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JavaScript誕生30周年、10日で開発された言語がなぜ王者になれたのか?:860th Lap

1995年に誕生したJavaScriptは、30年を過ぎた今もインターネットの中核を担っている。わずか10日間で書かれた言語はいかにして淘汰(とうた)を免れ、Webブラウザ戦争や技術革新の波を乗り越えて進化してきたのか。

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 1995年に誕生したJavaScriptは、30年が経過した現在もなお、インターネットを支える技術の主役であり続けている。Webサイト制作のための軽量なスクリプト言語として登場したJavaScriptは、その後、サーバサイドやモバイルアプリ、デスクトップアプリ、さらには組み込みシステムへと活用の幅を広げてきた。技術のはやり廃りが激しいIT業界において、これほど長期間にわたり第一線で使われ続ける言語は、まれな存在だ。

 インターネット黎明(れいめい)期には、覇権を争う「Webブラウザ戦争」が幾度となく繰り広げられた。その中でJavaScriptを武器に一時代を築いたWebブラウザ「Netscape」は、2008年にその歴史に幕を下ろした。だが、開発元の栄枯盛衰とは裏腹に、JavaScriptそのものは淘汰(とうた)されることなく生き残り、むしろ進化を続けてきた。

 なぜJavaScriptだけが生き延び、インターネットの“王者”となり得たのか。その裏には、誕生の瞬間から続く数々の興味深い逸話がある。たった1人のエンジニアによって、わずか10日間で原型が書き上げられたこの言語は、いかにして30年もの間、インターネットを支える存在へと成長したのか。開発者が、今だから話せる開発秘話を語った。

 Tech系情報サイト「ArsTECHNICA」は2025年12月5日、JavaScriptの誕生と進化を振り返る記事「In 1995, a Netscape employee wrote a hack in 10 days that now runs the internet」(1995年、ネットスケープの社員が10日間で書いたハックが、今やインターネットを支えている)を公開した。この日付はJavaScriptが公式に発表された1995年12月5日からちょうど30年に当たり、同言語の“誕生日”を祝う節目の記事となっている。

 記事によれば、1995年12月5日、Netscape Communications(Netscape)とSun Microsystemsは、インタラクティブなWebアプリケーションを実現する新たなオブジェクト指向スクリプト言語を発表した。それがJavaScriptだ。当時のNetscapeは、Webデザイナーや非専門プログラマーでも扱える軽量な言語を求めており、Webサイトをより動的で魅力的なものにすることを狙っていた。

 JavaScriptの開発を担ったのが、Netscapeのエンジニアであるブレンダン・アイク氏だ。経営陣からは、当時注目を集めていたJavaに似た構文を求められた一方で、アイク氏自身はSchemeの関数型モデルや、Selfのプロトタイプベースのオブジェクト指向といった要素を取り入れた設計を目指した。

 1995年5月、アイク氏はわずか10日ほどでプロトタイプを完成させた。この逸話はJavaScript誕生の象徴として語り継がれている。その後も設計調整は続き、正式なバージョン1.0が公開されたのは1996年3月だった。短期間で生まれたこともあり、現在でもJavaScriptには設計上のクセや矛盾が残っていると記事では指摘されている。

 名称の変遷も興味深い。開発当初は「Mocha」と呼ばれ、1995年9月のNetscape Navigator 2.0ベータ版では「LiveScript」に改名された。最終的に、同年12月のSun Microsystemsとの提携発表に合わせて「JavaScript」という名称が採用された。これは、当時大きな注目を集めていたJavaの勢いに乗るためのマーケティング戦略だったという。だが実際には、両者の技術的な関連性は限定的で、この命名が30年にわたる混乱の原因になったともされている。

 その後、1996年にはMicrosoftが互換をうたう「JScript」を「Internet Explorer 3.0」に実装し、Web開発者はブラウザごとの差異に悩まされることになった。そして、1997年6月にはECMA Internationalによって仕様が「ECMAScript」として標準化された。

 Webブラウザ戦争でNetscapeが敗退した後、JavaScriptは一時停滞するが、2005年のAjaxの普及を機に再評価され、2009年の「Node.js」登場によってWebブラウザの枠を超えた存在へと進化した。こうした歩みを経て、JavaScriptは誕生から30年を迎えた現在も、インターネットを支える中核技術として第一線に立ち続けている。

 今後もJavaScriptの誕生日を祝う機会は、まだまだ続いていくだろう。


上司X

上司X: 「JavaScript」が世に出て30年、その誕生から現在までの軌跡について紹介されていて面白い、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: そうですか、JavaScriptって発表されて30年も過ぎたんですね。


上司X

上司X: あまりに普通に現役だからな。


ブラックピット

ブラックピット: だって30年前に登場して今まで残っているIT系のモノってあまり多くないですよね?


上司X

上司X: そんなことないよ。インターネット自体はそれ以前からあるし、Javaだって1995年にリリースされてまだ現役だ。同じく30周年といったところだな。「Windows」だってMacだってさかのぼればもっと前からあるし。


ブラックピット

ブラックピット: そうですね。あ、USBも1996年辺りからありますしね。


上司X

上司X: そうだな。そう考えると意外にこれまで受け継がれてきた技術は少なくないようだ。


ブラックピット

ブラックピット: でも、アイクさんが10日ほどでベースを作り上げたJavaScriptが、今の今まで現役で使われているとは感激じゃないですか! 開発の背景やネーミングの遷移はともかく、良質なモノは結局長く使われるってことですよね。


上司X

上司X: そういうことになるかな。ともかくだ、発表から30年、JavaScriptは世界で最も広く使われているプログラミング言語であることは間違いないな。今回の記事でその出自を知れば、ネットの黎明期に生まれた言語が三十路(みそじ)を超えても生き残っている、ある種の「しぶとさ」が分かるんじゃないかな。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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