「うちにぴったりな補助金を教えて」 デジタル庁の補助金AIを使ってみよう【MCPレビュー】
デジタル庁がMCPサーバ「Jグランツ MCP Server」を公開した。生成AIツール経由で補助金の情報を取得できるツールを実際に使ってレビューする。
新しい製造機械やバックオフィス用のITツールなど、設備投資には資金が必要です。調達先の選択肢として補助金もありますが、自社の状況にあった補助金があるかどうかを知っていないと使えないこともあります。補助金獲得は情報戦です。
Web検索すればある程度情報が集まりますが、大量の雑多な情報を見て、それが最新情報なのか、詐欺などではないのかを精査するのは大変です。
そこで使えるのが生成AIとデジタル庁が作ったMCPサーバ「Jグランツ MCP Server」(以下JグランツMCP)です。導入には知識が必要ですが便利です。今回はこのJグランツMCPで補助金探しを効率化できるか検証します。
MCPサーバとは何か
MCPは生成AIと外部ツールを接続するための規格です。この規格に対応した外部ツールをMCPサーバと呼びます。PCにUSB規格対応のキーボードやマウスを接続するように、生成AIにはMCP規格対応のMCPサーバを接続できます。
例えば、生成AIは(モデルそのもの単体の機能では)現在時刻を正確に出力できませんが、時計機能を持つMCPサーバを接続すれば、現在時刻を出力できるようになります。
JグランツMCPはデジタル庁が2025年10月末に正式公開したMCPサーバです。同庁の補助金電子申請システム「Jグランツ」の機能を生成AI経由で使えるようにするツールとして無料で提供されています。これを使えば「こういうことがしたいんだけど、ちょうどいい補助金はある?」のように自然言語で情報を検索できます。
利用するには「Claude Desktop」(以下、Claude)や「Cursor」などのMCP対応の生成AIツールと接続するための設定が必要です。導入方法は公開ページで説明されていますが、初歩的なプログラミング経験とMCPの知識がなければ難易度は高いです。これを機にMCPサーバの導入方法を学ぶ気概で挑むのがよさそうです。
また、導入に当たっては情報システム部門などに相談や許可を得て実行してください。公開ページを見るとこのMCPサーバは「技術検証を目的としたサンプルコード」とされていることにも注意が必要です。
今回は筆者がプライベートで使っているPCとClaude Desktop(以下Claude)を使います。
500人規模の企業/買い切りITツールを買いたいときは?
早速聞いてみましょう。Claudeに以下のようなプロンプトを入力します。
JグランツMCPを使って回答してください。従業員規模500人の企業において、高額なITツール(買い切り型)を購入する場合に使える補助金はありますか?
JグランツMCPを使う旨は明示しなくても勝手に適用してくれるのですが、絶対ではないので一応書いておくと動作が安定します。
補助金の名前と補助金ID、上限額や受付期間、補助対象、利用目的、情報を見られるWebページを提示しています。これらの情報はJグランツで扱われているものなので、信頼性も確保されています。
10人規模/生産設備の買い替えがしたいときは?
条件を変えて聞いてみましょう。金属加工用の工作機械をリプレースする場合にはどのような補助金が使えるでしょうか。
十数人規模の町工場です。生産設備の買い替えがしたいので使える補助金を教えてください
こちらは直接の連絡先や次に何をするべきかも教えてくれました。
補助金の絞り込み条件としては、業種や地域、従業員数があります。例えば「東京の弁護士事務所で、従業員数は50人程度。利用目的は○○です」のように入力すれば、ピンポイントに情報を引き出せます。逆に「最新の補助金情報を教えて」のように絞らず探せます。
資料が添付されている場合はダウンロードする機能もあります。
応募ガイドを作ってもらう
今度は「業務改善助成金(令和7年度)」について掘り下げてみましょう。
業務改善助成金(令和7年度) 補助金IDa0WJ200000CDlvFMAX この補助金について、応募に必要な情報を教えてください
確認すべき資料として「交付要綱」「Jグランツ申請マニュアル」「活用事例集」のリンクと申請に必要な書類一覧を提示しました。加えて申請の流れを説明しつつ、注意事項と問い合わせ先も示しています。
少し気になるのは出典表記の有無です。JグランツMCPを使って生成した応答には「出典:J-Grants(JGrants)からの情報」と表記されているものといないものがあります。ITリテラシーとして、生成AIで出力した内容は全てを信用せず、必ず一次情報に当たるようにしましょう。JグランツMCPで出力した内容は信用してもいいかもしれませんが、生成AIが勝手に生成した部分とMCPで生成した部分を確実に分離できるわけではありません。金銭に関するものなので、確実な情報を取得するようにしましょう。
MCPサーバの導入はあくまでオプションです。相応の知識も必要で難易度も高いため、扱える人材がいないなら使う選択肢も出てきにくいですが、JグランツMCPはMCPに手を付けるきっかけにもなる、非IT職種も現実的に使いたいツールだと思います。
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