Copilot」に焦点を当て、その利用状況や具体的な活用法、業務への影響について詳しく解説する。

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