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AIプロジェクトが失敗するのは大量の雑然としたデータのせい【調査】CIO Dive

Ocientが実施した調査によると、5人中4人以上のITリーダーが「複雑なデータ処理の要件が原因で、AI技術の本格的な導入が進まない」と回答したという。

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CIO Dive

 データ分析ソリューションを提供するOcientが2025年10月1日(現地時間、以下同)に公開した報告書によると(注1)、ITおよびデータ部門のリーダー500人以上を対象にした調査の結果、企業のAIプロジェクトはデータの品質に依存しているという。ITリーダーは依然として多くの課題に直面しており、複雑さは増す一方のようだ。

AIプロジェクトの足を引っ張るデータ

 技術部門の責任者たちは、AIを活用する上でデータの品質と既存のソリューションの拡張性が重要な障壁になっていると指摘した。5人中4人以上のITリーダーは「AIの取り組みを進める過程で、データ処理に関する要件の複雑さが大幅に増した」と回答した。

 データ資産の増加も課題となっている。調査に回答したリーダーの約半数は「自社のデータ資産があまりにも急速に増加している」と述べ、46%は拡大に伴うコストの増大を主要な課題として挙げた。さらに、3人に1人の技術リーダーは、AIによって増大するデータの規模や複雑さに対応する準備が十分にできていないと感じていることも明らかになった。

 CIO(最高情報責任者)たちは、AI導入の成功を阻む障害を打破したいと考えているが、手強い課題も存在する。特に、大規模で包括的なデータ戦略に伴う複雑さは、最も根強い障壁の一つだ。

 テクノロジー分野で調査サービスを提供するOmdiaの応用AI部門に所属するイーデン・ゾラー氏(チーフアナリスト)は、「CIO Dive」に対して次のように語った。

 「企業は自社のデータ基盤を適切に整備する必要がある。多くの企業では依然として部門や機能ごとにデータが分断されており、不正確な状態を招きやすい不統一な形式で保存されているのが現状だ」

 長年にわたり、経営幹部層にとってデータは重要なテーマであったが、AI導入の急速な動きによって課題は一層深刻化している(注2)。CIOが企業内の重要な欠陥を特定し対処することで、無駄なリソースの消費や失敗に終わるAIのパイロットプロジェクトを防ぐことができれば、AI活用の成果を追求する上で大きな効果を得られるだろう。

 戦略アドバイザリーサービスを提供するABI Researchのレオ・ガーグス氏(プリンシパルアナリスト)は次のように述べた。

 「自社のデータを理解し、文脈を把握し、非構造化データに対する戦略を構築しない限り、企業内でAIを十分に活用することはできない。それこそが、企業の成功を左右する要素になる」

 前進の道筋を描くために、CIOは第一に現行プロセスの現状を把握する必要がある(注3)。経営陣が協力し合い、望ましい成果を明確に定義することで、チームを正しい方向へ導けるだろう。

 ガーグス氏は「どこで分断が生じているのかを把握することが、取り組みの出発点として有益なものとなる。中には、紙とペンのような原始的な方法を用いているケースもある。一部のデータは今でもフロッピーディスクに保存されているのだ。これこそデータ整備の分野がいかに分断されているかを示す一例だろう」

 また、CIOは投資に関する議論がコストを重視する性質を持つと理解し、他の経営幹部や取締役会のメンバーから投資に対する理解と支援を得る必要がある。

 「事業上の妥当性と確実な投資収益率を証明することは、厳しい環境下で事業を営んでいる多くの企業にとって大きな価値を持つだろう」(ガーグス氏)

 経済状況が厳しい中であっても、データプロセスの改善に関する経営陣の足並みをそろえることは多くの組織にとって決して難しくない。過去数年でAIへの関心はさらに高まり、経営陣は、AIを業務負担を軽減し、生産性を高める手段として捉えている(注4)。

 「従業員を取り組みに巻き込むことも重要だ。トップダウンとボトムアップの両方のアプローチを組み合わせなければならない。つまり、双方の立場からの理解と賛同を得る必要があるのだ」(ガーグス氏)

 企業はデータガバナンスとデータ戦略への継続的な注力の成果を得始めている。自動車メーカーであるAmerican Hondaや(注5)、オンライン旅行サービスを提供するExpedia Group(注6)、中古車販売サービスを提供するCarMaxはいずれもデータプロセスの強化に取り組み(注7)、AIから恩恵を得ているという。

 開示:CIO Diveの発行元であるInforma TechTargetの筆頭株主であるInformaは、Omdiaに出資している。ただし、InformaはCIO Diveの報道内容に一切影響を及ぼしていない。

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